2日目 2
《登場人物》
安田 将吾 大学生 20歳
―――――――― 2日目 2 ――――――――
将吾は、大通りに辿り着いた。近くには通い慣れた商店街のアーケードがある。
「流石にここに来れば、誰かはいるだろう……」
将吾は、人がいることを期待した。しかし、そんな期待をぶち壊す場面が待っている事を将吾自身は知らない。
アーケードに行き、商店街に入る。商店街は昔からそうだったが、シャッター街だったが、店舗によってはシャッターは閉まっていない。
将吾はゆっくりと商店街を歩いていく。
依然として、人の気配はない。
「どうして誰もいないんだ!? 何なんだ? この世界はどうして誰もいないんだ!」と叫んでも反応する奴は誰も出てこなかった。
将吾は地べたに座りこんだ。
【くそっ! くそっ! くそっ!!】
周辺を見てみる。色々な店の明かりが寂しく思える。
将吾は何かに気づき、奥のアーケードの通りを見た。
奥には自分がよく通っている大きなレンタルDVD店があった。その入口で黒いパーカーを着た人間が店の中に入っていくのを目撃した。
【人か? 人なのか? とにかく行ってみるか】
将吾自身もはや、疑心暗鬼と希望の光みたいに思えた。厳格でもいいとにかくちゃんとした人間に会いたい。
彼はレンタルDVD店に向けて走った。店の自動ドアが将吾を迎える。
レンタル店は二階建てで、いつも通っている時と同じ雰囲気であり、店内が変わっている様子はなく、それぞれコーナーごとに分かれている。そのレンタル店はCD、ゲーム、新作DVDは一階。旧作やドラマその他、大人向けのDVDは二階となっていた。
将吾は、最初に一階のフロアを捜したが、人の気配はなく無人であった。
【誰もいない。だけどこの店に入ったのを確かに見たはず……上か!】
将吾は二階のフロアに向かうため、階段をのぼる。
フロアの陳列棚には色々と映画やドラマのDVDが置かれている。しかし、カウンターにもどこにも人のいる気配はない。ゆっくりと陳列棚の間の狭い廊下を歩きながら人がいないか探してみる。
将吾は人を探しながらDVDのコーナーを見て回る。一瞬だけ陳列棚に置かれてあるレンタルDVDに、自分の写真が写ってあるのが見えた。
「えっ!?」
陳列棚の前に立ち止まり、一本のDVDに手にする。DVDの表表紙を見てみると一人の顔が描かれていた。DVDの題名は……
《夢》
「夢……?」
表紙の顔は将吾自身の顔だった。。
彼は不気味に思い、DVDを陳列棚に戻し、他のDVDを手に取ろうとした時に一階のフロアで大きな物音が聞こえた。
「何だ? 今の?」
将吾は、急いで、一階のフロアに向かう。階段を駆け下りた後で周辺を見た。
するとCDコーナーのCDが一枚、床に落ちていた。将吾はゆっくりと近づき、落ちているCDを手にとった。
そのCDは、将吾いつも聞いているロックバンドのシングルCDだった。
「あ、俺好きな奴じゃん。でも何でこれが?」
将吾がCDに目線を奪われている間に、背後からゆっくりと黒いパーカーを被った人間がゆっくりと近づいてくる。
だが、彼はパーカーの姿に気付くことができなかった。CDを陳列棚に戻して、後ろへ振り返った瞬間、黒いパーカーが、将吾を襲う。
「うわぁっ!」
黒いパーカーをつけた人間は、正面から将吾のお腹めがけて、勢いよく飛び蹴りを食らわした。将吾は背中から倒れた。
パーカーは、彼のお腹に座り、馬乗りの状態で将吾の顔を殴ろうとしてくるが、なんとか自分の腕でパーカーの拳から守る。
不利な状態である将吾だったが、反撃のチャンスはすぐだった。
もう一度、将吾の顔に向けて、右の拳を勢いよく下ろそうとした瞬間、無意識でパーカーの右腕を左手で力強く掴み、空いている右手で、パーカーの脇腹に鋭いパンチを当てる。
パーカーの脇腹に激痛が走った。
脇腹の一発が効いたのか、パーカーは馬乗りから横に倒れた。
形勢逆転!
将吾は、倒れたパーカー上に、馬乗りになってパーカーのフードを無理やり外した。
「お前は誰だ!?」
黒いフードが外され、顔が見えた。だが、相手の顔が見えた時、将吾の心の衝撃は半端ではなかった
フードで隠れていた髪が現れ、床のタイルに綺麗に付いていく。
とても長く、男性の様な髪ではなかった。姿も成人女性であるのがよく分かる。
将吾が放った拳の威力が強かったのか、女性は、気を失っていた。
馬乗りをやめ、地べたに座り、自分の身が健康で、五体満足で生きている事と、自分とは別の人間がいた事に喜びと落ち着きの安堵が将吾のつく溜息に、感じ取れた。
「一体、何なんだよ。いきなり襲いかかってきやがって、勘弁してくれよ」
将吾は、自販機で買った飲みかけのジュースを鞄から取り出し、口に入れた。
第4話でございます。
話は続きます!!
いつも読んでいただきありがとうございます。
これからもがんばっていきますのでよろしくお願いします。