死神の再臨
「…悪神の情報はこれだけだ…魔王なら詳しい事を知っているだろう…」
「……ありがとうございます」
「魔王に動きがあれば連絡する…お前らスマコは持っているよな?」
「ああ」
俺たちはレクスさんとメール交換した、まさかあのノブナガ様とメールができるとはな。
「…それじゃあギルドに行くか…もしかしたら悪神の事を知ってる人がいるかもしれないし…というか魔王がいるライド大陸方面にギルドがあるから通らないといけないけど…」
「……ギルドに行くのか」
「ああ…何かあるんスか?」
「あの地帯は…危険なモンスターが多いから…気を付けよ」
「はい」
どうやらギルドのある場所は危険度の高いモンスターが多いらしいな。気を付けないと……俺たちはレクスさんに礼をして城から出た。
「…話…終わったのか?」
「ああ」
外ではエミライトさんの息子のウィルが壁にもたれかかっていた。
「…武器ができたからさ」
「そうですか!」
十郎はとても嬉しそうに、ソワソワしながらウィルとともに鍛冶屋に行った。
……
「…SSSの武器を作るなんて…久々だから疲れたな…」
鍛冶屋では滝のように汗を流すエミライトさんが立っていた。
「…おお!…戻ってきたか!……ほら…完璧にできたぞ!」
「おお…」
エミライトさんは剣を机の上に置いた。それは刀のように片側に刃がある剣だった。
「…めちゃかっけぇ…」
「しかもこれは凄い機能が付いていてな…持ってみな」
十郎が剣を持った、すると刀に黒い瘴気が集まり、刀の先端に鎌のような刃を構成した。
「…魔素が死神系統だったので、鎌に変形するようにしました」
「……たしかに…素材元のエルアトラは死神の希少種でしたからね…魔素にも種類があるのかぁ…」
すると先端が元に戻った。どうやら出し入れできるらしい。
「…名前はまだ決めていないが……どうする?」
「……それじゃあ…この武器の名は【13th】にします!」
「13thか…変わった名前だな」
「死神のタロットカードの13を取って付けました!」
十郎は刀を見ながら笑みを浮かべている。するとエミライトさんが結晶を持ちながら呟いた。
「…余ってしまったな…」
「どうしたんですか?」
「いや…SSSの魔素が余ってしまって…」
おや!?…これはもしかして……神からの贈り物か!?
「…そ…それを使って武器を作れたりは…」
「駄目だな…できるとしてもナイフくらいだ…」
「ナイフですか!…できれば作ってくれるとありがたいですけど!」
「うお!…びっくりした…」
突然、十郎が結晶を見ながら言った。そんな十郎にウィルが言った。
「…ナイフなんてほとんど実戦では使えないぞ?」
「大丈夫です!…ナイフは一番使い慣れてるので…」
「なら…作るか」
今、さりげなく怖い事言った気がするが……
……
「…できたぞ」
「ありがとうございます!」
エミライトさんはナイフを手渡した。見た目は少し豪華な短剣だ。
「…それは投げても手元に戻ってくるという特殊な能力が付与されている」
「へぇ…!」
十郎が壁に掛けられた的に投げた。すると刺さった後に吸い寄せられるように十郎の手元に戻った。
「…一応全部で13本だ……まぁ…狩り程度になら使えるんじゃないか?」
「ありがとうございます!」
「ちょっと待て、代金は?」
「危険度SSSの魔素を見せてくれた礼にタダだ!……あんな珍しいもので武器を作れるなんて滅多にないからな」
そんなエミライトさんに俺たちは礼をして出ようとするとウィルとエミライトさんが言った。
「…それで…ウメオカに聞いたけどこれからギルドに行くんだよな?…気を付けろよ」
「はい!」
「…ウメオカは武器いらないの?」
「ああ!…俺はこの二本の腕だけで十分だ!」
「…そ…そう…」
そうして俺たちはアルトリアを後にした、ここまで武器と防具が手に入ったな。
「…遠距離武器と近距離武器が手に入りました…!」
「ナイフが遠距離で刀が近距離ってか?」
「はい!」
十郎はナイフを上へ投げながら答えた。どうやらナイフはスマコの倉庫が自動回収できるようで、十郎の半径1mに戻ってきたら勝手に収納されるようだ。10本くらい投げた時にどうやって戻ってきた10本のナイフを二本の腕で受け取るんだよと思ったけど……
「…取り出す時も念じるだけで出てくるので敵が来てもすぐに投げられます!」
「永遠に投げられるナイフか…」
俺たちはギルドに向かって歩いた。ギルドはここから24km程の場所にある。一体何日かかるのだろうな……
「…また長い道のりを歩くのか……下手したら格闘家のおやっさんの修行よりもしんどいかもな…」
「頑張ってください!…ウメオカさん!」
……
「…なんだと…!?」
「エルアトラが…少年に負けた…!?」
「封印されていたとはいえSSSモンスターだぞ!?」
とある少年が斬葬のエルアトラを倒したという噂は激流の如くレイド大陸やライド大陸に広まった。
「…転生か…転移者だな……おそらく」
「どんな奴か会ってみたいものだな」
その噂はギルドにも広まり、ギルドの戦士たちは会ってみたいと思う者もいれば、それを嘘だと信じない者もいた。
「…まだ人間にもそれほどの実力者がいたとはな」
そしてそれは魔王軍にも広まり、モンスターは少年を恐れるとともにその中の一部の手練れは期待していた、自分とやり合える人間がいるのだと。
「どうやら…ジュウロウがエルアトラを倒したという噂が広まっているようです」
「…エルアトラが封印されているというのは実力者の間では結構知られていたからな…ふふ……ジュウロウよ…ギルドに着いたら手厚く歓迎されるぞ…!」
【斬葬殺しの少年】
噂が噂を呼んでいる事を、梅岡はともかく十郎さえも知る由が無かった。




