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3日目 1

《登場人物》


 安田 将吾  大学生 20歳

 鬼頭 美津音

 河内  源  刑事  59歳

 木村 賢介  刑事  24歳

 安田 恵理


 


 3日目 1



 将吾は目を開けた。昨日の夜は美津音が自分の部屋のベッドで寝て、リビングにあるでかいソファーで寝ていたのを思い出す。

 硬いソファーの為、あんまり寝る事ができず、逆に首に負荷をかけてしまい、寝違えてしまった。

「ああ、いてて」

 寝転がった体勢から変えて、彼は立ち上がり、リビングのカーテンをすべて開けていく。

 今日もいい天気。

 将吾は、美津音が寝ているのを確認しに、自分の部屋へとゆっくり向かっていく。

「あいつ起きてるかな?」

 そんな感じに思いながら、階段を上っていき、自分の部屋へとたどり着き、2、3回ノックする。

「おはよー。美津音さん。朝だよ~。美津音さ~ん」

 しかし、彼女の反応がない。将吾は再び、2、3回ノックしながら声をかける。

「お~い。美津音さん? 朝だよ~?」

 数秒待ったが、反応はなかった。

 心の中で葛藤と戦っている。




 開けるべきか開けざるべきか。




 将吾は思い切ってドアのレバーを右手で掴んだ。

「開けるよ!!」

 ドアを開けると、部屋には誰もいない。

「あれ!?」

 窓が開いており、外の風が吹き、レースのカーテンが揺れていた。

 将吾は、カーテンが揺れる窓から顔を出す。

「えっ?」

 あたりは全く変わらない、景色、だが、奥には美津音の歩く姿を見かけた。

「美津音さん?」

 将吾は急いで部屋を出て、階段を駆け降り、玄関から飛び出していく。

 彼女が歩いている方向へと将吾は追いかけていった。

「美津音さーーーーーん!!」

 ずっとまっすぐの直線をひたすら走る。確かに窓から確認した時は、確かにこの方向に歩いているのを見かけていた。

 ずっと長く続く直線の道路を走っていく。

 後ろを見ると既に自分の家などは見えなかった。

「もうこんなに走ったのか……」

 どのぐらいだろうかこんなに走ったのは……将吾自身感心をもっていたが、そんなことを思っている場合ではなく、早く美津音を探さなければいけないと感じていた。

 空が黒くなりつつある。

 将吾は嫌な予感を心の奥底から煙のように現れようとしていた。更に走っていき、美津音の姿を追いかけていく。

「美津音さん!」

 目の前の十字路で左に曲がっていく美津音の姿を見つけて、さらにスピードを上げて追いかけていく。

「待ってくれ!!」

 将吾はひたすら走る。しかし、不思議な事に、息切れや足の疲労感や筋肉痛を感じる事なくむしろ軽やかで、何キロでも走れそうな勢いを持っていた。

 さらに走っていき、とうとう美津音の姿を見つけ、将吾はほっと溜息をつく。

 気付けば、将吾は見覚えのあるところに来ていた。

「ここは、俺が最初に倒れて気付いたところだ」

 長い一日がスタートして、2日経ち、久しぶりに訪れた場所。

相変わらず周りは瓦礫と車、そして靴が色んな所に、放置されたままだった。

「何なんだろう本当に?」

「ここが始まりの場所……」

 声が聞こえる方へ、将吾は視線を向ける。

 そこには、神妙な面持ちと黒く煙のように殺気を放つ美津音が立っていた。

「あなたは何もわかっていないのね」

「何も? この世界の事か?」

「ええ、ここがどういう世界なのか……」

 将吾は、周りを見渡し、どこともない街だという事を感じ取ったが周りは暗い。

「ここは夢の中だ。しかも俺の」

「ええ、でも、あなたは今、危険な状態。下手をすれば、死ぬ可能性は十分あるわ」

 美津音の顔は、今までに見たことない重い表情。何とも言えない暗い空気が空の色と同調していた。

 将吾は彼女に問い詰める。

「ここは夢の世界だ。俺がどうしてこの世界にいるのかも理解できる。でも何故、君がいるんだ? 君の事は全く知らない」

 彼女は目をつぶって、将吾の言葉を聞いている。

「ええ」

「なのにどうして、君に出会ったんだ。君はこの世界で出会った。だが、俺の記憶には一度もあった事がない! 教えてくれ!君は一体、何なんだ!?」

 


 暗雲が立ち込める。

 


 将吾にとって正気を取れるような状況ではない。寒気と吐き気と殺気が一気に押し寄せてきていた。

 美津音は空を見上げている。

「なんとか言ったらどうなんだ!!」

 自分の叫びが周りの道で響く中、彼の耳にある言葉が響いた。

「ここで何をしているんだ? 将吾」

 どこかで聞き覚えのある声であり、どこか懐かしく感じた声だ。

「あら、何してるのよ? 将吾」

「兄貴、何やってんだよ? ここで?」

 周りを見渡すと後ろ左右から一人ずつ歩いて来ているのを感じ取り声で、自分の家族の声だと感じ、呆然と立ち尽くしている。

うっすらと暗い為に、姿を確認しづらいが、人影が確認でき、ゆっくりと歩いて近づいているのが分かった。

 正面にいる美津音は依然として表情を変えず、立って将吾の顔を見つめている。

「親父! 母さん。それに俊哉まで……なんで?」

「何でって、お前を探していたんだ。さぁ、家に戻ろう」

「そうよ。お家に戻りましょう。アンタの為に、腕を振るって料理するわよー何がいい?」

「兄貴、探していたんだぜ。ゲームしようぜ! まだ勝負ついてないかんな!」

 将吾は状況を理解する事ができず、ただ立ち尽くして頭を抱えていた。

 人影が将吾の方へどんどん近づいていく。

「……来るな……」

 言葉は遮られ、人影はどんどん近づいていき、将吾を挟もうとする。

「来るな……来るな……」

 将吾はゆっくり歩き、人影に近づかれないように、距離をとっていく。

「どうしたんだ? 将吾? さぁ、早く帰ろう」

「そうよ! 早く帰りましょう」

「兄貴、どうしたんだよ~早く帰ろうぜ!」

「嫌だ……嫌だ!!」

 将吾は人影から逃げる様に走り出した。

「くそっ! くそおおおおおぉぉぉぉぉぉ!」

 思い切り、自分の力を使って必死に逃げる。後ろからは黒いモヤモヤな霧みたいなのがどんどん迫って来ているのが分かった。自分の足は既に感覚がないまま、アドレナリンが出ているおかげで疲れを感じさせない。

 将吾はどこへ目指すべきか分からないまま、走り、逃げる。この際、美津音の正体や家族なんてどうでもよかった。とにかく、自分の精一杯の力で走り回った。

 目の前の遮蔽物をフリーランニングの様に登ったり、飛んだり、綺麗に避けていく。しかし、闇のような霧はどんどん迫ってくる。

「来るな!!」

 将吾は叫びながら走っていく。しかし、霧はどんどん近づいてくる。

「うおおおおおおおお!!」

 最後、霧は将吾の体を覆い、包み込んでいった。


 捕まった。

 

 将吾は力尽き、走るのをやめて立ち止まった。霧に覆われ、何も見えなくなる。

 ただただ体が包まれていく事に将吾は何もできず、目をつぶった。


月一投稿企画 孤独都市です。


とんでもない展開となってきました。


次回は6月の6日~10日の間です。それまでお待ちくだされ~

ではでは。

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