第7章 卓球部の穏やか(?)な1日
日曜日に練習試合、月曜日に岩崎と会い土曜日の予定をたてる。それから毎日のように卓球の練習をしていたわけで、今日は楽しい土曜日!!とおもったけど、そんなにうまくいくわけもなく。火曜から金曜までが楽しく卓球やっていたというのは、実は夢の中だけだった。というわけで、今日はふつうの火曜日。
そういえば、学園物なのに学園描写がほぼほぼ少ないみたいなラノベがあって、とかおもってみたけど、そういえば授業描写をこの物語中で1回すでにやっていたことを思い出した(第3章)。まあ、そんなのはどうでもいいとして、今は火曜日だけど、火曜から金曜までの話はたぶん印象に残らないと思うんだよなあ。なんてったって、土曜日は岩崎と出かけるわけだが、女の子と二人で出かけるって、俺実は初だったりする。岩崎とバンドやってた頃は、一緒に練習することはあっても、こうやって一緒に遊ぶこともなかったからね。
「藤浪先輩、おはようございます!」
俺がデートが初体験なのはいいとして、そんなことを考えていたら高山さんに話しかけられた。相変わらずはきはきとした声。やっぱり、頼れる部長って感じだ。後輩だけど…。
「高山さん、おはよう。」
「先輩、ものすごく突然で申し訳ないんですけど、高校生って大変ですよね。朝のホームルームあるから。わたし1限空きなんですけど、ホームルームのために朝起きてこなきゃいけないなんて、効率悪すぎですよ。」
「あ、それわかる。ホームルームなかったら、ごはん食べて1時間ぐらいいろんなことできるのになってなるけど、ホームルームあるから1度学校行かなきゃいけないんだよね。」
「はい。それに、先輩も経験あるとおもうんですけど、2年生は空き時間って寮の部屋に帰れないじゃないですか。この中途半端な空きっていうのがなんだかなあって思ってみたり。」
高山さんがこんな風に愚痴を言うなんて珍しい。普段はしっかり者でそんなこと言わなそうなキャラなのに。だって、練習試合の時だって、相手の悪口はあまり言ってなかったし。実は卓球部で見せてるのは表の顔で、何か裏があるとか?んなわけないか。
「ああ、俺も空き時間けっこう苦労したなあ。なんか、図書室行くのもあれだしって思ってさ。俺の時はホームルームの部屋が空いてたから、そんな暇にもならなかったけどね。でもさ、5・6限空きで7限数学とかだったから、とてもとても効率が悪い1日だった。」
「そんな時間割あったんですね。私はさすがにそれはないなあ」
それもそのはず。なんだっけ?確か俺の学年は自立活動を履修する人が重なっちゃったりとかしてそういう編成になったんだとかなんだとか。あ、違う。もとわといえば地理を履修する人が多すぎて1回でいい地理が2回に分かれたからだ。て、これだけだと読者がわからないとおもうので説明しておくと、うちの学校は2年生になると地理か日本史を選択しなければならない。それで、地理を選択する人がすげえ多くなって、地理が2クラスに分かれたっていうお話である。そして、半分の人が地理をやっていたのが通うの5・6限。もう半分の地理の人たちは特別授業がないかぎりめでたく空きになった。そして、数学を履修している人の中に半分の地理の人がいたから、7限に組み込まれたというお話である。いやあ、とても懐かしい。火曜日の午後が暇で暇で仕方なかったのがまるで昨日のようだ。あ、今火曜日だった。まさに去年の今頃は、午後何しようかなあって考えていたような気がする。
と、昔の話をしても仕方ないので、高山さんとの会話に戻ることにする。
「1限空きだったら、昨日出された課題とか1限にできない?」
俺はなんとなくそれっぽいことを聞いてみる。でも、それはやっぱり高山さんなわけで。
「いやいや、さすがに課題は昨日のうちにやりますよ。」
という、まじめな回答が返ってきた。それはそうか。
「予習をするにしても、なんか時間割的に凌駕多いし、苦手な科目だけやるにも中途半端だし、だとしたら部屋でニュースでも見て時事問題に触れたりとかしたいですね。」
なんて真面目なんだ、この人。でも、学校の愚痴を言うあたりまじめじゃない?いやいや、それじゃあ学校がまるでブラック企業のようだ。
「なるほどなあ。だったら、携帯でテレビ見たらどう?そういうサービスあるんじゃない?テレビがだめならラジオとかいいとおもう。ほら、アプリでラジオ聞けるじゃん。」
ほんと、便利な世の中だと思う。携帯でラジオが聞けるなんて。」
「あ、ラジオ!!そうだ!ラジオを聴くっていう手があった!!先輩、ありがとうございます。今日から空き時間はラジオ聞きます!」
てなわけで、高山さんの空き時間問題はこれにて解決?こんな解決でいいのかわからないけど、本人がいいっていうならまあいいか。
「じゃあ先輩、また卓球部で。」
「おお!おつかれー!」
2年の教室の前になったので、高山さんは俺に別れを告げて教室に入っていった。そういえば、昨日の昼は岩崎とこの廊下を歩いたし、今日は高山さんとこの廊下を歩いた。女子と学校の廊下歩くなんて、なんか青春だよね?という余計なことを考えてみたり。
「雄太!部活行こうぜ!」
てなわけで、今回もめでたく授業描写はなし。ちなみに、昨日の昼みたいなイベントも起こらなかった。あいかわらず練習試合のうわさは多かったけど。
「おお!行くか」
というわけで、今日もめでたく太陽と部活に行くことにする。そういえば、卓球部の日常というものをまだ見せていなかったような気がした。体験入部の人を部員がコテンパンにしたり(1章)、謎のマシンで練習したり(2章)、部員じゃない人が入ってきたり(3章)といったかんじで、卓球部が普段どんな部活であるかというのをちゃんと見せていなかったような気がする。
「おつかれー」
俺と太陽は体育館の扉を開けると同時に挨拶をした。
「お二人ともお疲れ様です」
「おつかれっす」
「…お疲れ様です」
といった感じでいつもの3人が出迎えてくれる。どれが誰か説明しなくてもわかるよね?
「じゃあ、さっそくやりましょうか。まずはサーブ練習10本ずつ。」
これは真ん中を狙った早いサーブと、サイドを狙ったサーブを練習するもの。昔は10本決まるまでやってたらしいけど、部員が増えてそれやったらラリー練習ができなくなるから、10本やって何本決まるかを計測するルールに変わった。半分行かなかった場合は5本追加になる。
この練習、中谷君は真ん中を狙うサーブは制度がいい。ほとんどネットせずに早いボールがあっという間にこちら側にくる。その点、サイドを狙う球は、サイドに行かずに先端前でボールが落ちることが多い。それは太陽も同じで、どうやら二人は攻撃はできてもフェイント的な攻め方は難しいらしい。
その点高山さんはどちらも性格に来る。さすが部長といったところだろう。正確であるゆえに球の速度が中谷君より遅いのが弱点だけど、これなら波のプレイヤーには十分だろう。
江越さんはサイドに行く球はいい。10本やって9本は成功する。ただ、真ん中を狙った早いサーブは苦手なようで、どうしてもレシーバーが打ちやすいところにゆっくりな球が行ったり、サーブがネットにかかるようになっていた。まあ、戦略とはいえ、向き不向きってあるんだろうな。
俺はというと、完全に江越さんタイプだった。サイドは行くし、これならいけるとは思うが、真ん中に早いのを打つのは苦手。まあ、いつも再度狙って打ちにくいところ行ってからの3打目勝負なところあるしな。
サーブ練習が終わると、ペアを作って5分ずつのラリーになる。だいたい新人の俺と太陽は高山さんか中谷君に診てもらっていた。でも、同じ人とラリーをするのはよくないとおもったのか、今回は編成を変えるらしかった。まあ、変えるって言っても5人しかいないんだからあまり変えようがないような。
「じゃあ、江越さんと藤浪先輩で行ってもらえますか?」
ということになる。
「よし!よろしく」
というわけで、卓球部入って早1か月。なのにあまり打ち合ったことのない相手。まあ、俺と江越さんだから、ラリーは穏やかにゆっくり続けられ、
「二人とも、本気出さなきゃだめっすよ。ウォーミングアップ終わってるでしょ?江越さんは、正確なのはいいことだけど決めに行かないと。藤浪先輩はなんで早いリターン出し惜しみしてるんすか。俺や高山とやるときはふつうにやってたじゃないっすか。」
という突っ込みまで飛んできた。金本先生がいないいま、おれらの指導をしてくれるのは高山さんと中谷君だ。高山さんはあまり言わないけど、中谷君からは容赦なくきつい指導が入る。
でも、これ決めていいの?相手は後輩だし、いや、俺よりも経験あるけど。なんて思っていたら、江越さんの究極の変化球がきた。なんとサイドにあたって跳ね返ったボールが逆のエンドフレームにあたってとまった。
「まじかよ!あれ狙ったのか。」
そこにいる誰もが江越さんのショットに驚いた。このような魔球はたまになることがある。つまり、サイドぎりぎりに打ったりすると、サイドに当たったボールが跳ね返って高速でエンドフレームを目指す。でも、それを狙って打てるとしたら、やっぱこの人天才だよ。
「藤浪先輩、これでわかったでしょ?手加減しちゃだめっすよ。」
中谷君からの指令。確かに、こんなことができるのであれば、俺が手加減する必要はなさそうだ。
ここからは文字通り打ち合いだった。俺が早いリターンを打ち、江越さんがブロック。俺が打ち損ねると、江越さんの強力なリターンが返ってくる。初めて打ち合う相手だけど、正確性で言えば高山さんや中谷君をこえているだろう。今まで攻撃ができなかったから勝てなかっただけなんだろうな。
5分経ってラリーは後退。
「ありがとうございます」
二人で挨拶をして卓球台の前から退場した。
「じゃあ、植田先輩と中谷君」
「え!またこの組み合わせ?」
太陽が驚くのも無理はない。だって、新しい組み合わせにするって宣言してたし。
「まあ、今回は仕方ないってことで。」
「じゃあ、植田先輩、行きましょうか。」
この後は、ご想像通りというか、まあね、うん。太陽は中谷君の多彩なショットに翻弄されていたし、どんなサーブを打ってもきれいに返された。この二人の力関係ってほんと体験の時から変わってないよな。そう思っているのは俺だけだろうか。
「植田先輩、こういうのはやられる前にやるのが基本です。もっと、俺をつぶしに来てくださいよ。」
「言ったな!こうなったら」
この後の展開もまあ、わかるよね。太陽が打った球はめでたくネットを超えて…。STTでは、ボールがネットの上を通過した場合は失点になる。ということで。
「中谷君、だから、大会前に部員のやる気をなくさせるような挑発しちゃだめでしょ。ほら、変わって。」
高山さん乱入。太陽の相手になる。ちなみに、これがいつもの展開です。ほんと、体験の次の日からずっとです。いい加減あきました。太陽も、もうちょっと中谷君と渡り合えるぐらいにならないだろうか。
「じゃあ、行きますよ。」
高山さんの言い方は優しい。最初はやさしめにラリーを続けていき、徐々にショットのスピードをあげる。そして、気づけば二人はうまいこと打ち合いをしていた。ラリーの回数はあっという間に30を超えるのがふつうになった。ちなみに、100回を2回ぐらいやると、持ち時間の5分ってあっという間にくるようです。もちろん、それはゆっくりなラリーをしてるのが前提だけど。
「ふう。やっぱ卓球は楽しいな」
一通りラリーを終えた太陽がそんなことをいう。このさっきとの変わりよう、これもまたいつも通りということで。
「何事も基本は優しいところからスタートしていくのが基本。中谷君もそろそろそれ覚えてね。」
「だって、もう大会まで時間ないじゃん。先輩たちの成績は俺らにかかってるんだぜ。」
高山さんと中谷君はこんな感じで指導方針がまるで違う。それは当然のことだとして、俺的にはどちらが言ってることもよくわかる。練習試合が終わり、大会までの追い込みの時期。ここでしっかり練習をしておかないと大会では太刀打ちできない。けど、厳しい練習ばかりをしていても、俺や太陽のような新人クラスがいきなり成長するわけがない。
「試合形式の時は本気でいいけど、ラリーの時は自分本位になってもいけないと思う。ラリーには相手がいるのだから。もちろん、わたしたちの練習もかかってるから、5分ずっと手を抜けとは言わないけど」
そうか。俺たちが大会に出るのもそうだけど、中谷君や高山さん、江越さんも大会に出るんだよな。すくなくとも中谷君と高山さんは俺と太陽の練習の時は、俺と太陽に教えるという任務がある。新人を育てながら自分のレベルをあげるっていうのは並大抵のことではないんだよな。となってくると、俺たちも本気で二人に答えるしかないわけで。
「なあ、太陽。お前は確かに頑張ってるよ。この間の練習試合だってそれがよくわかった。でも、俺らはそれじゃだめなんだよ。ここの3人でベストスリーとるぐらいじゃないと。だから、もうちょっと頑張ろうぜ」
俺はそんなことを口にしていた。前は後輩を励ましたんだっけ?今度は同級生を励ましてる。俺って本当に新人なのか?とすら思えてくる。
「雄太。それは俺だってわかってる。でも、うまく実力がついていかないっていうか。中谷とこんなに差がついてるのがなんとなく悔しいっていうか、もう何言いたいかわかんねえな。」
太陽は、普段からはじけるような奴で、自分の心の奥深くをそんなにさらけ出すやつじゃない。ここにいる部員全員が彼に信頼されていたからなのか、それとも彼が俺にだけ話すように言っていたのかはわからない。でも、もし彼がこのことで悩んでいて、俺に解決させる手があるのだとしたら、俺は同級生として太陽を助けたい。この部活に入って、人のために動くってもう何度目なんだよって感じだけど、もし俺にその役目が果たせるなら、俺は動くしかない。
「高山さん、次の次の5分ラリー、俺と太陽でいい?まずは中谷君と江越さんでやってもらって。」
「あ、いいですよ。3年生動詞っていうのもたまにはいいですね。」
そう、俺たちは言葉で自分のことを語ったことがほとんどない。それに、こうやってラリーをすることも今まではなかった。なら、同じフィールドに立って、同じ気持ちを味わえば、太陽に俺の気持ちが通じる気がした。
5分経ち、中谷君と江越さんは卓球台の前から戻ってきた。この二人のラリー、前よりは見れるようになったと思う。てか、ぶっちゃけ今はどっちが強いか判断のしようがない。
「行くぞ、太陽!」
「お、おう」
まだ心の中にもやもやをため込んでるであろう太陽とともに卓球台に向かう。
「なあ、太陽。俺とお前は体験の時から結構違ってたけどさ、でも目の前の敵を一生懸命倒そうとする熱意は、お前のほうが上なんだぜ。だから、お前には全力できてほしい。その先にお前のプレイがある。ま、それでも俺は負けるつもりはない。これからずっと。だから、行くぞ」
「…何の話かよくわからんが、とりあえず頼む」
俺が太陽への第1打に選んだのは太陽が得意とする真ん中を狙ったサーブ。太陽のサーブなら決まりやすいが、俺のサーブはそこまで速度がないために、ふつうにリターンが返ってくる。それも予想済み。このラリーはすぐ終わらせてはいけない、今回は俺がひたすらブロックするに限る。長いラリーなら、前の練習試合でたくさんやったからな、楽勝楽勝。
「ち!雄太、お前俺の懇親の1劇をなぜいとも簡単にレシーブするんだ。」
「ラリーは俺の得意分野さ。」
「得意か。俺の得意ってなんだろうな。」
「んなもん、この時間で見つけろよ。自分がやれることひたすらやればいいとおもう。」
まじ、俺初めて1か月だよね?とか思う。なんで同級生の指導してるんだろう。
「よっしゃ!なら、遠慮なくいくぜ」
太陽は同じ内容になっている攻撃スタイルを変え、すこしずついろいろなことをするようになった。それがまたすごくて、今までには見たことのないようなプレイだった。そう、今までは太陽はやられる側だったけど、今はやる側になっている。自分のプレイは自分が攻めることができて初めて確立できる。太陽はこの時間で自分のプレイのとっかかりを見つけてくれればいいとおもった。
「もう5分だけどどうする?」
「とめられないっしょ。俺達でもできないようなこと、藤浪先輩がやってるんだから。」
「そうね。ほんと、先輩はすごいな。先輩が現れてからミラクルばかり。人生経験が1年違うとはいえ、卓球の経験はぜんぜん違うのに、先輩はいつも核心をついた行動をしてる。わたしたちには、後輩を育てることができないのかもね。だから、今年の新入部員は3年生だけだった。」
「それは違うだろ。このスポーツが人気ないってだけで。でも、藤浪先輩のすごさは本物だろうな。あと1年早く卓球部にきていたら、今頃うちは最強軍団になっていたかもしれない。」
「そうね。悔やんでいても仕方ないことだけど。」
俺たちは何分ラリーをしたのだろうか。気づけば二人とも疲れが見え始めていた。
「おい、タイマーとまってんじゃね?もうとっくに5分たってるだろ」
太陽がそんなことを先に言い始めた。それはその通りだろう。いくら俺たちが本気でやっていたとはいえ、さすがにもう10分以上はやってるようなきがした。
「あ、そうでした。タイマーぜんぜんついてなかったです。すいません。」
「じゃあ、きりもいいし、ここで終わるか。」
俺がその提案をすると、太陽も代の前から離れた。
「なんか、もう30分ぐらいに感じたけど、何分ぐらいやってたんだ?」
「15分ぐらいですね。」
「2倍の時間に感じるなんて、相当一生懸命やってたってことっすね。」
というわけで、太陽にとっては30分に感じるような15分の練習を終えた。
「雄太、ありがとう。なんか、いろいろ試せて楽しかった。俺のプレイって、攻撃はもちろんだけど、いろいろ選択肢あるんだな。明日からも頑張るか。」
「おお!俺はもう守りには入らないから、明日以降は攻撃もするけどな。」
「うわあ。まじで宣戦布告かよ。もう勘弁してくれー!」
「いいんじゃないですか?先輩たちと中谷君は大会で当たる可能性もあるんだし。ここでお互いを知っておくという意味で本気でぶつかり合うのもありですよ。」
高山さんが明るい声でそんなことをいう。20分ほど前に合ったような暗い雰囲気はなく、みんなそれぞれ笑いあっている。
「のぞみ、わたしたちも、宣戦布告…するのかな。」
という声でさらに笑いが起きた。江越さんの口から、宣戦布告なんて言葉が出るとは。
「真奈美、何をいまさら言ってるの?わたしたちも、本気で戦うのよ。そして、栄光をつかみ取る!今の真奈美なら、決勝でわたしと戦える。」
「望…。わたし、負けない!」
「話戻って悪いけど、先輩らには俺が立ちはだかるんで、先輩たちだけで熱くならないでくださいよ。俺だって2連覇するんだから。」
それぞれの思い、そして目指すもの。それがはっきりしたとき、俺たちは1歩進んで強いチームになる。チーム戦じゃなくて、実際は個人戦だけど、この5人で戦っているということはいつだって忘れずにいたい。
その日の夜。
「雄太、ちょっといいか?」
夜10時の点検を終え、太陽が部屋を訪ねてきた。そういや、二日前もきてたよな。
「ああ、どうぞ」
太陽は俺の部屋に入ると、俺の隣に座った。
「お前さ、最近後輩にもてもてすぎないか?少なくとも卓球部の3人には慕われてるし、それに、なんだっけ?えっと、いわなんとかっていう」
「ああ、岩崎な。」
「そう、それそれ。あいつ、昨日3年の教室来たんだろ?」
「え!なんで知ってんだ?」
「いや、俺が食堂行こうとしたら、岩崎が教室に走ってきてたから。」
「そうか。」
「大会終わったら告白されたりしてな。」
「いや、そりゃねえだろ。」
告白…。そういえば、俺は告白されたことがあったんだっけか。そんなことを思い返してみる。中学の時から女友達がそんな多かったわけじゃないから、そんな記憶はよみがえる以前にないわけで。
「お前はどうすんだ?告白されたら付き合うのか?」
そんなこと想像もしていなかった。みんなかわいい後輩だし、告白なんて考えたことがない。でも、太陽の言う通りもしもがあるんだとしたら、俺はどうするんだろうか。
「まあ、出会って2か月のやつにいきなり告白したりはしないだろ。女子はその点慎重だから。」
「それもそうか。」
「お前、そんなこと心配して部屋来たのか?」
「いやあ、だってまじでどうすんのかなあって。まず、雄太は受験生だろ?だからどうするのかってのと、OKした場合、今後俺と食事したりとか、遊んだりしてくれないのかなとか。」
「んなわけあるか!太陽、彼女たちが束縛すると思ってる?」
「だってー、あるかもしれないじゃん。」
「ねえし、そんなの俺が認めない。」
「そ、そうだよな。お前は彼女ができたからって友達捨てるようなやつじゃないよな、あはははは。」
てなかんじで、雑談なのかまじめな話なのかよくわからない話をして、その日の夜は終わりましたとさ。
おやすみなさい。