表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジャンジャーズ最後の旅立ち  作者: トボルト0121
1/1

第一章

拙作ですが、よろしければお読み下さい。

 カチッ、カチッ、カチッ。

 点かない。

 カチッ、カチッ、カチッ。

 点かない。

 カチッ、カチッ、カチッ、ボォ。

 やっと点いた。

 社会人なりたての頃からの愛用のジッポなのだが、最近どうも調子が悪い。

 よれた煙草に火を灯し、まずは一服。

 ゆっくりと煙を肺に落とし込み、一気に吐き出す。

 口から立ち上った紫煙は上へと流れるが、すぐに天井にぶつかり下へと帰ってくる。

 行き場を失った煙は、狭い喫煙所の中に立ち込めていた。



 ガラッ。

 吸い始めて数分経った頃、喫煙所のドアが開く。

 立ち込めていた煙達は、我先にとドアの向こうへと旅立っていく。

 --ガチャン。

 ドアはすぐに閉められ、逃げ場を失った煙は再び室内に停滞した。

「邪魔するよ」

 入ってきたのは、片手にゴミ袋を持った掃除のおばちゃんがだった。

 首から下げてある名札には白川と書かれている。

「ほら、吸い殻を回収するから、ちょっとどいとくれ」  

 俺は言われるままに壁に張り付く。

 ここの喫煙所は、喫煙者の肩身の狭さに比例するように狭い作りになっている。

 今や目にすることもほとんど無くなった電話ボックスを流用し、本来電話機が置いてあるべき台座に、申し訳程度に灰皿が置いてあるだけなのだ。

 さすがにこの扱いはいかがなものか。

 というか、そもそも喫煙自体は遙か昔から多くの発明家や文豪やらが愛好し……。

「はい、お邪魔様。存分に吸ってちょうだい」  

「あ、はい。いつもありがとうございます」

 社交辞令的台詞だが、これは本当そう思っている。まぁ、伝わらないだろうけど。

「あんた、なんだか顔色悪いけど大丈夫かい?」

「ふえ?」

 予想外の返答。思わず返事を噛んでしまった。

 そんな俺を気にするわけでもなく、掃除のおばちゃんもとい白川さんは話を続ける。

「仕事熱心なのはいいけど、ちゃんとしたもの食べてるの?今は若いから無理できるかもしれないけど、そのツケは年取ってからズシーンと来るわよ」

「お、仰るとおりです」

 まぁ、好きでこんな生活してるわけではないのだけれど……。

「あら!? 目の下の隈もすごいじゃないの! もしかしてまともに眠れてないんじゃないの?」

「なかなか帰れないもんで……」

 すでに3日完徹というこの状況を、是非そのまま労働基準監督所に伝えてほしいです。はい。

「それに煙草も身体に良くないわ。まぁ、止めろとは言わないけど、吸い過ぎは駄目。精々一日5本とかにしときなさい」

「……あ、はい。……善処します」

「まぁ、ほどほどにね」

 ひとしきり話して満足したのか、白川さんはこちらに背を向けた。

「あ、そうだ。あんた檜山さんだろ? 所長さんが探してたよ。何でも大至急で所長室に来てほしいって」

 煙は変わらず、行き場を求めるように立ち込めていた。


読了ありがとうございます。

続きます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ