みんな、みんな間違える
「そ、それは本当か!!」
「は、はい確かです!! 勇者様が亡骸を運んでいるのを見ました!!」
「そうか……ではお前は俺に代わってここで混乱を鎮めてくれ。俺はお前の報告を皆に知らせに行く!!」
「報告なら僕がしますよ、上官が走り回ることなんてありません!!」
「でもお前さっきから慌てふためいているだろ。情報は正確さが大事だ。ここは俺がやろう」
「り、了解です!!」
やってきた兵士に場を任せて、俺はその場を一旦離れる。平静を装って離れて、ある程度離れたところで大きく深呼吸。
すーーーー、はーーーー。
「魔王様が死んだ!?」
なんということだ。魔王様が死んでしまったなんて。
単身で王城侵略するなんていう噂を聞いたものだから、心配になってついこの間習得した変身魔法を使って魔王様を追いかけてきてしまった。
だけど、変身した魔王様が誰に変身したのか分からず、とりあえず俺も兵士に変身して様子を探っていた。
そしたら魔王様が殺されていたなんて……。
「どうしよう……」
とりあえず、王とやらはこの手で八つ裂きにしてやろう。魔王様の仇は右腕であるこの私が果たさなくては。
でもその前に魔王様の姿を一目拝んでおきたい。その勇ましく散った勇姿をこの目に焼き付けておきたい。
そういえば、あの兵士は勇者とやらが魔王様の亡骸を運んでいるとか言っていたな。
ということは、まず勇者を見つけて魔王様を返してもらうとするか。
覚悟が決まり、俺は勇者を探すために走り出した。
■ □ ■
「さてと、一先ずこれでいいかな」
うん、バッチリだ。ここなら王様の亡骸が見つかることはないだろう。
僕は大広間のテーブルの下に王様を隠し、テーブルクロスを上から被せることで完璧な隠蔽に成功した。いや、隠蔽なんて人聞きの悪い。応急処置だ、応急処置。
怪しまれないようにその場を離れて一旦休憩する。ずっと肥満体型の王様を引きずっていたから肩周りがひどく痛い。
「これからどうしようか」
王様を間違えてぽっくりやっちゃった件はこれで解決だ。それじゃあ何をすればいいのか。
ああそうだ、肝心なことを忘れていた。王様の件が解決した今、やるべきことはひとつだ。
「魔王を見つけなきゃ」
そういえば、俺はあの兵士に思わず嘘をついちゃったから、あの兵士がしっかり連絡していれば今頃みんな魔王に怒り狂っているんだろうな。
ということは、今魔王を倒せば国民のボルテージは最高潮、僕への感謝も最高潮。
「我ながらあのフェイクはファインプレーだったな」
自分があまりにジーニアスで困ってしまう。でも、そんな自分が好き。
そうと決まれば直ぐに魔王を探しに行こう。今頃兵士にでも化けた魔王が、やってもいない濡れ衣で騒がれて内心混乱している頃だろう。
■ □ ■
「全部、垣間見てしまった……」
眼前には鼻息荒げて満足げに大広間を後にする勇者の姿。そして彼が右から二番目のテーブルの下にお父様の遺体を隠したのも、それ以前に何故かお尻を蹴ってからお父様に斬りかかったところも、全部この目で見てしまった。
メイドに、お姫様は危ないので王様のところに戻っていてください、なんて言われてお父様の部屋に行ってみたらちょうどその現場を目撃してしまった。
その後もどうすることもできずにただ後ろをついていくだけ。とうとうここまで来てしまった。
勇者は魔王を見つけなきゃ、と言っていた。でももう私には分かる。ここまで全ての経緯を見てきた私になら分かる。
「絶対あいつが魔王よ。間違いないわ」
お父様の仇、私が必ずとってみせます!!




