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自分が異世界に行くとしたら。
その時、自分のステータス的な物を自由にできるとしたら。
まず見た目をマシにしたい。
APP18とは言わない。日本人的な顔立ちのままでいい。
だけど括れがしっかりできる程度にスリムになって、相応の小顔にしたい。あと背丈最低五センチ下さい。150台はちょっと低い。
それから異世界転移の定番、チート。
といっても程々のチートがいい。俺TUEEE過ぎても迫害されたり面倒事に巻き込まれたりしそうだから限定的なチートが欲しい。だからって具体的に聞かれると困るけど。
そしてハーレム。私は女なので逆ハーですが。こう言うとビ○チとか思われるんだろうな。でもやっぱり複数にモテるとか愛されるって憧れるわけで。いや実際は愛人管理大変だろうけど。
さらにもっと欲を言えば攻めたいし責めたい。いいじゃないか女が男をごにょごにょしたって。ぶっちゃけふたなり化とかして犯したい。イケメンをとろとろにしたい。ノーマルな経験もそうないのに何言ってんのって感じだけど。
「いいじゃねえか。あくまで願望なんだしよ」
「願望というかむしろ妄想なんですがそれは」
「そうか?俺は好きだぜ、真綾のこと」
……これだからイケメンは。
赤くなっているだろう頬を押さえる。
「真綾」
「なに」
「赤くなってくれるたぁ嬉しいぜ。このままキスしていいか」
「しょたいめんのひとにいうせりふじゃないです」
「俺は初対面じゃねえし」
「かみさまがすとーかーとかどうなのそれ」
「否定はしねぇよ。でも好きだからやっちまった」
もう無理と机に突っ伏した。わたしのライフはもう0よ。
そう、目の前のどきゅ……兄貴系ヤンキーは神様なのだ。
異世界の、と頭文字がつくけれど、仮にもイケメン神様から愛の言葉を囁かれる。
――喪女には心の重傷大破待ったなし。
普通のフツメンですら難易度高いというのに……!
そして生憎私に逃げ場はない。
後ろのベッドで寝ている人物を知っているから。
名を三上真綾。つまり私だ。
寝ている私の布団には真っ赤な染みが今も広がり続けていて、中心では木製の柄が直立している。
つまるところ三上真綾はナイフで刺されて死んだのだ。
死んで、そして目の前の神様と会っている間だけ、魂がここにいる。
我ながらやけに冷静だなと思ったら、神様が冷静でいられるよう調節したとのこと。
ちなみに私を殺した下手人は、玄関扉に挟まっている。心臓発作を起こして倒れたそうだが、元々寿命であって、神様が何かしたわけではないそうだ。ただ朝になれば誰かが発見するのは明らかで、神様いわくそれがタイムリミットらしい。
つまり朝までに神様が私を口説き落とせれば、神様は私を囲いこめる。そうでなければ、私はこの世界の理に従うことになり、たとえ異世界の神であっても干渉できなくなる。
「誘ってんのはそういうわけだが、俺は本気で真綾が好きだぜ」
「だからそういう」
「デートしてぇしキスもしてぇ。勿論エロいこともな。だけどやっぱ幸せにしてぇんだ」
「あう」
「だけど神様なんてやってると色々縛りがあってさ。人間同士みたいな恋愛はそうそうできない。でも俺は俺の力でおまえを幸せにしたい。……違うな、幸せにする」
そして神様は跪き私の手を取り指に口付け。
「だから俺の元に来てくれないか」
「~~~~~~~っ」
こくこくこくり。
轟沈した私には頷くのが精一杯でした、まる。
「じゃあ行こうか」
彼が口付けた手を引き寄せ抱き締める。
「あ、」
「どうした?」
「……あの、なんて呼べばいいです?」
「あー……」
見上げれば、神様は明らかに困った顔をしている。
「えっと一応名前はあるけど」
「あるけど?」
「あくまで神様としての名前っつーか……えーあー、あれだ。もし『天照大御神が恋人です!』って言うやついたら変に思うだろ?」
「確かに」
むしろ病院が来いレベルでは。あと罰当たりではないかと。
「だから別の名がいいんだけどよ、こっちは特に神に別名とかねーんだよな」
役割で呼んだりはするけど、と神様はうんうん唸っている。
(神様……神……)
「シン、はどうでしょう?神様の神の字でシン。そのまま過ぎですか?」
「……あーもー、真綾大好きだ!愛してる!」
「シンさん!?」
「折角だから呼び捨てしろよ」
「……シンくんで妥協してくれません?」
「しゃーねーなー」
言ってシンは真綾の肩に顔を埋めた。真綾も真似してシンの胸元に顔を寄せる。
「行くぜ?」
「あの、シンくん」
「ん?」
「ふ、ふつつかものですがよろしくお願いします」
「……もう最ッ高」
真綾はシンに抱かれて、引き込まれる感覚に身を委ねた。
ところでこれって転移と転生どっちなんでしょうか。書き手的には転移なんですが、主人公一回死んでるんですよね……。