王座に座る少年
「…それでは…試験結果を発表します」
会場で参加者が整列して、固唾を飲んでいる。すると台の上に傷だらけの男が上がった。
「……トーマス…ジェン……アラン…」
「…やった…!」
名前が呼ばれていった。十郎が呼ばれないまま、男が19人目の名前を呼んだ後に言った。
「…そして…その中でも特に優秀な成績を残した者がいる………ジュウロウ…君だ」
「……」
「君を…聖騎士に任命する」
参加者は口々に「おお…」と声を出している。
「…やっぱりか」
「そりゃあ…まぁ…」
「合格者はこの後集まってくれ…それ以外も……また腕を磨いてまた来い」
そうして試験は終わった。男の前にジュウロウを含む合格者が集まった。
「…君たちは今日から騎士に任命された…明日から武具の支給と騎士訓練を始める…今夜はぐっすり眠っておけ」
「「はい!!」」
「…そしてジュウロウ…君は私たちと共に来てもらおう」
「……分かりました」
ジュウロウは男についていった。会場を出て、街を歩きながらジュウロウは男に尋ねた。
「…今更ですが…名前を教えてもらってもいいですか?」
「……アルトリア聖騎士のトライだ」
「トライさん…ですか」
そして、トライは城の前で立ち止まり、ジュウロウの方を向いた。
「…聖騎士に任命された者はまず、王のレクス様にご挨拶する必要がある、失礼の無いように」
「はい」
ジュウロウはトライについていって城の敷地へ入った。門は大きく、左右に巨漢の騎士が二人立っていた。門が開き、城の中へ入ると広いロビーがあった。ロビーを通って奥の大扉に入ると目の前に王座があり、そこには幼い少年が座っていた。
「…新たに聖騎士となった者をお連れしました」
トライは王座に近付き、2m離れた場所で跪き、頭を下げた。ジュウロウも同じように跪いて、頭を下げた。
「…うむ…面をあげよ」
まだ声変わりのしていない声で少年が言った。トライはゆっくりと顔を上げた。
「……お前が新たに聖騎士となった者か」
「はい…サクラ・ジュウロウと申します」
「ジュウロウか……知っておると思うが…余の名はレクス…アルトリアの王だ」
すると、レクスはジュウロウを舐めるように見た。
「………聖騎士にはそれ相応の武器が必要だろう…ついて来たまえ!」
「はい」
レクスは王座からピョコンとおりて、ジュウロウを手招きした。
……
「…支給されるのって危険度Bのモンスターの武器ですか?」
「ああ…そんじょそこらのモンスターは一振りで倒せる強力な武器だ!」
地下に入り、そのさらに奥にある扉を近衛兵が開けた。するとそこには様々な武器が置いてあった、どれも異様なオーラを放っている。
「…全て危険度Bの魔素で作成した武器だ!…好きなものを選ぶといい!」
「……すいませんが…作成したものではなく…素材の魔素が欲しいです」
思いもよらない発言にレクスは目を丸くしてジュウロウに尋ねた。
「…武器ではなく武器の素材が欲しいとな?」
「はい」
レクスは側近の方を向いた。側近は急いだ様子で部屋から出た。
「…変わった事を言うな…何故魔素が欲しいんだ?」
トライがジュウロウに尋ねるとジュウロウは隠さずにハッキリと言った。
「…僕は強力な武器が欲しいのです。そして危険度Bの魔素その武器の素材の一つなので、魔素の状態でないと駄目だからです…今回の試験も魔素の為に受けました」
「…魔素が欲しいだけの理由で受けたのか…?」
「はい、なので魔素を受け取れば聖騎士は辞退します」
ジュウロウがそう言うと周囲は固まった。そんな中、レクスだけが笑った。
「…とんでもない子を連れてきてようだな!…トライよ!」
「…笑い事ではないでしょう…」
「聖騎士を辞退って損しかないですよ……何か理由でもあるのですか?」
「悪神を捕まえなければならないので…」
その瞬間にレクスの目の色が変わった。
「…ほぅ……悪神か…」
「何か知っているのですか?」
「…余が最近目をつけてる者がいてな…その者と接触していたのが…悪神と呼ばれていた…」
「……詳しく教えてくれませんか…?」
するとレクスは不敵な笑みを浮かべると、突然ジュウロウに尋ねた。
「…この奥には何があると思う?」
「……殺気…獣臭……モンスターですか?」
「ああ…モンスターだ……危険度SSSのモンスターを封印している……そのモンスターを討伐する事ができれば教えよう」
「レクス様!?」
近衛兵とトライは一斉にレクスを見た。そしてトライが震える声でレクスに呟いた。
「…そ…その事を言って…良かったのですか…!?」
「国家機密…ですよね…!?」
「もうじき公にしようと思っていたのだ。それが少し早くなっただけの事…それでどうする?……危険度SSSの魔素と悪神の情報が手に入るのだぞ…?」
「……断る理由は無いですね」




