レッドゾーンへようこそ!
「……そろそろ…行くか…」
俺はスマコで時間を確認して立ち上がった。
「…俺達が向かってるギルドは…ここからまぁまぁ歩いた先くらいか……」
「…………………ギルドへ行くのか?」
ムサシさんが俺達の目を見て尋ねた。俺達が「ああ」と答えるとムサシさんは言った。
「……………気を付けろ……奴等は異能の力を手にして…溺れてしまった戦闘狂だ…」
「……警告ありがとう…ムサシさん!」
「それでは!」
俺達は桜郎と共に、王達に別れを告げた。
「…悪神の事はこちらで探っておくが……そちらも何か分かれば連絡してくれ…」
「ゴッドカンパニーにも連絡してね!」
「分かった」
「……桜郎君の事は任せてください」
すると桜郎が、俺達全員へ言った。
「………みなの者…悪神を必ず止めるという事を決意しよう…!」
そして桜郎は俺達の前へ手を伸ばした。俺達はその桜郎の意図を理解して、手を重ねた。
「…必ず…悪神を止めよう!!」
「「「ああ!!」」」
俺達はこの時、悪神を絶対に止めると決意した。
……
「そういえば…ギルドに行って何するんだっけ?」
「……悪神の情報を探ります…王達に隠しているだけで…悪神の事を何か知っているかもしれないので…」
「……………」
俺達はギルドへ向かいながら話していた、塔からギルドまでなら数時間くらいで着く。
「……ギルド…ミノルはいるのだろうか…」
「ミノルさん…か……俺も会ってみたいな……ギルドへいると良いが…」
すると、十郎がついてきている桜郎の様子を見て尋ねた。
「桜郎君…大丈夫ですか?」
「……え…?」
「いえ…疲れていないかと思いまして…」
十郎が心配して尋ねると、桜郎は自信満々に答えた。
「……………ミノルの旅で散々歩かされたからな……体力には自信がある…心配無用だ…」
「そうですか…それなら良かった…」
桜郎はミノルさんとの旅で、必要以上に歩いたからか体力があるようだ。
「…おっと……なぁ…十郎…確かこの先って…」
「この先の平原から、危険なモンスターが多くなりますね」
俺達がいまいる平原の草の色が、少し赤色になりつつあった。
「……[レッドゾーン]…危険度BからSモンスターが大量に巣喰う危険な土地……常にモンスター同士が争っており…血が飛んでいた……そして草木がその血を吸い取り…いつしか赤い大地と化した…」
「………桜郎…そういうことだが…大丈夫か?」
「…大丈夫だ」
そして青い草が無くなり、赤い草木しか見えなくなった時、俺達は立ち止まった。
「……前から来ます」
「ああ……桜郎…俺の後ろへ…」
「…うむ……」
すると、前から車程の大きさの鳥がこちらへ突っ込んできた。
[メガバード]
危険度A
鳥系のモンスター。他のモンスターを喰らい続けた結果、爪やクチバシなどが鋭利になり、体も一回り大きくなった鷲。危険度S以上のモンスターも襲う。
「……よッ…!」
十郎が背中の刀を持ち、鳥が俺達にぶつかるギリギリの瞬間に刀を振り下ろした。鳥はクチバシから、尾にかけて真っ二つになっていた。
「……バカ切れ味良いじゃねぇか…」
静止状態から繰り出す攻撃は抜群の切れ味を誇る。だが抜群ってレベルじゃねぇぞ、おい。
「………危険度Aの魔素……いります?」
「貰っとく」
俺は十郎が投げた魔素を受け取った、これでメリケンサックでも作ろうかな。
「……強いな…十郎殿…」
「十郎で良いですよ」
そして俺達は再び歩き始めた。十郎は、モンスターとの戦闘はもう慣れているようだった。
「…十郎…」
「何ですか?」
「……その刀…浮いていないか?」
十郎の背負う刀は、透明な鞘があるかのように浮いていた。実は俺も気になってたんだよな。
「……エミライトさんから頂いた磁力石の影響でしょう…この石があれば磁力で武器が浮くので武器を取りやすくなります」
[磁力石]そんな便利なものがあるとは、まるでゲームだな。
「………ッ!?」
歩いていると、目の前に灰色の竜が佇んでいた、しかしピクリとも動かない。
「なんだ…?」
「……動かない…?」
十郎が灰色の竜へ近付いた。それでも竜は動かない。すると、十郎が竜に触れて言った。
「…この竜……石化してます…」
「……石化…だと…?」
「石になっているのか…!?」
俺達が戸惑っているその瞬間、竜の頭上から美形の青年が飛び降りてきて、着地した。
「やぁ」
「……あなたは……アリス…」
アリス、確か十郎が騎士の入団試験に行った時に凄い実力を見せた青年、と百物語で十郎が話していたのを聞いたが。
「…この人がアリス?」
「……百物語で話していた人物か…」
「はい、この人がアリスさんです」
するとアリスは、俺達の方を見ると手を広げて言った。
「ようこそ!…血濡れの大地『レッドゾーン』へ!!」




