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推しに夢中になってはいけない

掲載日:2026/02/14

 この時期は街がキラキラ輝く。冬だ。クリスマスも終わりお正月も終わった。そして、来るのがバレンタインデーだ。


「この空気もあと何年吸えるか……」


 ボクに彼女はいない。好きな人はいる。これが恋愛なのかはわからない。ただ、その人は友だちではない。


 ――推し


 そう、配信者だ。



「よし」


 彼女を知れば知るほど愛おしくなる。たしかに、今までいろんな配信者を見てきた。推すということはあってもグッズが欲しい、推しのアクスタとご飯を撮ろうとか風景を撮ろうと思わなかった。彼女は毎度ボクの推し活写真に反応してくれる。たまに引用をしたりスクショして反応がくれる。メンションすれば会話が続く。


 ――好きだ


 彼女が配信始めた。


 『こん夏ー! って今は冬なのにねー、アハハー』


 今日も配信者『(ナツ)』の楽しそうな声が聞こえる。ボクは思う。ボクだってバカじゃない。『夏』が本名じゃないことくらい。


 リアルイベントをしてくれれば会えるし、リスナーと話す時間も作ってくれるはすだ。


 『今日はー、えへへー、重大発表があるんだー。今度!! 2月14日に富山県でリア凸イベントをするよー! 詳しくはSNSを見てねー! おつ夏ー!! あと、このリア凸イベントまで配信はないからアーカイブみてねてねー! うちをわすれないでねー」


 この言葉で今日の配信は終わってしまった。彼女はいつもわずか30分で配信を終わる。


 ボクはスマホのカレンダーに2月14日『夏リア凸』と書いた。しばらくしたら彼女のテキスト主体のSNSのZが動いた。


 ――夏、この冬初リア凸企画。サービス満載


 その後も言葉は続いていた。申込方法の中に『夏とDMをしたことがある』とあった。


「ダメだ、直接的には連絡取ったことないんだった……」


 リア凸申し込めないなんて……。


 ツーと涙がこぼれた。


 ピロンピロン


 聞いたことがない通知音がする。Zの比較的新しい機能で通話というものがある。これはZ社に買収されてからの機能だ。こんな機能いらないと言われていた。


 スマホの画面には『Z 夏:IDxxx』とある。


 夏さんから通話……?


「はい」

『えへへ、リスナーに逆凸企画の通話だよ?』


 冷静に返したい。でも、返せない。言葉が支離滅裂だ。


床太郎(ユカタロウ)さんはさ……』


 ――リア凸参加してくれますか?


「あたりまえです」


 通話を切ったあとに、ボクは思った。


 彼女は最高にかわいい。ならばボクが守らないといけない。きっと、ボクにボディーガードを頼みたくて通話をかけてきたんだ。彼女が逆凸企画をしてくるわけがない。


 そして、ボクは彼女のリア凸場所や様々なルールを読み、入念に下調べをした。


 他の男が寄り付かないように学生の女性リスナーだけがリア凸に来るよう様々なことをした。



 富山県に向かうために新幹線の予約をした。前乗りをしないと富山県でのリア凸を最大限楽しめない。


「同じ日本なのにな……」


 時は来た。2月14日午前10時。


 彼女からはDMで雰囲気写真を送られてきている。


 配信者『夏』はそこにいた。この地域密着感丸出しの公園にいる。


 彼女らしくニコニコ笑顔をふりまいている。これだけでボクの心臓も脳も腎臓も肝臓も血液、ボクのすべてが『好き』と叫んでいる。これを恋と言わずして何と言う。


「わー、夏民のみんな、ありがとうー」


 夏民は彼女のリスナー名だ。そこには中高生くらいの女の子が数人とボクだけだ。


「あれ……? 学生組はなにかあったら保障できないから親御さんの委任状持ってきてくれた?」


 ここまでは計算通り、彼女は頭がゆるい売りにしているがかなり有名大学の法学部出身だ。そういう万が一のことは想定していてるだろう。そのため彼女のなりすまし垢を作って裏工作をしておいた。


 『でも。夏さん、あたし、これを楽しみに期末テスト頑張って学年上位とったんです!』『頑張って美容室行ってきた』『私は……先月から毎日お風呂入ってきた』


 学生組は頑張る。夏さんは『わかったよ、みんな偉いよ』と学生組を子犬のように撫で回して3人の髪型をくちゃくちゃにして帰らせていった。


 きっと、彼女は『ふたりきりになったね』と言うだろう。


「あーだりぃ、床太郎の相手とか……」


「う……そ……だよね?」

「あ? お前がうちのリスナーに色々してこのリア凸ぐちゃぐちゃにしたのは知ってんだよ、ふざけんなよ」


 なんだか、公園についてから彼女の声が機会を通して聞こえる。


「知らない、ボクの好きな夏じゃない……」


「えぇ。私は今『夏』ではないわ。あの学生さんたちを帰した時点で『夏』としての今回の役目は終わったわ」

「何を言ってるの? 君はこれからボクの『夏』になるんだよ?」


 彼女はコートのポケットから何かを取り出そうとしている。きっとボクへのプレゼントだ。


「プレゼントがあるんだ!」

「えぇ、私もあるわ、あなたにプレゼント」


 彼女は先ほどコートから取り出したメモをボクに鬼の形相をして見せつけた。


 そこには日付とボクが彼女のリスナーにしてきた嫌がらせをすべて書かれていた。


「あなたは逃げられないわ、ここ以外にも私の別垢にセクハラ発言もDMでしてきたわ。もちろん、それ以上のことも知ってるわ」

「たしかに……自撮りを女の子に送る趣味はあるけど、それがなんだっていうんだい? 証拠でもあるのかい?」


 先ほどの学生組が警察のコスプレをして手錠を持って走ってくる。


 「私人逮捕……か」

 

 なぜかボクの株があがって彼女はボクに謝罪して『床太郎さん、結婚して』と言ってくるんだ。


 学生組は彼女ではなくボクに向かってくる。


「警察のコスプレは犯罪だぞ、学生!!」

「逃げないことは褒めるわ。逮捕されるのはあなたよ、床太郎、いえ」


 10時14分確保!!


 ボクは学生組によって地面に体を押し付けられた。


「どうしてだ!! 夏!! ボクと結婚したくてこのリア凸イベントを企画したんじゃないのか!?」

「警察を舐めないでちょうだい、あなた、極悪の指名手配犯『床田(トコタ) 夏太郎(カタロウ)』を逮捕するために配信者『夏』さんから情報をもらってこのリア凸企画をしていた男の警察官なんだからな!」


 ボクには意味がわからない。確かに指名手配はされている。北九州市の一集落の住人を惨殺をしたからだ。そして、あの集落にあった金目のものは全て奪ってきた。そのため財産は腐るほどある。そして、さっき、こいつはなんて言った……?


 ――男の警察官なんだからな


「夏はバ美肉配信者だった……?」

「お前が真実を知るのは法廷だ。チェックアウト」


「あのー巡査長……。それ、チェックメイトです」


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