ペケ
「ペケー。ごはんだよー。」
僕の頭の少し上から幼い声が僕に呼びかける。声の主は僕より7歳年下だ。にもかかわらずその声は僕の頭上から呼びかける。それはなぜか。答えは簡単だ
僕が猫だからだ
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僕はもともとは人間だった。両親は教師で家族の時間はあまりなかったがそれなりに幸せな生活を送っていた。しかし、大学受験がうまくいかなかった僕は自信を失ってしまい。部屋に閉じこもった。
今年がダメなのなら来年頑張ればいいと母さんは言ってくれた。しかし、父さんは僕が大学受験に失敗してからほとんど会話をしなくなった。もとから無口な人ではあったがそれでも父さんが僕を疎ましく思っているのは態度からハッキリと伝わってきた。
勉強を怠った僕が悪いのは分かる。だけど今までろくにかまってくれなかったくせにこんな時だけ怒る父さんが気に入らなかった。大学受験に成功した友達が憎かった。たった一度の失敗で僕を見限った彼女が許せなかった。見下すような先生の目が嫌いだった。
もはや、僕の目には全てが悪のように映った。全てが嫌いで、なにもかもが悪に見えてしまう自分が何よりも情けなくて、 気がつくと僕は見たこともない田舎の細い道で倒れ込んでいた。
なぜ自分がこんなところにいるのか、自分の住んでいたところは何処だったか、自分の名前は何だったか、だんだんと記憶が薄れていくとともに視界が暗くなっていった。
僕は何もかもどうでもよくなってしまいそうなこの感覚に必死に抵抗しようとしたが、何をそんなに抵抗する必要があるのかという疑問が頭に浮かび上がり。そのまま意識を捨てた