アンノウン・モンスター
「………あ〜…彼では駄目だね…」
「……え？」
若林は神腕を発動して、絵文字へ斬りかかった。そして接触した瞬間に若林は絵文字に殴られて吹き飛んだ。
「ほらね？……彼はダメだね…」
「…え……」
「トッ……トップランカーの…若林さんが…ッ！？」
ギルド戦士達は、呆気にとられていた。そして少しして気がついたかのように混乱し始めた。
「か…勝てねぇよ！……トップランカーをワンパンで倒すモンスターなんか！」
「に…逃げるぞ！！」
そして、ものの数秒でギルド戦士達は消えた。ギルドの入り口に立っているのは俺達と絵文字だけだ。
「……いやぁ…これは…骨が折れそうだなぁ…」
「…僕も手助けしようか？」
ギルドの中から、騒ぎを聞きつけてきたのか小鳥遊とアリスが出てきた。
「あ！…お前！」
「……お！…君達には一番会いたくなかったあよ！」
俺はアリスに詰め寄り、声を荒げて言った。
「よくも試すような事しやがって！…あのモンスターはお前の幻影だろ！」
「…あれ？…バレてた？」
「ああ！…魔素を落とさなかったからな！…そんな事だろうと思ったぜ！」
すると十郎がアリスに詰め寄る俺をなだめるように言った。
「…まぁまぁ…今はあのモンスターをどうするか考えましょうよ…！」
「そうだな」
「立ち直り早いね…」
俺たちは絵文字の方を向いた。絵文字はその場で逆立ちやら何やらパフォーマンスを見せている。
「……ともかく…このモンスターは危険だ…ひとまず倒そう…」
十郎とともに、俺は絵文字に向かって歩いていった。
「……二人で大丈夫？」
「…ああ……まぁ…俺はサポート的な立場だろうがな」
絵文字の目の前へ来た瞬間、十郎は刀を水平に振った。すると絵文字の胸が真っ二つになり、地面に落ちた。
「……うぉぉ…」
「…もう終わったのか？」
しかし、絵文字の胸はすぐにくっついて再生した。なんという再生力だ。
「……梅岡さん…巻き込まれないでくださいね」
「………ああ…離れておくから安心しろ」
十郎はそう言って刀の先端に鎌を形成し、思い切り振りかぶった。
「…ッと！」
俺は急いで離れた。十郎は俺が離れたのを確認して鎌を振り回した。しかし絵文字はダルマ状態になっても再生する。
「……なかなか…しぶといですね…」
その時、絵文字が十郎に殴りかかってきた。俺は急いで十郎の前へ飛び出した。
「…【骨解】！」
相手が腕を使って攻撃してきた際に、腕を掴んで骨をへし折る技だ。だが、絵文字は変な方向に曲がった腕をすぐに戻した。
「……タフな野郎だ…」
「…梅岡さん……離れていてください」
十郎は鎌を握って言った。俺は言われるがまま、十郎の側から離れた。
「…ッ！！」
すると十郎は舞うように鎌を振った、あんな重いものを舞うように振り回すなんて、アイツ力ヤバイな。騎士の隊長との腕相撲の時にも思ったけど。
「……うおッ！！」
そして十郎がトドメの一撃で袈裟懸けで斬ると、絵文字は細切れになった。さすがに倒したか！？
「…なッ…」
「……すごい再生能力だね…」
絵文字の破片は一つの場所へ集まり再生した、マジかよ。だが、絵文字の様子がおかしい。その場で背中を丸めている、効いてるのか？
「…！」
背中を丸めた後、絵文字は思い切り十郎の方を見た。その時、皮膚を突き破って金属のような黒い皮膚やツノが飛び出してきた。
「……なんて姿だ…」
「…悪魔と…死神を足して二で割ったようなモンスターだネ…！」
絵文字は右半身だけだが、悪魔と死神を足したような禍々しい姿をしていた。それを見て俺は思わず息を飲んだ。
「………十郎…」
「…梅岡さん……」
そんな中、俺は気付けば十郎の横に立って構えていた。
「…勘ってやつだが…コイツはやべぇ……サポートみたいな後方支援ではなく…俺も前線に立たせてもらいぜ…！」
「……助かります」
そして俺達は息を合わせて、同時に攻撃した。だが、俺の拳は左手で受け止められ、十郎の刃も掴まれた。
「…オラァ！！」
俺は蹴りを食らわせた、すると掴まれていた刃と俺の拳から手が離れた。
「クソ…さっきよりも強くなってやがる…！」
「……ですね…」
すると絵文字は俺たちに向かって殴りかかってきた。その時、絵文字を雷の槍が貫いた。
「…ッ！？」
「……僕達も協力させてもらうよ」
小鳥遊とアリスが俺たちの横へ立った。
「………伍城さん…ミユキさん…あなた達は？」
「……観戦しとくよ！」
「…おい…君達！…来るぞ！」
俺と小鳥遊が前へ振り向くと、絵文字が飛び上がって殴りかかろうとしていた。俺たちは急いでその場から離れた。
「……あッ…あぶねぇ…」
絵文字が殴った場所には、大きな亀裂が走っていた。
「やべぇなコイツ…」
