蛇と桜郎とミノルと
「…そういえば…コレ使ってないな…」
俺はスマコのとある機能を、何となく思い出した。
「…………この戦闘能力を読み取るやつ…」
「……確かに…」
「…すっかり忘れてたぜ……今使ってみるか」
スマコで戦闘能力を読み取るアプリを起動して、俺は王達を読み取った。
「……error…error…error…error…」
「どうしたのですか?」
「…なんか……バグってないか?」
戦闘能力を読み取ってみると、全員[error]と表記されていた。
「………ホワイト…読み取れないぞ…?」
「……え…ウソ…」
ホワイトが懐からスマホを取り出して何やら調べている。
「…あ……」
「何か分かったのか?」
「………うん…」
スマホを閉じると、ホワイトは突然正座をした。いきなりなんだ!?
「…戦闘能力読み取りツールは……粗悪品ということが判明した為……本日をもちまして…サービスを終了させていただきます…」
「……え?」
「………………」
ホワイト曰く、戦闘能力読み取りツールは欠陥だらけの粗悪品だったらしい。
「……一ヶ月前にスマコ所有者へ配信したアプリだけど……製作者がテストしてなかったみたい…」
「テストしとけよ」
「…誠に申し訳ありませんでした……」
すると十郎が、頭を下げるホワイトに尋ねた。
「……それでは…今まで読み取った戦闘能力は間違っていた…という事ですか…?」
「まぁ…そうだね……ホントごめん…」
それじゃあ、俺が戦闘能力500で十郎が2万以上というのも誤りだったという事か。
「まぁ……上から目線で悪いけど…今度はそんな事無いようにしようね…ホワイト君…」
「……………はい…」
といっても、最新のアプリに不具合があるのは当たり前だからな、しょうがない。
……
「…………」
朝日が昇り、数人の話し声が聞こえる塔を、狐は眺めていた。
『………桜郎様…』
塔の窓からは、笑みを浮かべる桜郎が見えていた。
「……」
数年前にミノルと桜郎と共に神殺しに向かった蛇という男は、死亡した、表向きでは。
……
「………ッ…」
『刀が…折れたか…』
蛇はただ一人、モンスターの群れと戦っていた。辺りが崩れている中、満身創痍のミノルと、非力な桜郎がいる城の外へモンスターを出さないために。
『……この命…捨ててでもお主達を守るぞ…!』
とうに折れた刀で、満身創痍の身体で、蛇は戦い続けた。
「……ッ!?」
もはや正気ではなかった、蛇はただ、一匹の獣のように戦っていた。それ故か、足にモンスターが絡みついた事にさえ気付いていなかった。
「…くッ……」
足元のモンスターを斬ろうとするが、折れた刀では斬ることができず、蛇はほかのモンスターに拘束された。
『……終い…か…』
手足を封じられた蛇の目の前から、大量のモンスターが歩いてきている。それを見て蛇は静かに目を閉じた。
『………桜郎様……ミノル……』
すると、モンスターの叫び声が聞こえた。それは勝利の雄叫びでは無く、悲鳴。悶え苦しむ悲鳴、慟哭、鳴き叫ぶ声だった。
「……!?」
ゆっくりと目を開けると、手足を拘束していたモンスターも、周りのモンスターもいなくなっていた。その場にいたのは、折れた槍や、弓矢の刺さっている満身創痍の身体のミノル、ただ一人だった。
「………これで…借りは返したぜ……」
「…ミノ…ル……」
「桜郎からの依頼だ……『お前を助けろ』…ってな……!」
ミノルは傷だらけで、足を怪我していた蛇を支えながら、城の外へ歩いていった。そして、ミノルは瓦礫を退かして蛇と共に城から脱出した。
「桜郎はあの岩の所だ」
「……ここで大丈夫だ」
「…は……?」
蛇は桜郎から離れた位置で立ち止まった、ミノルは動揺している。
「………某は…もう必要無くなった…」
「…は?…おい…待てよ…どういう事だ…」
「……今…桜郎様は真っ直ぐな目をしている……それは…もう某がいなくとも平気という事だ…」
そして蛇は続けて言った。
「……ミノル………最後の頼みだ…某を殺せ…」
「なに…?」
ミノルは眉にしわを寄せて、蛇をジッと見た。
「…正しくは……死んだ事…にしてほしい………今の桜郎様に…某は不要だ…」
「そんな……」
「………某が必要だった昔の桜郎様はもういない……今の桜郎様は某がいなくとも平気だ」
蛇のその覚悟を見て、ミノルは不満そうな顔をしながらも、承諾した。
「………分かった…桜郎には……お前が死んだと伝えておこう…」
「…助かる……」
……
『某は……桜郎様を遠くから見守る…ただの狐で良い…』
かつて、神子の側についていた蛇は、姿形を変えて狐になったとさ。
そうして、かつて蛇と呼ばれた騎士は、狐へと姿を変えて塔を眺めていた。
「………?」
「…どうした桜郎?……外なんか見て…」
「……いや…なんでもない……」




