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檸檬

檸檬

作者: 朔芭

ごめんなさい。置いていかないで。そばにいてよ。


幼い日、私はそうやってある人物にすがった。

けれど、私を振り返ることなく、明るい光へと向かう後ろ姿しかみえなかった。取り残された私は暗く、寒く、冷たい場所でひとりぼっちになった。

寂しくて悲しくて、泣いた。

たくさん泣いた。喉が渇いた。お腹が減った。怒りが芽生えた。


どうして、どうして私を置いていったの? 私のことがきらい?こんな辛い気持ち、耐えられない。いやだ!逃げ出したい。こんな想いを抱かせたあなたがきらい。嫌いなあなたがどこへいこうと私は平気。だって、あなたがきらいだもの。


幼い日、わたしが出した答えだった。


あれから12年経ち、すでに私は結婚適齢期の17歳になっていた。私の家は、それなりに歴史のある格式高いだけの伯爵家だった。祖父の代が栄え、父の代で衰退した我が伯爵家だが、まだ挽回の余地があった?それが私の結婚だった。私の家は、王家へも嫁ぐことのできる家であったので、それなりに人気があった。成り上がりの方が大多数であったが下心がない方なんていらっしゃらないだろう。

私は、幼き日より父母が決めた方と結婚することは理解していたし、受け入れていた。一度は、物語のように、いつか王子さまがと夢見たことはあったが所詮、夢は夢。どこか冷めてしまっていた私は、社交界で、甘い恋に落ちることもなく、アバンチュールを楽しむこともなかった。その他大勢の娘が望む財産があり、身分が高く見目麗しい殿方に気に入られるように媚を売ることも煩わしく今日も、ため息をついた。


そして、今日は公爵婦人主催の催しであったため父母と共に挨拶へむかった。

夫人は輝く笑顔で迎えてくれた。

「ソフィー、ようこそ。あなたに会えて嬉しいわ。

今日のお召し物とっても素敵だわ。そのモンイエローのドレスを着てると若い頃のリゼがいるみたいだわ。」

そうして、母と若い頃の話で盛り上がるのはいつものことだった。一通り挨拶を済ませると父母とは、別行動をとる。

私は、公爵家の東の庭にとても素敵な蓮の池があり、そして今時期が見ごろであることを思いだし向かうこととした。

そうして、会場から出た私に気付き後をついてきたものがいたことは露しらず、格調高い調度品や大作の絵画の前を通りすぎ、東の庭園へと続くテラスへとやって来た。そして、足を踏み出そうとした時に不意に後ろから、

「ソフィー、久しぶり。」



振り向くと、金の髪にふわりと笑う公爵家の跡継ぎであるレオン様がいた。レオン様は何年もこの国を離れて異国へと留学されており、帰国したとの話も耳にしていなかった。

2へ続く。


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