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盗賊

遅くなりました。誤字脱字ありましたら教えていただけると助かります。



日の光が僅かに登る明け方、朝の空気は冷たく川の音が絶えず流れるその側で俺は昨晩使用した食器を濯いでいた。冷たい水に手が濡れ少し赤くなっているのを我慢してせっせと洗い終えて未だに仲良く寝ている二人のそばに駆け寄る。


「本当に気持ち良さそうに寝てるなぁ・・・」


 マントに包まるように寝ている二人を上から覗き込むと同時に寝返りを打った。すごい、タイミングも見事に一緒である。とりあえず俺とマールは固い床や木の上でも寝なれているのだが肝心のマーレが大丈夫か心配していたのだがこれを見る限りぐっすり寝れたのだろう。


俺は二人が寝てるのを確認して余った時間で川の近くで服を脱ぎ始める。一糸まとわぬ姿で少し砂っぽい服を叩いた後に流されないような場所に置いた。そして自分の身体の汚れを落とすために冷たい朝の川へと身を徐々に沈める。


「う・・・・つめたい・・・」


 身体をゆっくり冷たさに慣らすために足場の深いところへと足を進める。肩の下まで行くと身体を擦るようにして汚れを落とす。あまりの冷たさに全身の筋肉が一気に引き締まるような痛さを感じるがそれも今は心地よい。


息を止め水の中へと身体全身を沈め空を見た。空は青く澄み渡っており水面で大きく揺れている。水の中から見た景色も良いものだと暫く潜ったあと水から顔を出した。


「ふうーっ!スッキリしたあああ」


 肺の中へ新鮮な空気を大きく吸い込む。そして脱いだ服の置いてある場所へと戻ろうと後ろを振り返ろうとした矢先に岩場を踏み外す何者かの足音が聞こえた。まさかと思いそのままゆっくりと首だけを動かして振り返る。


 するとそこには顔を赤くし両手で顔を隠すかのように立ちすくんでいるマーレの姿があった。

見られている本人は知らないが指の間から覗いているような気もする。


「す!すみませんご主人様っ!!こ、これは・・・あの!決してわざとじゃないのです!」


そう言うとより耳を真っ赤に染めたマーレがその場でしゃがみ込んだ。俺も彼女が顔を隠すと同じタイミングで素早く服を着ていく。しかし手が悴んでいるのか普段より手間が掛かった。


「見てません・・見てません・・・見てません・・から」


 そして何とか着替え終わると少し離れていた所でしゃがみ込んで何かボソボソと呟いている彼女の肩を叩き声を掛ける。


「ごめん、マーレ。もう大丈夫だよ・・・」


見られたのは自分のはずなのに彼女の反応に対して申し訳なくなっているとそれをフォローするかのようにマーレは横に頭を振っている。


「ご主人様は悪くありません。見てしまった私が悪いのです!」


あれ・・見てないとか言ってなかったっけ。

まあ、なんだ。マーレだしワザとじゃないのは確かだ。このままだとしょうがないし早く準備をしないとな・・・。


 思考を打ち切らせると手をその場で叩く。そして気まずいこの空気と話をそこで終わらせるために次の話を持ち出した。


「えーと、そろそろマールも起こして解毒草を探しにいこうか!」


マーレに笑いかけて手を差し出す。彼女もその手を取って立ち上がると少しは落ち着きを取り戻したように見えた。


「はい、私がお姉様を起こして来ますね!」


 彼女はそう言うと此方に背を向けて駆け足でマールの近くまで駆け寄った。そしてマールの肩を大きく揺すったり叩いたりするが彼女は頑なに起きようとせずにマントに包まり続けている。その様子を近くから見ていると痺れを切らしたマーレがマールのマントを引き剥がしていた。本当に姉には容赦がない妹である。


 待っている間、川に向かい石を投げていると漸く起きたマールがマーレに付き添われて川へと顔を洗いに行っていた。それからやっとの事で俺たちは取り出した道具や食器を片付けて目的の解毒草の探索へと向かうことができたのだ。


 そこからというもの3人の足取りは軽く昨日の更に上の川の上流へと足を進め始めて幾分した後に俺たちは川辺付近の木陰で目的の物を発見することができた。それを指定された量だけ採取をしマールへ持たせる。

マールは渡されると同時にそれを黒い靄の中にしまい込み何もなかったかのように消した。

この一連の動作はもう見慣れたものだが一体入れたものは何処へと収納されるか何時か聞いてみたいものである。


目的は達成されたことで一日掛かった任務を終わらせることが出来た。あとは報告のみである。


「さて目的の物も見つけれたし王都へ向かおうか!」


「我が君〜王都に着いたら何か食べたい」


「私も王都の中を久しぶりにみてみたいですね・・・」


 それぞれ意見は似たり寄ったりだが王都へ帰ることに対しては皆んなが同じ意見だった。ふと空を見上げると日は未だ登り切っていないようだ。この調子で順調に帰ることが出来れば昼過ぎには到着することができるだろう。


「じゃあ川を下って通りの近くの道までいこうか」


 そう言うと3人は踵を返して来た道を戻り始めた。帰り道は歩くだけだと味気ないため時折雑談を交えたり王都へ着いたら何をしようかとボンヤリ考えてたりしてるうちに時間は経つ。


「随分、川も小さくなったなー」


「そうですね、それとお日様も随分と登ってきました」


「どうでもいいから早くつかないかな〜」


 マールの話は置いといて。見た通り前まで広い幅をしていた川もいくつかに枝別れした先に次第に小さい小川へとなった。その川を渡るための橋が見え、ここまでくれば後は橋の近くの道をそのまま道なりに進んで行けば王都へ着くだろう。


 それから王都から近く見慣れた道へと着くとふと耳に誰かの悲鳴が聞こえた。もしかして誰かがモンスターに襲われているのかと危惧した俺たちは悲鳴がしたであろう方向へ走りだした。マールとマーレも素早く続いて付いてきている。


そして悲鳴の方向へと走り続け通りの曲がり道を少し入ったところで積荷を運んでいる馬車が盗賊と思われる複数の人間によって襲われているところを目撃した。着いた頃にはもう何人かが地面に倒れており血を流している。戦っている護衛の者も怪我をしているようであれでは長く持たないだろう。


「くそ、折角気持ち良く帰ってこれたのにここで盗賊か・・・マーレは生きている怪我人の治療をしてくれ!残りのマールは俺を手伝ってくれ!」


「わかりました」「了解」


 状況がこれ以上悪化する前にこの場をどうにかしなければならない。それと幸いなことに此方の存在には気づいていない。馬車へと気を取られている盗賊へと俺とマールは静かに素早く近づく、そしてその後に続くようにマーレが走っている。そして盗賊の近くへ着くと俺はマールの手を掴んだ。


「マール頼む!」


彼女から返事はないが手に確かな感触を感じた。黒い光を発する靄は俺の腕を包むようにして手元で集束すると黒き魔剣マールが姿を表す。それと同時に足音に気付いたのか盗賊の一人がこっちの存在に気付いた。


「ん?何者だ!?」


 横を走り抜けると同時に彼の首に目掛けて剣を振る。こちらの存在には気づいたが大声を発する前に彼の頭を宙を舞った。そしてその場で大きく跳躍し盗賊が立っている真ん中へと砂埃を舞い上げて着地をする。突然の来襲に男達は呆気に取られていたが直ぐさまに彼らは自分を囲うようにして剣を構えた。


「おい、ガキ!わりぃが見られたからには死んでもらうぞ!」


「ははん!馬鹿め!わざわざ囲まれるような場所に来るとはな!」


 彼らは以前囲うようにして周りに立っている。俺は彼らを一瞥し狙いを済ませて離れて立っていた一人の男に目掛けて腰の短剣を投げつける。その短剣は吸い込まれるかのように男の眉間へと突き刺さると糸が切れたかのようにその場で崩れ落ちた。一連の動作が素早く実行し彼らが何か行動を移す前に先手を打つ。


「あそこの地面で寝てるのがお前らのボスだったりするのか?」


それを見た他の盗賊は顔に怒りの表情を浮かべ此方へと斬りかかった。


「このガキッ!!よくもボスをおおお!!!」


「やれええええ!やっちまえ!ボスの仇を取るんだああ」


「うおおおおおお」


ただの勘ではあったが先ほど遠くで偉そうに傍観をしていたのは彼らのリーダー的な存在だったようだ。あいにく彼の出番はもう無いだろう。精々あったとしても屍体というオブジェである。


彼を殺したことにより怒りに任せ一斉に斬りかかってきたが指令塔を無くした連携の取れていない集団は只の雑魚の寄せ集めに過ぎない。


押し寄せるように左右から襲いかかる盗賊の剣を避けつつ正面の男のなまくらの剣をマールで受け止める。

同時に剣同士が打つかる音が辺りへ響き渡り耳を刺激する。剣を受け止めたまま滑らせるかのように彼の懐へと潜り込むと同時に腕を翻して肘から肩にかけて一気に両断する。


「グアアアアッ!!!」


絶叫と共に片腕を無くした男は痛みによってその場で倒れた。このまま出血が止まらなくれば死ぬだろうが俺には関係ない。


「このまま来るなら命は無いぞ」


俺は正面の一人を斬り伏せることで自分を囲うようにしてた敵から抜け出すことができた。

そして警戒を解かずに再度振り抜いた剣を彼らに向けて素早く構え直す。


 このまま彼らが逃げていれば犠牲も少なく済んだのだが数の利で逃げ出すという判断までとはいかなかったようだ。そして盗賊達は突然現れた男に意識を向けており先ほどまで襲っていた馬車からは視線を外している。


先ほどまで盗賊から身を守るために戦っていた護衛の者も怪我で動けなくなって馬車の近くへ倒れているようだ。もしそれを治せるとしたらこの場ではマーレしかいないはずだ。なのでマーレには後から続いてもらい俺が敵の目を集めることでその隙にマーレはせっせと治療を施すという流れとなっている。


「くそっ!調子に乗るなガキ!!」


横目で馬車の近くへ敵がいないか確認した後、横から斬りかかる男の剣の腹へとマールを叩き込む。すると一見丈夫そうに見えた剣は真っ二つへと折れた。そしてガラ空きとなった男の腹へも蹴りを叩き込むと近くの仲間を巻き込んで衝突する。



「お前らそのガキにやられるのはどんな気分だ?」



そう言うと彼らを睨むように再び剣を構え直した。先ほど怒りへ包まれていた表情は自然と恐怖へと変わりこのまま膠着状態が続くかと思われたその時


「死ねえええええ!!!」


「くたばれえええこのガキっ!!」



 左右から同時に斬りかかろうと大きく剣を振りかぶる男共に対し、足元の砂を剣で舞い上がらせ彼らの目元に向かって払うと砂は彼らを顔を包むかのように覆い尽くした。


「クソ!目があああ!目が見えねーよっ!!」


「卑怯者があああああ」


 卑怯もクソもあるかと吐き捨てると砂で視界が見えなくなり顔を顰め地面でジタバタと踠いていた二人を躊躇なく切り裂いた。


「さて・・・お前らはまだやるのか?」


 足元の屍体を彼らの元へと蹴り飛ばす。倒れた屍体から徐々に鮮血が流れ血だまりが出来ている。それを見て完全に戦意を失った何人かの盗賊が武器を置いて逃げ始めた。一人が抜けると彼に続いて次々と散るように走り去ると最終的にはその場で生きていた盗賊の全てが逃げ去ったのだ。


「ふう・・・・マールありがとう」


額の汗を拭い短く感謝の言葉を述べると持っていたマールを地面に突き立てた。

すると黒い靄が剣を覆うようにして現れ人の姿に変化したマールが背伸びをしながら欠伸をしている。

先程の戦闘の緊張感の欠片もないようだ。マールに例を言ったあとマーレがいる馬車へと近づく。

馬車の周りで息のある何人かは落ち着いた様子でその場で休んでおり怪我も心配は無さそうだ。


「マーレ!そっちは大丈夫か?」


俺は馬車の中へと声をかけると中からひょっこりと頭を出したマーレが現れゆっくりと馬車から降りた。


「ご主人様こそお怪我へありませんでしたか?」


「俺は大丈夫、それより怪我人はどれほどいたんだ?」


「えーと、女の子が2人に男の方が3人ですね。他の方は残念ながら・・・」


そう言うと顔を伏せ悲しそうな顔をする彼女の頭にそっと撫でた。


「マーレはその5人を救ったんだ。それだけでも凄いことさ」


「はい、ありがとうございます」


 少しだけ顔を明るくした彼女はされるがままに撫でられていると後ろのマールが俺の肩を叩いた。

俺はどうしたのかと問いかけようとしたのだがマールが無言で王都への道を指差した。


「我が君、王都の方から馬の音がする。多分衛兵たちが来てるよ」


「衛兵か・・・見つかる前にマーレとマールもそろそろ行くぞ」


 彼女の言う通り向こう側をよく見ると騒ぎを聞きつけたのか衛兵の者が来るようだ。

馬車の周りで休んでいる怪我人も彼らが来たのならもう大丈夫だろうと俺たちは隠れるかのように道から外れた森へと身を隠す。


 盗賊を追い払ったが下位冒険者に過ぎない俺が少しでも怪しまれるのは避けたいのと目立つことはこれ以上遠慮したいのもあったため馬車へ乗っていた者たちが保護されたのを確認すると衛兵に見つからないよう静かに王都への道を進み始めたのであった。











ランキングとか気にしないようにはしているのですが、ここまで行くとは思いもしませんでした>_< これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

最新話22時頃の予定


次の話の予告です


3人は任務の報告をするために冒険者組合へと足を運ぶ。しかしそこには何故か聖女イリアの姿が・・・顔を別人へと変えているが焦るレイド。そして静かに嫉妬の炎を燃やすマーレ。はたしてレイドの運命は?


別作品、合間に良ければどうぞ!http://ncode.syosetu.com/n7096di/

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