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『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


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第8話 「幸せの前ぶれ」

 広場には色とりどりの飾りが揺れていた。


 木のテーブルには紙のコップ、手作りのお菓子、そして子どもたちと遊ぶゲーム道具が並んでいる。


 「すごい……みんな、こんなに協力してくれて……」


 胸がいっぱいになる。

 村の人たちが笑っているのを見るだけで、こんなにも嬉しいなんて。


 子どもたちは元気いっぱい。

 アーシャとルッカは「みるく先生!」と呼んで手を引っ張る。


 “せ、先生……”

 その言葉に心臓が跳ねたけど、悪くなかった。


 私は緊張しながらも、最初のゲーム「宝さがし」が始まるのを見守った。


 ……その時。


 「おい、宝が全部なくなってるぞ!」


 大人の叫び声が響いた。


 「えっ……!」


 宝の袋を置いていたはずの場所は、空っぽだった。


 「どういうことだ!?」

 「子どもたちが楽しみにしてたのに……!」


 ざわつきが走る。

 子どもたちの顔が不安で曇っていく。


 胸がぎゅっと縮んだ。


 ……子どもたちを喜ばせたかっただけなのに。

 ……うまくいかないの?私のせい?


 膝が震え、喉が乾く。

 言葉が出ない。


 そのとき、私の足元でふわっと風が起きた。


 ラテが動いた。


 けれど、私は気づかない。

 ただ、胸の前で両手を固く握りしめて立ちつくすしかできなかった。


 


 ……《ラテの無双タイム》


 ぼくはすぐににおいでわかった。


 宝を隠したのは、悪意じゃない。

 悪意なんてひとかけらもなかった。


 「上級生だけで全部見つけたい!」

 「小さい子には内緒でやろう!」


 ……つまり、張り切りすぎただけ。


 ぼくはかけだし、宝を隠した少年たちの前に立った。

 姿は見えないけど、風と気配だけで十分。


 少年たちはびくっとして振り返ると、なぜか胸の中がふわっとした。


 「……みんなで遊んだほうが楽しいよな」

 「うん、ちっちゃい子たち泣きそうだったし、返そっか」


 ぼくは少年たちが宝袋を抱えて走り出すのを見届け……。

 広場へと全力疾走。


 少年たちが戻るのと同時に、ぼくはぴょんと戻って

 みるくの足元で座り込んだ。


 「戻ってきたぞー!」

 宝袋を掲げた少年たちに、みんなの視線が集まった。


 「ごめん!みんなでやりたくて、隠しちゃってた!」

 「小さい子たちも一緒にやろう!」


 空気が一気に明るくなる。


 アーシャが私の手をぎゅっと握った。


 「みるく先生、宝さがしはじめよう!」


 喉が熱くなった。

 涙がこぼれそうになるのを笑顔でごまかした。


 「うん、はじめよう!」


 ゲームは大成功。

 子どもたちの笑い声で広場が満たされた。


 私は人の輪の真ん中で、誰かを喜ばせている。

 昔の私じゃ考えられないくらいの場所に立っていた。


 足元でラテがしっぽを振る。


 「ラテ、ありがとう」


 私がそうつぶやいた瞬間、

 ラテは小さく「きゅる」と鳴いて、膝に身体をもたれかけた。


 ……その鳴き声だけで、

 胸の奥がじんわりと、幸せで満たされた。

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