サバトの山羊
「…少ないな……」
「後から沢山来るさ」
モンスターの小さな群れがギルドに向かって来たが、数は少ない。
「……それよりも…ミユキとモンスターの戦いが見れるぞ…」
「…ああ……」
ギルド戦士達は、モンスターの群れの前に立ちはだかるミユキを見ていた。
「ミユキ!…その数程度はヤレるよな?」
「うん!」
『………危険度S以上は…いないのかな?』
ミユキはモンスターの群れを眺めて、危険度の高いモンスターを探していた。
「危険度Aクラス…それにこの数を見て……さすがのミユキも怖じけたか…?」
『…危険度S以上はいないか……』
落胆したような表情を浮かべ、ミユキは手に持っているナイフを先頭のモンスターの頭に向かって投擲した。
「ギッ!」
ナイフが先頭のモンスターの目に突き刺さった。目を失ったモンスターはバランスを崩し、その場で躓いた。
「ウゴッ!?」
他のモンスターは倒れたモンスターに足が当たって躓き、その連鎖で群れは一斉に崩れ始めた。そして、最後尾にいた巨大なモンスターが躓き、群れを押し潰した。
「……おお…」
「正確に目に当たるとはな……」
「…予測能力も凄いがな」
ミユキはゆっくりと歩いて行き、巨大なモンスターの下にあるナイフを引き抜いた。
「お帰り…!」
そして、赤黒い刃を形成すると巨大なモンスターの頭に突き刺し、そのまま背中を伝って走っていき、ナイフが頭から背中にかけてモンスターを切り裂いた。
「……ギャイ!」
赤い血しぶきが雨のように降り注いだ。そして、血の雨が止む頃にはミユキの周りに無数の魔素が落ちていた。
「…ヤベェな……」
ギルド戦士達は血に塗れたミユキを見ながら驚いていた。すると、遠くからさっきの群れの何倍もあるような無数のモンスターが向かって来ていた。
「来やがった…!」
「……本命だ!」
それぞれが自分の扱う武器を構えるギルド戦士の前に、ミユキが立った。
「…ごめん!……あの群れ全部…僕がヤるから!」
そして、ミユキはナイフを掲げると魔法を展開し始めた。
「……【黒雷】…【白星ノ息吹】……」
「…ふッ……二つとも大賢者クラスの魔法じゃねぇか…!?」
二つの魔法を発動すると、ミユキの目の前に白色の魔法陣と黒色の魔法陣が形成された。
「こんにちは」
モンスターの大群は、ミユキ達に近付いた瞬間、白い柱と降り注ぐ黒い雷によって消滅した
「さようなら」
「…おいおいおいおい……なんつー威力だ…」
ギルド戦士達は桁違いな魔法の威力を目に焼き付け、思わず絶句した。
「………おやぁ…?」
ミユキは目を丸くして前方をジッと見ていた、ギルド戦士達もミユキの見ている方向を見た。
「なんだ?」
「何かいるのか…?」
「……うん…とっても面白そうなモンスター…がね……」
しかしギルド戦士達はそのモンスターが見えず、目の前には何もいないように見えていた。
「……いつまで隠れているの…?……出ておいでよ…」
ミユキは虚空に向かって火球を投げた、すると火球は空中で消えた。
「き…消えた!?」
「……恥ずかしがり屋さんめ…」
その後にミユキは魔法を発動して。すると何も無かった空間に、突如モンスターが現れた。
「……君のその透明になる魔法は無効化したよ…!」
「こんな姿のモンスターが…」
「…なんて…禍々しい……モンスターだ……」
そのモンスターは身体は人間、足は馬、頭は山羊頭のモンスターだった。
[バファス]
危険度SS
悪魔系のモンスター。高度な魔法を扱うが、身体は脆い。普段は山奥に潜んでおり、美男美女に姿を変えて人を惑わし、魂を喰らう。旅人が山を越える際に魂を吸われ、死亡する事が多い。
「…バファス……悪魔系のモンスターかぁ……」
ミユキはバファスが魔法を発動する前に間合いを詰めて斬りかかった。
「速い…ッ!」
「アハッ!」
しかし、ミユキのナイフは虚空を切り裂いていた。バファスはいつのまにかミユキの真後ろに立っていた。
「……ワープも使うのか…ヤギちゃん…」
バファスはミユキが振り向いた瞬間、暗黒の球体を生み出し、ミユキに向かって投げ打った。
「フフッ…遅いなぁ…」
ミユキはナイフを斜めに振った、すると赤黒い雷を帯びた斬撃が暗黒の球体とバファスを切り裂いた。
「……終…だね…」
胸の傷から闇が吹き出し、バファスは消滅した。バファスが消滅した後、ミユキの方へ山羊の頭蓋骨が飛んできた。ミユキはそれをキャッチして目を輝かせた。
「…うわぁ…カッコいいなぁ……」
ミユキはその頭蓋骨を被った、それを見てギルド戦士達は息を飲んだ。
「………悪魔…」
「…魔の……山羊……」
ギルド戦士達は、山羊の頭蓋を被るミユキと悪魔を重ねていた。




