1日目 2
《登場人物》
安田 将吾 大学生 20歳
―――― 1日目 2――――
将吾は目を覚ました。窓から見える外の風景は黒一面、部屋も暗い状態になっていた。
「えっ? もう夜!?」
腕時計を確認すると、《PM6:33》になっていた。
「そんなに寝ていたのか!?」
将吾は、溜め息をつきながらも明かりをつける為に立ち上がり、明かりのスイッチを押した。押した瞬間、天井に着いた照明がつき、暗かったリビングを明るくした。
「おお! 文明は生きているぞ! いや、さっき言ったな」
独り言みたいに呟いて、再びソファーに座る。
「ああ~寝すぎたな。ちょうど腹減ったし、飯食うかな」
将吾は、冷蔵庫を開けにキッチンに向かった。冷蔵庫の冷蔵室ドアを開けてみると、中には何もない事に首を傾げた。
「あれ? なんで何もないんだ?」
続けて野菜室、冷凍室を開けてみたが何もない。ただただ冷蔵庫による機械的な冷気が、将吾の顔と両手に吹きかけている。
「おかしい。何もないなんてさっきまでジュースやお茶だってあったのに……」
自身の空腹を我慢しながらも、キッチンの戸棚をあれこれ探るが、どこにも食べ物と呼べるものは入っていなかった。将吾は一つの決断をする。
「しょうがないな。買いに行くか」
将吾は、階段を上がっていく。自室に置いている財布を取りに。自室の机に置いてあった財布を取った時、小銭入れを確認する。
黄金色の硬貨が2枚銀色の硬貨が1枚と穴の空いた銀色硬貨が1枚、銅の硬貨12枚。入っている。
札入れには偉人の肖像画が描かれていた。
「英世さんが3枚に、一葉さんが1枚、諭吉様がない!」
将吾は、深い溜息をしたあとで財布を持ってゆっくりと手すりを手で滑らせながら階段を下りる。
小学生の頃、階段を滑り落ちた時があった。尻餅を突きながら。それ以来、階段を昇る時は駆け昇るが、降りるときだけ手すりを滑らせながらゆっくりと階段を降りていく事にしている。
将吾は階段を下りた後、玄関に向かった。最近、お気に入りのスニーカーを履いて、ドアを開いた。外を出てみると、真っ暗な一面でありながらも朝頃に見たとおり、所々で靴や瓦礫が落ちており、車が乗り捨てられている状態だった。
【外の様子が変わってない……】
何処かおかしい感じがしたが、外の様子については、あまり気にしなかった。将吾は、車庫に停めてある自分のマウンテンバイクを取りに車庫に入るが、愛用のマウンテンバイクがない。
【あれ? 俺のマウンテンバイク……】
「えっ? 嘘でしょ? マジで!? ない。10万もするマウンテンバイクがない!」
マウンテンバイクがない事に、焦りと混乱が同時に押し寄せてきていた。将吾は落ち込んだ。その上、自身の腹の虫は納まってくれる事はないようだった。仕方なく歩いて近くのコンビニに行く事にした。ゆっくりと夜の街を歩いていく中でふと考えた。
【俺は、どうして道の真ん中で倒れていたのか? そして、道に乗り捨てられた何台ものの車に、落ちている靴と瓦礫。そして、この人のいない街。なんだろうな? ドッキリ? まさかこんな地方でか? 最近のテレビ局って何でもやるんだな。ビックリだぜ】
将吾は一度、空を見上げる。
雲のない濃い藍色の空だ。
でも、星がない。月もない?
【月がない。誰もいねぇ ここは現実なのか?】
将吾は道で立ち止まり、力いっぱい右手で頬をつねった。
「痛てててて、痛てててて、やっぱり現実か!!」
将吾は沈黙して、立ち止まったままの足をコンビニ向けて歩いていく。数分歩くと、いつもよっているコンビニにが見えた。照明がついている。
「やった! 照明が付いている……! という事は人がいる!」
将吾はコンビニへ走った。数時間は自宅で寝ていたが、誰一人いない街の不気味さから解放される。
ハズだった……
コンビニ辿り着き、自動ドアが開いて中に入った。コンビニの照明がいつも来ているよりとても明るく眩しく感じた。
だが、将吾は愕然とした。
コンビニのそれぞれのコーナーの商品棚に同じ品だけが置いてあり、店員がいない。
【あれ? 照明がついてるのに誰もいねぇのか】
「すいませーん。誰かいませんかー!」
コンビニの中で自分の声が響いている。しかし、誰から将吾の声を反応する者はいなかった。
【仕方ない。お金だけ置いて、貰っていくか】
コーナーには一種類の弁当、ドリンクコーナーには500mlのスポーツ飲料水。お菓子コーナーには一種類のクランチチョコレートがずらりと並べられている。
雑誌コーナには普通のコンビニなら漫画や情報誌などが並べられているのだが、このコンビニは大学の講義で必要と言われて買った教科書や参考書とノートが並べられていた。
【いつものコンビニと違う。ど、どうなってるんだ? 此処は?】
将吾は、弁当と飲料水とチョコを持ってカウンターに行き、自らレジに立ち、さっきの品物をバーコードを通した。レジにはバーコードを通した品物の値段表示が出ている。
《¥698‐》
将吾は、お金をレジの近くに置いた。
「すいませ~ん。お金置いておきますよ~~」
しかし、この声にも反応することはなかった。
「やっぱり誰もいねぇのか。しょうがない自宅に戻ろう」
弁当やチョコをコンビニの袋に入れて持ち、コンビニをあとにする。
外の景色は変わらず、藍色の闇が空を覆う。街灯が将吾の姿を照らしている。
将吾はゆっくり歩き、自宅へ戻る。自宅へ戻った後は、買った弁当をゆっくり味わった。買った弁当の味はいつもどおり美味しい。変わらない味だった。弁当を片付けた後、ソファーに寝っ転がった。
凄まじい疲労と眠気、そしてまた激しい頭痛が始まった。
【痛ててて、また頭痛が、早く寝ちまおう】
将吾は再び目をつぶった。そしてゆっくり深呼吸をした。
お待たせしました。
第二話でございます。
話は続きます。
この物語はフィクションです。