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それぞれの思い


「あぁ!! お姫様、本当に良いところに!!」


 なんだか賑やかだなと思ってきてみれば、すごい数の人だ。みんなここに逃げていたんだ。


 でも純粋に喜んではいられない。目の前にいるその存在の正体をつかめないことには。


「みんな僕が勇者だって信じてくれないんだ」


 ふぅーん。あくまでシラを切るつもりなんだね。魔王さん? 


 あ、でも待って。私はついさっきまで勇者に化けた魔王の動向をずっと伺っていた。でもそのついさっき、隊長さんと話をしている間に見失ってしまった。


 つもりこの数分の間だけが、唯一魔王の動向がわからない空白の時間。


 仮に魔王が、私がずっと後をつけているのを知っていた上で何もしていなくて、監視の目が解けた途端に変身を解いて別の誰かに変身したとしたら?


 そうなるとこの勇者は本物の勇者ということになる。うーん、困ったなぁ。


 その可能性もあるけど、普通に考えたらこんな短時間に変身を解くかなって気もする。


 あー、考え過ぎかな。うん、そうだ、多分こいつは魔王だ。


「ねぇ、お姫様。君なら僕が本当の勇者だって信用できる、本物しか知らない質問が出来るでしょ? その質問を僕にしてよ!!」


「え、質問?」


 ……あぁ、そういうことね。そういえば、私が王様の部屋に行くように言われる前、メイド達が、本人しか知らない質問で本人かどうか確認すればいいんじゃ……みたいな話をしていたわね。ということは、ここに居る皆はその質問で本人と証明できた人たちで、勇者もその一人になりたいってわけね。


「そうね、でも私が質問する前に、私が本人かどうか分からないでしょ? 誰か私に質問しなさい」


 コックの一人を呼んで、質問させる。勿論問題なく答えて私が本人であることは簡単に証明された。


「ところで、なんで勇者は私に質問させるの?」


「本当の勇者しか答えられない質問が君にしかできないからだよ」


 そう言われてみれば確かに、ここにいる人たちは皆勇者とはさほど関わりのない人たちだ。対して私はそれなりに勇者と遊んだことのある中。その中でいくつか勇者への質問候補となりそうな話もある。


 しかしこの魔王、妙に自信満々だ。その質問に答えられるとでも言うのだろうか。それともその質問をされてもなお、バレないでいる作戦を持っているのか。


 そうだ、いいことを考えた。質問の前に魔王を試してやろう。あなたは自分以外が知る由もない事実を問われて慌てずにいられるかな?


「その前にちょっと聞きたいんだけど、あなた、大広間の右から二番目のテーブルに心当たりはない?」



              ■ □ ■



「へ、大広間? テーブル? 何の話?」


「……そうよねぇ、知らないはずがないわよねぇ、だっ――え?」


 突然意味のわからない質問をされる。大広間のテーブルがどうしたの言うのだ。なんかさっきも記憶の話をしたような気がするけど、僕はどうでもいいことはすぐ忘れてしまうんだ。でも覚えていなきゃいけないことはちゃんと覚えているから、そう言う意味では余計なことに頭の容量を使わないから良い事でもある。


「え、心当たり無いの?」


「ないよ大広間になんて。そんなことより、僕が知らない質問なんてしても意味ないじゃん。僕だけが知る質問をひとつ頼むよ」


 よくわからないけど、すごい慌てようのお姫様。何をそんなに驚くことがあるのだろう。


「え、えっとじゃあ……私のお父様と私の大好きな御伽噺のタイトル、それから一番好きなシーンは?」


 お、分かるぞその質問。もしどうでもいいことで忘れてしまっていたらどうしようかと思ったけど、よかったよかった。


「タイトルは【森の妖精とオークの親子】で、好きなシーンは【森の妖精が悪いオークだと思って池に突き落としたのが、オークを狩り終えて水を飲む優しいおじいさんだったことに気付いて、号泣するシーン】」


「せ、正解。その通りよ」


 その瞬間、僕の安堵の声とその場にいる皆の安堵の声が重なり合って大きな歓声になる。これでようやく僕の白が証明されたわけだ。


 お姫様は依然事態を飲み込めていないような表情をしてるけど、もう特に君に用はないからどうでもいいや。


 僕的にはこの集団の中に調査をすり抜けて魔王が潜んでいると思うんだよなぁ。じゃないとここまで苦労したのに報われない。


「さてと……まず誰から調べようかなぁー。兵士はいっぱいいて面倒くさいし、コックもたくさんいるなぁ。おっ」


 広いホールを見回していると、兵士もコックもかなりの人数がいた。そんな中、この広いホールに一人しかいない役職があった。


「メイドさんから調べてみますか」


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