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出立

 日の光が水平線の彼方から徐々に昇っているのが見える。早めに目が覚めてしまったため日が昇るにつれて部屋の中へと差し込む光が少しずつと動いていくのが自分の目に入る。そしてふと隣を見るとマーレが自分の腕を抱きしめたまま気持ち良さそうに寝ているため身体を起こそうとも起こせない状況になっている。それと昨夜寝る前に何があったのかよく思い出せないのだ・・・いや思い出してはいけない気もする。



「あの後、我が君に抱きついたマーレがエネルギー切れでそのまま倒れた」


「マール・・・心を読めるなら俺の気持ちを察してくれると嬉しいんだが・・・」


マールは思い出したくなかったことを鮮明に思い出させてくれた。そのまま忘れていたかったからこそ自分で無かったことにしていたのに何でコイツはこんなに都合よく心を読んで親切に教えてくれるのだろうか・・。



「我が君が悪いんだよ・・・マーレにあんなこというから」


「家族になろうとしか言ってないぞ?」


「それがダメなんだってば、我が君はマーレをわかってないなー」


ここぞとばかりに偉そうに大した胸もない胸を張るマールに少しだけ苛立ちを覚える。


「マール!わかるんなら勿体ぶらずに教えてくれよ」


そう言うとマールは毛布から身体を出すと窓の横にある家具に座りマーレについてゆっくりと話し始めた。


「マーレはね!昔から依存するタイプなの」


「それは俺がマールの会う前?いや昔からそうだったのか?」


マールは退屈そうに欠伸をした後背伸びをすると俺の問いかけに首を横に振った。


「なんていうか我が君の何代も前の主人がマーレが小さい時に結婚する約束したのに結局するまえに当たり前だけど死んじゃったの」


「それは戦死なのか?それとも誰かに襲われて命を落としたとか?」


「違う違うよ、人間の誰しもが体験する事だよ」


人間の誰しもが体験する事?


「言い方を変えると寿命で亡くなったってわけ」


「なんだよ、最初からそう言えよ」


「それからというとマーレは彼が亡くなったせいで毎日あの人の事を思い出しては泣いてたし、ずっと前の事だけと何かに依存するというのがマーレの生き方みたいなものなのかもね」


難しい言い方をするもので真剣に考えた俺の気持ちになってほしいものだ。まあそれにしても人間だから聖剣や魔剣とは違って寿命の概念があるのは仕方がないことである。


「そうなのか、そういえばマーレが小さい時って幾つくらいの時?そういえば今マールとマーレは何歳なんだ?」


ふと疑問に思ったことだが彼女達の年齢は外見とは違って俺よりも遥かに上である。この機に聞いておこうと問いかけたが彼女は外見に似合わない艶っぽい笑みを浮かべたまま此方を向いた。



「我が君・・・・・そんなに聞きたい?」


「いいえ、大丈夫です。すみません」


「そうなの?遠慮してる?」


「ところでマーレは何時起きるんだろう?本当に遅いよね?」


無理やり会話を終わらせて隣のマーレを指差して話題を変える。もちろんその考えは心が読めるマールにはわかっているため彼女もこれ以上特にその事について掘り返す事はしなかった。



「えーとね、マーレは聖剣でしょ?だから自然、つまり日の光から力を得てるわけ!でも長い事ずっと地下にいたせいで光を取り込めなくなっていたから先日まで自分で結界を張って閉じこもっていたの」


「だからあのでたらめな異世界にも見える異空間があったのか」


あの時の自然豊かな世界はマーレが作り出した自分だけの結界だったという。自分達が見つけるまで長い間そこで一人で待っていたのだろうか・・・。


「自分の張った結界なら外部から力がもらえなくても長い間は持つからね」


「もしも誰も見つけれなかったらどうなっていたことやら・・・」


「マーレはひとりぼっちは苦手なタイプよ、我が君に見つけてもらったのを凄く喜んでいると思う」


そう言われると嬉しいがマールに言われるがままに彼女を探しただけである。まさか過去にこんな事情があったせいで姉よりも完璧超人に見えるマーレがあのような依存するタイプとは思わなかった。


「まあ・・・俺なんかでよければマーレの面倒は見るさ。家族だしな」


「そうねマーレは我が君を凄く気に入っているから下手したら押し倒されるかもね?我が君の幼馴染みのリアっていう人みたいに」


「それは勘弁してくれ」


 その後マールと今後の予定を幾つか話したりしているといつの間にか朝と言える時間を過ぎており、隣にねていたマーレが抱きついていた腕を離して目を覚ました。マーレは昨日の事を覚えてないようで俺にとっては大助かりだった。そして寝ていたせいか無意識に俺の腕を掴んでいた事を何度も謝る彼女を俺は宥めて今後の予定を話した。


「マールとマーレにはなるべく人の姿でいてもらいたいと思う」


「はい、ご主人様がおっしゃるのでしたらこのままでいさせていただきますね!」


「別に姿は気にしないけど何で?」


「それはな!前の大陸でも似たのがあったが冒険者組合があるからそこに登録しようと思う」


 俺はマールと故郷であるこの大陸に渡る前に所属していたギルドという組織ではハンターとしてモンスターを狩る。しかしここでは勿論そのギルドなんてものはないがその代わりに冒険者組合と言われる組織が存在する。

自分達がここに来る前には事前に情報を調べていたため冒険者組合に登録するためには最低でも人数が3人以上である必要があるのだ。


「よってマールとマーレには人の姿で行動してもらいたい」


「まあそれなら仕方がないね」


「お姉さま!ご主人様の話をちゃんと聞かないとダメですよ!」


怠そうにしているマールに対しマーレは頬をふくまらせながら彼女に向き合っている。

やっぱりマーレが姉と言われても違和感がないように俺には見えた。


「ほらほらマーレもそこまでにしてー!とりあえず準備出来次第ここから出発するぞ!」


「おーっ!」


「へーいっ!」


 相変わらずのマールと違いマーレは意気揚々に準備を開始した。そして俺はここに来た形跡をなるべく隠すために倒れた食料棚を直したり使用した毛布の一部を使用してマントとなるものを作り始める。


マントは身を守るためや地面に寝る時、更に身体の温度を保つためにも使用が出来るため冒険には欠かせない物だ。


 俺が作っている間にマールは適当にあたりを歩くついでに近くの監視をするように頼み込みマーレはその姉のマールの近くで日の光を浴びるために日の下で立ったまま手を合わせて日光浴をしていた。

こう見えても俺は器用な方で着脱が出来るようにボタンや簡単な装飾を施しつつも日の光が真上に登りきらない内にマントを3人分作る事ができた。

元はここがアウリアス家の本家であったため毛布の質は良く今の今まで盗まれなかった事に感謝をしつつ作ったマントの色に関しては申し訳ないが森でも目立たないように主に緑色にしている。


マントを持って今にも壊れそうな木の扉を開けて玄関口に行くと待機していたマールとマーレが待っていた。


「マール達も忘れものはないな?」


「はい、大丈夫です!」


「特に持ち物とか無かったから大丈夫かな」


「よし!じゃあ二人もこのマントを使ってくれ」


そう言って二人に自分が見繕ったマントを渡す。まあ地味な色なのはしょうがないとして喜んでくれればいいんだけどね。


マーレは受け取るや直ぐに大事にしますと過剰に感謝をされ思ったよりも喜んでくれたようだ。

まあマールはマントをあげたのは1度や2度じゃないため特に何も言わずに受け取っていた。


俺は二人が受け取った後で幼少を過ごした昔の我が家に行ってきますと短く別れを済ませ彼女達に向き合う。



「じゃあ出発っ!」



掛け声と共に日の光は3人となった新たな門出を優しく照らした。




ハイファンタジーのランキングで自分の書いているタイトルがあって大変嬉しく思います。

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