舞い降りた炎の熾天使
蜘蛛の精霊に襲われた龍牙。
無事逃げ切ったかと思ったが、結局蜘蛛の精霊に捕まってしまい大ピンチ!
突然湧き出た力を使い最強の炎を想像すると、目の前に天使が舞い降りた!
火柱が消えていく。
「…………?」
舞い降りた天使に暫く見惚れている俺だが、ふと疑問に思った。
何故天使が?
「何を首を傾げているのです? 貴方が私を呼んだのでしょう?」
天使が状況を掴めていない俺に向かって言う。
俺が呼んだ? 天使を?
いや、炎を想像したんだけど……。
「貴方は私を召喚しようとしたのでしょう? まぁ実際は魔力不足で私は自力で此処へ降りてきたので召喚にはなっていませんが……」
召喚……?
どこかで聞いたフレーズだな……
あ! そうだ精霊召喚だ。
今朝焔姉に聞いたばかりじゃないか。
てことは……。
「俺、精霊を召喚しちまったのか!?」
「なっ!?」
俺が驚いて声を上げると天使も驚いた様子だった。
「無自覚による精霊召喚……しかも私を……? これは少し処理に困りますね……」
天使が険しい表情をして何か考え出した!
俺なんか不味いことでもしたんだろうか……。
「きさまらぁ! 俺を忘れるなぁ!!」
そんな事を思っていると怒りに満ちた声が響き、天使に大きな脚が振り下ろされる。
が、天使はそれを軽く避け、俺に背を向ける形でその脚の主と俺の間に立つ。
「まだ生きていたのですか」
「消えてたまるか!」
そこに立っていたのは真っ黒焦げになったさっきの蜘蛛の精霊。
倒れていたら死んでるんじゃないかと勘違いする程にぼろぼろだった。
「仕方がありませんね。炭になるまで燃やしましょうか」
さらっと怖いことをいう天使。
その天使に向かって飛び掛る蜘蛛の精霊。
5mを越えるその巨体が一瞬で目の前に迫るが天使は全く動じない。
が、天使を目の前にして蜘蛛の精霊が突然地に足を着いた。
ジャンプの飛距離が足りなかったとか、そんな感じの着地の仕方。
しかし、蜘蛛の精霊はそれきり動かなかった。
「さて、貴方の事ですが――」
天使が振り返って話し始める。
いやいやいやいや、蜘蛛の精霊はどーなった!
「その様子だと、あの蜘蛛が気になるようですね。しかし安心してください。あれはもう動きませんから」
そんな事言われても、あなたが何かしたようには見えなかったぞ俺は!
俺が確認を取るために木の枝を持って蜘蛛の精霊を突いてみる。
と、ボロッという音をたてて突いた部分が崩れた。
よく見ると体の内側まで真っ黒――蜘蛛の精霊は既に炭と化していたのだ。
「っ!?」
驚きを隠せない。
馬鹿な俺でも炭が一瞬で出来上がることの異常さは分かる。
一体何をしたんだこの天使は!?
「ご理解して頂けましたか? それはもう動きません」
「あ、あぁ。分かった」
蜘蛛の精霊という恐怖は去ったが……また新たな恐怖が生まれたかも。
「安心してください。私は貴方に危害を加えるつもりはありませんよ」
また心の中を読まれたのか? 俺は。
「それで、貴方の事なのですが……貴方は精霊学をお習いで?」
「いいや、全く」
「私を呼ぶときに、精霊を呼ぼうとしましたか?」
「俺はあの蜘蛛を倒すために最強の炎を想像しただけだよ」
「そうですか……では貴方は少々厄介な存在になりますね」
「厄介……?」
やっぱ俺なんか不味い事でもしちゃったんじゃないだろうか。
凄く不安だ。
「そうです。通常、精霊召喚とは特定の儀式を執り行って行われます」
「お、それは今朝聞いたぞ」
「今朝、ですか。本当に精霊について殆ど知らないようですね」
「精霊学は高等部からだものなぁ……」
魔力の高い人は例外として中等部の頃に習うが、俺そうではなかった。
火燐達三姉妹は全員魔力が高いので特別な学校に通ってるんだ。
「しかし貴方は今、精霊召喚として私を呼びました。まぁ魔力不足で失敗だったのですが」
「は、はぁ……つまりサービスで来てくれたと」
「まぁ、そういうことです。しかし、儀式を行わずに精霊を呼ぶ簡易召喚には、莫大な魔力が必要です」
「莫大な魔力……?」
俺にそんな力が……?
「そうです、私を呼ぶには足りませんでしたが、一般の精霊ならあの魔力で十分でしょう」
「俺、そんなに魔力を持ってたのか?」
「そう、それが厄介なのです」
「な、なんで?」
「先程のように高い魔力の持ち主はたちの悪い精霊に襲われる事がよくあります。その時の防衛手段なのですが……」
あぁ、だから蜘蛛の奴は美味しそうとか言ってやがったのか。
「貴方にはないのです。通常、高い魔力の持ち主は精霊学が習わされます、それを使って撃退するのです」
「で、俺は習っていないと。まぁ小さい頃に判定したときは平均より魔力が低いと判断されたからなぁ」
なんで今になって魔力が高くなったんだ?
それで、これからどうすれば……。
「なので、呼び出された私が、責任を持って暫くの間貴方をお守りいたします」
天使がそう告げてきた。
こんな強くて綺麗な天使が俺を守ってくれる……だと。
なんて最高なんだ!
火燐や焔姉、将来有望な烈火。
凪ちゃんに白ちゃんと俺の周りの女性は今でも最高なのにそれにこの天使様が追加されるなんて!
俺はなんて幸せ者なんだろうか!
鎧の上からでも分かる、小さくも無く、かといって大きすぎでもない胸を是非拝ましてもらいたいものだ!
「……邪念が見えますね」
天使様の目が鋭くなる。
嘘です調子乗りすぎました本当にすいませんでした勘弁してください。
「それで、具体的な話ですが、貴方は正式な契約主では無い為24時間ずーと現界することは不可能です」
現界というのは精霊が姿を持って世界に現れることを言うらしい。
どっかで聞いたことがある。
俺達は人間界の住人だからここでいう世界は人間界のことだ。
「それもそうだよね。魔力の供給が出来ないわけだし……」
「なので、これを預けます」
天使が少し古そうなランプを手渡してきた。
自ら火を灯すタイプの奴だ。
「私が不在のときに用がありましたら、このランプに火を灯してください。そうすれば私はすぐ馳せ参じましょう」
このランプにはそんな特別な仕掛けがあるのか……?
そんなようには見えないけど魔法的な何かなのかな?
「そのランプには特別なものは備わっていませんよ」
天使が興味深そうにランプを見ていた俺に言った。
「じゃあ、なんですぐ分かるんだ?」
「私がこの地上における全ての火を管理しているからです」
……え? 今なんて?
「そういえば私とした事が名乗り遅れてしまいました」
天使が俺に向き直る。
「私は天界にて総界ほぼ全ての火の管理をしております熾天使のウリエルと申します」
天使がそう名乗った。
って熾天使のウリエル!?
精霊についての知識がない俺にだって分かるほどの大物。
天使の九つの階級の最上階級の熾天使であり、《神の御前に立つ四人の天使》の一角。
そんな精霊が俺の目の前にいて、尚且つ暫く俺の傍にいてくれると……?
嬉しいとか心強いとかを通り越して恐れ多いぐらいだよ……。
今までのご無礼をどうかお許しください!
胸のこととか考えちゃって本当に申し訳ありません!
でもしょうがないじゃない! 男なんだもの!
と、心の中で懺悔のようなものをしていると誰かが近づいてきた。
「この圧倒的な霊力……なんでウリエル様がこんな所に……」
振り返ると、ウリエル様を見て驚きを隠せない様子の火燐が立っていた。
皆様こんにちは!
ちょめのすけです!
まず、更新が遅くなってしまって申し訳ありませんでした!
でも、一応ギリギリセーフだよね!
え? ギリギリアウト? 気にしない気にしない!
いや、急用が入って書けなかったんですよ……。
今回は文字数も少ないですね、でもストーリーの進行的には予定に進んでおります。
さてさて、熾天使のウリエル様が御降臨しました。
《神の御前に立つ四人の天使》、いわゆる四大天使の一角です。
そんな大物がいきなり登場です。
天使については七大天使というのもありますが、七大天使は不確定なので、殆ど確定している四大天使を使います。
といっても天使達はまだまだ出てくると思いますので天使好きの方はごゆっくりお待ちください!
ウリエル様は地上と地獄における火を管理されておりますが、この作品の中では総界の火の殆どを管理されていることになっております。
殆ど、ということなので勿論例外もあります。
それでは次回のお話ですが、次回の更新は不定期です。
明日かもしれないし、来週かもしれません。
分かり次第此処に追記させていただきます。
それでは皆様また次回の更新でお会いしましょう!
※次回は《舞い降りた日の終わり》です。