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精霊使いと精霊と!  作者: ちょめのすけ
第一章 精霊の居る日々
9/9

トランプ・大富豪


遊部とは、月一のレクリエーションを企画し、実行する部活だった。

その為常日頃からレクリエーションの研究と評して色々な遊びを行っていた……。





霊暦1996年、1月14日(月) 早朝




「龍牙、朝ですよ。起きて下さい」


まるで母親に起こされるような、懐かしい感覚。

目を覚ますとそこにいるのは熾天使のウリエル。

俺の家は長期休暇や連休に紅炎寺三姉妹が帰ってくる時以外、基本俺一人だ。

火燐達の両親は精霊関係の仕事で忙しく、俺の両親は殆ど連絡が取れずどんな仕事をしているのかさえ分からないといった始末だ。

火燐達の両親の話によると、精霊使いではないが精霊関係の仕事をしているとの事だ。

しかし最近、ウリエルが家で一緒に過ごすようになった。

こんな美人さんと毎日同じ屋根の下で生活できるとは……我ながら幸せ者である。

時々精霊の世界に帰ることがあるが、少し間だけだし、その間に《はぐれ》に襲われるという事も無いので全く気にならない。

……まぁ、《はぐれ》には下校中によく襲われるんだが、未だに俺は魔法が使えずウリエルに助けてもらっている。

そろそろ雑魚の撃退ぐらいは出来るようになりたい。



話が逸れたな。

ウリエルさんよ、優しく起こしてくれるのはとてもありがたい、とてもありがたいのだが……。


窓から外を見ると空はまだ暗かった。


「何故俺は毎日5時起きの生活を送っているんだ……」


1月の5時ではまだ太陽すら顔を出していない。

そんな時間に起きて、俺の朝トレーニングは開始される。

魔法はそんな簡単に使えるようになるものではないのが分かってはいたが、流石に全く変化なしだと悲しくなってくる。

蜘蛛に襲われたときは普通に使えたというのに……何故使えなくなってしまったのか。

全く分からない。この理由が分からなければ多分俺は魔法を使う事が出来ないだろう。

使う事が出来るとしても、地道に魔力を高めていく必要があるから、大分時間が掛かりそうだ……。


でもトレーニングをやらなければこの先必要な力がつかない訳で、俺は毎日こうしてトレーニングを積む。

腕立て、腹筋、背筋、スクワット、ランニング……朝はこんな感じのトレーニングを7時までの2時間行われる。

体力や筋力をつけておいて損は無いので頑張っているが、流石に疲れる……。





「おーい、部長ー? 部長さんよー? ……起きろぉ! 龍牙!」


耳に響く大きな声が聞こえた瞬間、俺の背中が思いっきり叩かれる。


「いってーな! 何すんだよ」


俺は背中を擦りながら瑞樹に訴える。


「龍牙がボーっとしてるからだろ?」

「後、部活動時は部長と呼べと言っているだろう!?」

「部活動中に居眠りしてる奴を部長となんか呼びたくねぇな!」

「なんだとぉ!」


俺を挑発して逃げる瑞樹を席を立って追いかけようとするが、優斗が間に割って入った。


「はいはいその辺にして……瑞樹君も、部活動時に部長って呼ぶのは遊部の昔からの決まりなんだから文句言わない」

「へーい」


俺と瑞樹は渋々席に戻る。


「それで、今は部長の番ですが……何か出しますか?」


凪ちゃんが優しく聞いてくれる。

今は遊部の大富豪中、場にはハートとスペードで縛られた6。

今の俺の手札にはハートとスペードのKがある。

出せる事は出せるが……ここで親を取れなければ俺の残りの手札では難しい……。

ダイヤのQ。序列4位の強さでは親が取れなかった時のリスクが大きい。


「パスだ」


俺は小さく呟く。

その後、瑞樹がハートとスペードのAを出していたので出さなくて良かったと思う。

場は流れ行き、大富豪もいつ誰が上がるかわからない状況。

凪ちゃんがハートとスペードの6を出す、その次の一年男子の佐藤が同じハートとスペードの9で縛ってきた。

ここで縛りとは中々やる奴だ。

しかし、俺の手にはダイヤのQとさっき出さなかったKのセットがある。

佐藤の次である一年女子の中野はパスのようだ。


「部長。出しますか?」


佐藤が俺に聞いてくる。

抑えてはいるんだろうが少し声が震えている。

ポーカーフェイスも出来ないとはまだまだ一年だな。もう勝った気でいるのか。

確かにあいつの手札は残り一枚、俺は三枚。

凪ちゃんが三枚で中野が二枚。優斗が五枚、瑞樹が一枚。

……因みにもう一人の一年男子向井は家庭の用事、白ちゃんは生徒会で今日は休みだ。


この状況で二枚出しの縛りなんて出せる奴は滅多に居ないだろう。

K以外のセットもありえない、他の数字は殆ど片方かが出たし、ジョーカーも流れている。

そう、つまりここで俺がKのセットを出せば、俺の勝ちと言うわけだ!


「これで、俺の勝ちだ!!」


俺がそう宣言してKのセットを場に出す。

部長とは、部内最強のプレイヤーであるべし。

これが代々遊部部長から受け継ぐ言葉である。

それを俺は、全うする!


が、Kのセットを場に出した瞬間、嫌な予感がした。

何故だ。この縛りの中でK以上の数字は出せないはずだ。

ジョーカーも消えた。なら、何故こんな胸騒ぎがっ……。


……分かった。

優斗の終盤にしては多すぎる手札から嫌な予感がするんだ。

そして、案の定次に動いたのは優斗。

五枚の手札のうち、三枚を一気に場に出す。


「甘いよ、龍牙。砂嵐!」

「しまった! 砂嵐か!」


砂嵐……数ある大富豪のルールの中でも最強の札。

3枚の3を同時に出すことで成立する。が、狙うのはとても難しい。

場に出されているカードの強さ、枚数に関わらずいつ何時でも出すことが出来る。

そして一度出されれば強制的にその場を流してしまうという。

これを阻止する術は無く、出されれば終わりという無慈悲で残酷な札なのだ。

大富豪が持っているような札じゃあないな。


「じゃあ、僕が親だね。ダイヤの8」


そう宣言して8を出す。

8切り……ここにきてさらに流し札で攻めてくるか。

これは流石は大富豪だ。いいカードを持ってやがる。

優斗が笑顔で皆を見つめる。しかし他の誰もが黙る。

この勝負は決着がついた。この終盤で8を防ぐことが出来る奴なんて……。


「えっと……クラブとスペードの4」


そう呟いた少女がいた。


「「「!?」」」


全員がそちらを向くと、凪ちゃんが二枚の4を出していた。


4返し……8が出された時にその倍の数の4を出すことにより8切りを阻止し、親を得るというもの。

一枚の8を倒すにも二枚の4が必要で、狙うのは少々難しい札だ。

それを凪ちゃんが出した。

そして4返しを防ぐ手段は無い。

この勝負は凪ちゃんの勝ちで終わった。


「じゃあスペードのJで上がりますね」


凪ちゃんが最後のカードを出して上がる。

最後のカードはJ。及ぼす効果はJバック。

Jが出された場はその場が流れるまで革命状態になる。


シングルがこればJを出し、4という頂上に近い数字を出して親になり、最後に4を出すという流れも組める中々の手札だ。


「ふぅ……都落ちですか」


優斗が最後の札であるハートの7を捨てて脱力する。

大富豪は続けて大富豪になれなければ最下位に落ちるという過酷な運命を背負っているのだ。


さて、問題は今の場だ。

俺の手札はQ一枚。今の状況では出せない。


「くっ……パス」


一年男子も俺と同じく強手札を残していたようで出せなかった。


「クラブの6」


次の一年女子が出したのは6。

Jバック発動中に6が出されると革命状態が解除される6戻しというルールがある。


「よし! ダイヤのQだ!」


俺が場にダイヤのQを出す。

これで俺の上がり、俺は富豪の座にしがみついた。




部活動の時間が終わり、下校時刻の5時を告げるチャイムが鳴る。


「ふぅ、今日も白熱した勝負だったなー」


俺は椅子に凭れながらそう呟いた。


「天地先輩は何だかんだで運がいいんですよねー」

「そうですね。あの時も私が6を出さなかったら上がれてませんし」

「一年生諸君。運も実力の内なんだよ」


そう、俺はなんだかんだでゲーム運がいいのだ。


「まぁ、龍牙が強いのは格ゲーぐらいだな」

「殆どのゲームはお前よりはつえーよ瑞樹!」

「はぁ!? じゃあ《高速バトル》で勝負するか?」

「お前自分の得意分野持ってくるんじゃねーよ!」


《高速バトル》とは、HPゲージのようなもの(精神ゲージ)を採用した珍しいレースゲームである。

全国の高速道路を走り、同じ走り屋を見つけては勝負を仕掛ける1vs1のレースゲームで、相手に抜かれた状態だと精神ゲージが減っていく。

減る幅は相手と差をつけられるほど多くなり、壁にぶつかったりしても精神ゲージは減る。

各地の高速を走って全国の走り屋を倒していくストーリーモードや、それをオンラインにしたオンライン対戦モードがある。

全国の高速道路を再現したコースは評価が高く、ファンの間ではとても愛されているソフトだ。



「それよりも、企画の大富豪のルールは今日のでいいのかい?」


優斗が俺と瑞樹の間に割って入る。


「あ、あぁ。10捨てや7渡しとかがあるとゲームがすぐ終わっちまうし、あまり複雑な奴入れると分かりにくいからな」

「瑞樹にしてはまともな結論だな」

「うるせーよ。俺だって真面目にやるときはやるんだよ」

「それを一年の頃からやってくれてたら良かったんだけどねー」


確かに大富豪のローカルルールは多すぎてどれを採用するかとても難しい問題である。

10を出すと好きなカードを捨てられる10捨てや7を出すと次の人に好きなカードを送りつけられる7渡しはゲームを速く終わらせてしまう。

下手をすれば一人で終わってしまう場合だってある。それではつまらない。


「薫風。トランプと会場の手配はどうなってる?」

「トランプ、会場共に準備は完了してますよ。五月雨先輩」

「よし、それじゃあ1月の企画の準備はこれでほぼ終わりだな。あとはルールを印刷して配るだけか」

「それは僕がやっておくよ」

「おお、じゃあ五十嵐頼んだ」


話は纏まったようだな。


「それでは今日はこれにて解散」


俺が解散指令を出すと皆それぞれ自分の荷物を持って下校する。

まぁ、俺も下校するんだけど。




精霊が家に来て厳しい修行が新たなる日常に加わったけど、それでも俺の日常は余り変わらなかった。

友人や後輩達と授業を受け、部活で遊んで、月に一度企画をする。

そんな楽しくてしょうがない日常。

《はぐれ》に襲われる時もあるけど、それはウリエルがいるし、あまり危機感は無かった。

こんな日常ももうすぐ終わってしまうのだということを不意に思い出して少し寂しくなった。








世界の何処かの大樹の元にある豪華な宮殿。

その宮殿は輝く銀に覆われており、神々しいものがあった。

宮殿の広間には玉座があり、そこには老人が腰掛けている。

老人は飛んできたワタリガラスを腕に留まらせ、何やら頷いている。


「そうか。あやつは逃げたか。仕方がない、地上にいる奴らに知らせよ」


老人がそう告げるとワタリガラスは再び飛んで行った。

ワタリガラスが飛び立つと共にいくつかの影がその後をついて行った。


「ふむ。しかしどうしてあやつがあんなことを……やはり少し調べる必要があるようじゃのぉ……」


老人は、眼下に広がる沢山の兵士達の演習を眺めながら、一人でそう呟いた。





皆様こんにちは、ちょめのすけでございます。

まず、4月の投稿が一度しか行えず真に申し訳ない!

本当はもっと書きたかったんですけど……すいません。


それと重要なお知らせ。

一部キャラの呼称が変更されました。

今まで会長ちゃんとかいてあったのが全て白ちゃんとなりました。

やっぱ会長ちゃんって呼ぶのは少し不便かなって思ったので……。

過去のページも全て編集済みです。(問題の発生しないよう、一部前後の文が修正されています)

それと、一年生三人に名前がついています。

一年男子が佐藤と向井。一年女子が中野です。


今回は日常回でした。

ええ、本当に最後の少しでしか物語が動いてませんね。

宣言通り少し進みました。


今回出てきたキャラクターは皆様結構特定できたのではないのでしょうか?

あの老人も結構な重要キャラとなってくる……みたいです。


お話の大半を遊部の活動が占めてましたね。

ストーリーには直接関係ないですが、龍牙の日常の一部として描かせてもらいました。

大富豪のルールに関しては、すべて実在するルールです。

というかローカルルールは多すぎて把握しきれないです……。

縛り、8切り、Jバックぐらいは有名だと思いますが、皆様の周りではどうだったでしょう?

4返し、6戻し、砂嵐らへんはまさにローカルってレベルだと思います。


高速バトル……自分が嵌ったレースゲームをイメージした感じです。

首都高を走るあのゲームです。


此処で少し、遊部におけるキャラクター達の特性を書いていこうと思います。

龍牙は格闘ゲーム、シューティングゲームが得意です。

対人のシューティングゲームは余り数がないので余り目立たないだけで、高い実力を持っています。

格闘ゲームも部内では向かう所ほぼ敵なしといった状態です。

1vs1だと大抵勝ってしまうので、大抵は乱闘系の格闘ゲームを皆でやります。

それと、ゲーム運が強いです。

優斗はシュミレーションゲームが得意で、育成シュミレーションゲームの対人戦ではその実力を発揮します。

相手の次の手、その次の手を読んで冷静に動きます。

ただ、極端に確率の低い事を実現するなど、予想外の動きをされると動揺することがあります。

凪ちゃんは特に得意なジャンルはありませんが、意外性が高いです。

誰もが諦めるといった状況下での大逆転を起こしたりします。

得意、不得意が無いのも武器のひとつと言えるかもしれません。

瑞樹はレースゲームが得意です。

ただ、細かい操作が苦手で弾幕ゲーム等は滅法弱いです。

白ちゃんは殆どのゲームで強いです。

ただ、彼女も得意と言えるジャンルが無いため、特化して強い人には負けます。

こんな所でしょうか。

一年生についてはモブなので割愛。



さてさて、今回ご紹介のキャラクターは五月雨 瑞樹(さみだれ みずき)

髪と瞳の色はどちらも茶色で、髪は常時ボサボサで寝癖も多い。

校内でもトップクラスの運動神経を持ち、特に足が速い。

大抵のスポーツなら出来るので、入学当初は運動部からの勧誘が絶えなかった。

が、本人が全て断り、しかもまともに部活にも行かない為、段々と皆諦めて行った。

筋肉質な体つきで、身長も170cm程ある。

龍牙とは名前で呼び合う仲だが、それ以外の遊部の生徒は名前で呼ばれるが瑞樹は苗字で呼んでいる。



それでは次のお話!

次はちゃんと話が進みますよ!

こっからはストーリー進行が早くなっていくと思います。

ただ、日常も入ってきます。

GW中に可能な限り進めたいですね。

最低でも1回は更新したいです。


それと、これからは活動報告を書いていきたいと思います。

何故なら逆お気に入りユーザーを調べたら何人かお気に入りユーザーに登録してくださっている方がいらっしゃったので。

それでは皆様、また次回の更新でお会いしましょう。



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