襲撃イベント発生
俺たちが話していると突然、サイレンのような音が鳴り始めた。
「…な…なんだ!?」
「……おお!…襲撃イベントだ!」
「なんだって…?」
「モンスターが襲撃してきたのさ…!」
ミユキさん曰く、このサイレンはモンスターとか魔族が攻めてきた際に鳴り響くらしい。
「……数は…全部で500…いや…600くらいか……」
「…650匹だよ!」
「………ろッ…650匹!?…それヤバくね!?」
伍城さんは冷静に数を言うが百体以上の、それも危険度の高いモンスターときた……
「………とりあえず外へ出よう」
「…あ…ああ…」
俺たちはサイレンが鳴り響く中、急いで外へ走っていった。
……
外へ出ると、ギルド戦士達全員が武器を持って立っていた。
「みんな!…百を超えるモンスターの群れはあと五分後にこのギルドへ四方向から押し寄せてくる!」
外では小鳥遊が高台に立って、その場の全員に大きな声で語りかけていた。
「……群れはおそらく…中にある魔石を狙ってきたのだろう!……魔石は絶対に奪われては駄目だ!…何としてでも守り抜くぞ!」
「「「おお!!」」」
そして、高台から降りると小鳥遊は俺たちの方へ向かってきた。
「…すまないね……こんな事になって…」
「いえ…」
小鳥遊は俺たちに軽く謝ると、周囲を見ながら俺たちに尋ねてきた。
「……これから…東西南北の四方向に別れて防衛をするのだけど……協力してくれないかい?」
「まぁ…いいよ」
俺たちがそう答えると小鳥遊は「ありがとう!」とお礼を言った。
「…攻めてくるのは四つのモンスター群れだけだ……全滅させれば…もうその場所には何も攻めてこない……だからもし全滅させたなら他の防衛場所へ向かってほしい」
モンスターの群れの事を説明した後、小鳥遊は俺たちに防衛場所を指定した。
「この向きから見て…東を十郎君と梅岡君……西をミノル……南を伍城さん……北をミユキさん……そして桜郎君は中へ入っているんだ…鍵を閉めてね…」
「……うむ…」
「扉の向こうの人が三回ノックした後…咳をしたら扉を開けるんだ……ソレをしなかった人には開けないように………いいね?」
ノックと咳は、魔族やモンスターが人間のフリをして鍵を開けさせるのを防ぐ為のようだ。中には戦えない従業員もいるらしいしな。そんな人の為だろう。まぁ、こんなメンツで全滅なんてありえないがな。
「あと…コレ」
「…スマホ…?」
「それでこのギルドの誰とでも会話できる」
どうやら、このスマホのようなものはスマコを持たない者とも通話できる機器らしい。
「それじゃあ皆んな!……いのちだいじに!…だけど魔法を使い過ぎないようにね!」
「「おう!」」
小鳥遊はギルド戦士達にそう告げて北の方角へ進んでいった。俺達は東へ向かうギルド戦士達についていった。
「…十郎……」
「……ん…」
俺達は東へ向かい、歩きながら十郎へ気になった事を尋ねた。
「小鳥遊は魔法を使い過ぎるなと言っていたが…それは何故だ?」
「……少し魔法について話しましょうか」
魔法とは想像力を具現化させる技。本来は市販の魔導書に書かれている魔法を記した文章や絵を見て実際に魔法を想像し、具現化させる。
基本的に、想像力が豊かな人間は魔法を正確に具現化しやすく、魔術師などに向いているとされる。しかし想像力が足らない者は二分の一や、三分の一程度の力しか具現化させる事が出来ないらしい。
魔法は強力になるにつれて、想像力が無ければ具現化させる事は難しくなる。しかし、そもそもそんな強力な魔法の書かれている魔導書は、手に入れる事自体が難しい。
だが、ごくたまに想像力と共に、魔法を改良して具現化する事のできる創造力を持つ者が存在する。だが、群を遥かに抜いた創造力を持つ人間は、もはや魔法を創る事さえもが可能と言われている。
話は戻り、魔法を具現化させる際には体内にある魂力というものを削る必要がある。魔法を発動すればする程、ソウルは削られていく。
ソウルが生まれつき多い者は魔法を沢山発動できるが、ソウルが少ない者はその分、魔法を少ししか発動できない。
自分のソウルが無くなる程、魔法を発動すると身体に疲労が溜まり動く事さえままならなくなる。ソウルは休息したりする、要するに疲れを癒したり、寝たりすれば回復する。
魔法の事を尋ねると、十郎はそのように説明した。
「……ソウルか…」
「…ソウルが無くなれば……死亡する確率が高くなります……気を付けましょう」
ソウルが切れると急激な疲労が身体を襲い、動く事さえできなくなる。そうなればモンスターの餌食だ。
「…魔法は使い過ぎないようにしよう」
そうこうしているうちに、俺たちの目の前にはモンスターの大群が迫っていた。
「モンスターが来たぞ!!」
「東防衛の者は構えろ!」
モンスターの大群を見て、ギルド戦士達は一斉に武器を構えた、俺たちも構える。
「……十郎…」
「…はい」
「…………弟子入り前に死ぬなよ…!」
「………梅岡さんもね…!」
そしてギルド戦士達に続き、俺たちもモンスターへ向かって突っ込んでいった。




