表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊使いと精霊と!  作者: ちょめのすけ
序章 天使が舞い降りた日
3/9

蜘蛛の精霊・襲来


火燐と合流を果たすもすぐにまた逸れてしまう龍牙。

謎の精霊に絡まれて少し怖くなった龍牙は再び火燐と合流しようとする。






「えーっと、火燐の奴どこまでいった?」


とりあえず火燐が向かった方向へと歩を進める。

結構時間経っちゃったからそう見つかけられないか。

いや、さっきもすぐ見つかったんだし大丈夫だろう。

そんなのんきな考えで歩いていると、ベチャという嫌な音と共に、背中に粘着力のある何かがくっつく感触がした。


「ん?」


気になって振り返ってみると、俺の背中に綱引きの縄程度の太さの白いロープ状のものが付着していた。


「うわ……なんだこれ」


触ってみる。

とても粘々していて引っ張っても千切れそうにはない。

それどころか、千切ろうとした手にまでくっついてしまった。

後ろを向いた状態のまま、両手が塞がれる。

状況はよく分からんがこれってけっこうまずいんじゃね?

そんな事を思っていた瞬間、白いロープ状のものに体全体が引っ張られた。


「うわぁ!」


足だけバタつかせた状態で俺は宙へ浮く感覚を覚える。

俺は何者かに捕まったって考えるのが一番妥当か?

としたらこのまま運ばれ続けるのはかなり不味いよな。

ただし、両手は使えないし足だって地面に届かない。

なら、魔法でどうにかするしかない。


魔法……焔姉が言っていたように、想像することによって生まれた魔力を使い、普通ではありえない超常現象染みた事を行うこと。

詳しく言えば想像することによって生まれた魔力で環境精霊の力を借りてどうたらこうたらってらしいが俺にはよく分からん。

使い方もよく分からないがアバウトに言えばあるものを強く思い浮かべればそのあるものが出現する。そんな感じだ。

今の俺の場合、このロープ状のものから開放されるには刃物で切るか焼き切るしか思いつかない。

手が使えない以上刃物で切るのは無理だろう。なら燃やすしかない。

つまり、俺が思い浮かべるのは炎。

炎を強く思い浮かべるんだ俺!


全力を注いで炎を思い浮かべた末、炎が生まれた。

が、それはマッチで点けた炎よりも乏しく頼りないものだった。

その小さな炎がロープ状のものを焼き切ろうと奮闘するが、引っ張られている時の風によって、遂には消えてしまった。


「そ、そんな……」


魔法という、普段俺が触れないものにまで頼った結果、無理だった。

これはもうどうしようもないか?

そう考えていると俺は地面に打ち付けられた。

俺を捕まえた奴の元までたどり着いたのか。

俺は顔を上げて相手を確認する。

すると、そこにいたのは5m程ありそうな巨大な蜘蛛だった。

体の色は黒色で、全身を茶色の毛が覆っている。

その茶色に覆われた顔らしき所にテニスボール程の目が六つもある。

尻の部分は体よりも一回り大きく、下を向いていて先端にこの白いロープ状のものが繋がっている。

これは蜘蛛の糸だったのか。

脚は一本一本が人の足よりも太くガッチリとしたものだった。


「う、嘘……だろ?」


なんなんだこの生物は。

此処まで巨大な蜘蛛って……見たことがねぇぞ。

世界最大の蜘蛛って20cm程じゃなかったか?

ここまで大きさが違うと別の生物に見えてくるな……こいつ本当に蜘蛛なのか?

でもどうみても蜘蛛だよなぁ……。


「ぐっへっへ……美味しそうな人間を捕まえたぜぇ……」


喋った。

この蜘蛛喋りやがったよ。

このままだと食われちまいそうだな俺……なんとか時間を稼がなければ。


「なぁ……お前何者だ?」


とりあえずこの巨大な蜘蛛に話しかけてみる。

こうやって時間を稼いでいる間に解決の糸口を見つけられればいいが……。


「なんだ? お前は精励も知らないのか?」


せ、精霊か……。

つーことは蜘蛛の精霊って奴かな?

だが、精霊は人間に魔力を貰って生きるんだろう?

何故人間を食べようとするんだ?


「精霊が人間を食うのか?」


俺がそう聞くと蜘蛛は此方を笑うかのように言った。


「なんだ。お前何も知らないんだな。精霊の中にゃこうやって魔力の根源となる人間を喰らう奴もいるのさ。俺のようにな」


はい、俺はどうやら食べられることが確定したようです。

って冗談じゃねぇ! 死ぬならせめて美少女でも庇って死にたいね!


「喰らう時に大体の人間は恐怖する。その恐怖という想像も魔力となり、俺の力になる。世界の役に立つよりこちらの方が効率がいいのさ……」


そうか。精霊も大変なんだな。

ただし俺は喰われんぞ、喰われてなるものか!

喰われるときに恐怖する?

なら俺は恐怖なんかしたやらねぇさ!


「ほぅ、恐怖を抑えるか……面白い、それが何時まで続くかな……?」


蜘蛛の奴が俺を糸で引きずりだした。

ついに喰われる時が来たか!

だが俺は諦めん! さっき糸に火を点けた時は消えちまったが、あれを蜘蛛本体に点けてやれば怯むはずだ!

その隙になんとか脱してやる!


俺は再度炎をイメージする。

強く、強くイメージする。

俺の頭の中の炎が大きく燃え上がった時、それは現実世界のも反映された。


ボッ! っという音と共に蜘蛛の頭に炎が点く。

今度は先程よりも二周りぐらい大きな炎だ。


「ぐおっ!?」


突然頭に火が点いたことで動揺する蜘蛛。

俺は炎のイメージを保ったままそれを蜘蛛の糸へと向ける。

すると今度も炎が点き蜘蛛の糸を燃やす。

さっきとは違い炎はどんどん大きくなって蜘蛛の糸をどんどん燃やしていった。

ついには炎が蜘蛛の糸を焼き切った。

背中の糸は切れ、両手首にだけまだ蜘蛛の糸が纏わりついているという状態となった俺は、とりあえずまだ頭の火をどうこうしている蜘蛛から離れようと走り出す。


「くそぉ、人間めぇ!」


蜘蛛が恨めしそうに声を上げるが振り返らず全力で走る。

ここで振り返ったら駄目な気がして、馬鹿みたいに走り続けた。




「はぁ、はぁ、はぁ……ここまでこれば」


膝に手をつき肩で呼吸をする。

ここまで全力で走ってきた。

引っ張られたこともありもうここが何処だか分からないといった状態だ。

だが、これだけ走ればあの蜘蛛野郎もなかなか見つけられないだろう。


今のうちになんとしても火燐と合流し帰るんだ。

俺は呼吸を整えるとすぐに歩き出した。

もう手掛かりも何もないが、立ち止まっている訳にはいかない。


そうして暫く歩いた後、またあの感覚が訪れた。

足が動かない。身動きが取れない。


「お困りのようね?」


またあの声だ。

今度も後ろから聞こえてきた。

人の後ろに立つのが好きなのか?

それともただ姿を見られたくないだけ?

そんな事を考えるが、考えても多分無駄だろうと思ってこう返す。


「今この瞬間に身動きが取れなくなって困ってるよ」

「そう、それはごめんなさいね」


全く悪びれた様子の無い謝罪。


「そんな事より、あの幼馴染ちゃんと合流したいんでしょ?」


火燐の事を知っている!?

こいつ何時から俺のこと見てたんだ?

もしかしたらガチのストーカーか?


「失礼ね。ストーカーなんかじゃないし、私は私があなたを面白いと思った時から時々観察してるわ」


時々……?

ってことは少なくとも今朝ここに来てからじゃないって事か!

これからは日々後ろに警戒しよう……警戒したからってどうにかなる事じゃないけど。


「心配しなくてもそんなに頻繁に現れないわよ。私がちょっかいを出したいと思ったときだけ」


ちょっかいって……。

完全に遊んでるよな。これが上級の精霊の余裕って奴か?

さっきの蜘蛛みたいに食事に困ることも無く、ただ毎日遊んで暮らす……みたいな?


「誰が日々遊んでるですって?」


いえ、なんでもないです。


「あぁ、それはそうと。あの幼馴染の居場所教えてあげるから感謝しなさいよ」


え! マジか!

それはありがたい。

でもなんでだ? つーかそんな簡単に信用していいのか?


「信じる信じないは勝手だけど。あの娘は今の貴方の向きから左斜め前ぐらいに行ったところよ」


これはこれは親切に。

どうせ手掛かりも何もないんだから信じて進んでみるかな。


「それと、さっきの蜘蛛があと20秒ぐらいでここに到着するわ。迎撃準備しておいたほうがいいわよ」


えぇ! あの蜘蛛野郎もうそんなに迫ってるのか!

それはピンチだ! 忠告テンク!


「あなたは私の娯楽の一つなんだから、あんな精霊なんかに喰われちゃ駄目よ。それじゃ」


その瞬間、体の自由が戻る。

すぐに俺は近くに落ちていた木刀サイズの木の枝を握り締めて蜘蛛の迎撃準備を取る。

多分今から逃げても間に合わないからな。


俺が構えを取るとすぐに何かが近づく音がした。

ガサガサと木々を薙ぎ倒しながら、大きな足音を立てながら近づいてくる。

そして、ついにその音の主が姿を現す。


「見つけたぞぉ! 人間!」


あの巨大な蜘蛛が俺目掛けて突進してくる。

俺は構えていた木の枝を蜘蛛の目に向かって突き出す。


「ハァ!」


グシャっという何かがつぶれる音がする。


「い゛ぎゃあああああああ!!!!」


六つある内の一つの目を失った蜘蛛は狂ったように暴れまわる。

その太く大きい八本の脚を振り回す。

俺はたまらず蜘蛛から距離をとる。


「にんげんめぇぇぇ!! もうゆるさんぞおおおお!!!」


怒りに満ちた声を上げ、蜘蛛が糸を発射してきた。

俺はそれを避けようとしたが、糸の速度が思ったより速く簡単に捕らえられてしまった。


「捕まえたぞぉ、お前はもうすぐに喰ってやる!」


糸を戻し段々と俺を引き寄せる蜘蛛。

俺は先ほどと同じように炎を発生させようとする……が炎は点かなかった。


「無駄だ、無駄。炎対策はバッチリとしてきたからな」


どうやったかは知らないが、どうやら奴はさっきの反省を活かし燃えにくいようにしてきたようだ。

それで炎が点かないのか。


「だからって俺は諦めねぇぞ!」


段々を蜘蛛に近づいていく。

やばい、蜘蛛の口が近い。

相当グロイぞ、これは……。

よし、こんな時は美しいものを思い浮かべるんだ!

美しいものっていったらやっぱり昼頃に見た火燐のあの姿が思い浮かんでしまう!

いや、さすがにちょっと自分でもどうかと思うけど……。

あ、やべぇ鼻血出てきた。


と、その瞬間だった。


ボワッっという何かが膨らむような音がして、力が湧いてきた。

なんだろう、今なら特大の炎が出せるような感じがする!

俺は全神経を集中させてイメージを膨らませる。

想像するのは炎。

それもただの炎じゃない、燃やせないものなど何もないほどの最強の炎だ!

それを強く思い浮かべて目を見開く!



目の前に広がっていたのは炎だった。

俺と蜘蛛を包むほど大きな火柱だ。

上は何処まで続いているのか分からないぐらいに伸びている。

それと、炎に包まれているのに不思議と熱くなかった。

だが、蜘蛛と蜘蛛の糸は燃えているのが分かる。

蜘蛛の糸は焼け爛れて消えていっているし、蜘蛛は全身を炎に焼かれている為か暴れ狂っている。

熱を感じていないのは俺だけ……?

不思議に思っていると、火柱の上の方から声が聞こえた。

その声の主は下へと降りてくる。


「迷える子羊の呼ぶ声が聞こえたから魔力不足にも目を瞑ってきてみれば……人を襲う精霊がいるではありませんか。これは粛清しなければいけませんね」



白く透き通った肌と綺麗に整った顔立ち。

茶色い髪に同じく茶色の瞳。髪型はショートヘアで頭の上には赤いリング。

金の鎧と赤い布で構成された服装をしており、その位の高さが伺える。

背中には赤い翼を二枚生やしており、全身には炎を纏わせている。

その美しくも凛とした表情はまさに天使。


そう、天使が俺の目の前に舞い降りたのだ。





皆様こんにちは。

ちょめのすけです。


なんとか今週に更新することが出来ました。

物語はまだまだ始まったばかりで読者の皆様もまだ量が少なくて面白いかどうか分からないという方も多いと思います。

なのでこの最初の方だけでも頑張って早く更新していきたいものです。


さて、今回ですが新しい精霊が出てきましたね。

まず蜘蛛の精霊。

物凄く小物臭が漂っておりますが、小物です。

ちなみに世界最大の蜘蛛というのはルブロンオオツチグモという南米の熱帯雨林帯に生息する蜘蛛らしいです。

体長は足を広げると幅20cmを越えるらしいです。

今回の精霊はこれを見て考えました。が、全然似てないです。

まず5mなんてありえないですしね。

この精霊については出番はこれで終わりそうですが、後々に蜘蛛に関係する精霊は出てくると思います。


そして最後に出てきた天使様。

天使について知識のある方なら大体の予想はついてるんじゃないかと思います。

姿は赤が多いですね。

本当は髪と瞳も赤にしたかったのですが、それをするとキャラクターが赤で埋め尽くされてしまうためやむなく茶色になりました。

いやー、好きなんですよね。赤色。

今この段階でも赤色のキャラクターが多いですが、後々からちゃんと赤以外のキャラクターも出てくるんで……勘弁してください。

これ以上は長くなってしまのでここらで切り上げたいと思います。


さて、次回のお話ですが、できれば日曜日……2月10日に上げたいと思っています。

サブタイトルは『舞い降りた炎の熾天使』です。

それでは皆様、次回の更新でまたお会いしましょう!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ