第6話 「必要としてくれる声」
子どもたちと出会ってから数日。
私は村で少しずつ顔見知りが増えてきた。
人付き合いが得意なわけではない。
でも、子どもたちが気さくに声をかけてくれるから、自然と輪の中に入れた。
その日も、外を歩いていたら……
「みるくーっ!」
小さな声が勢いよく駆け寄ってきた。
女の子のアーシャと、男の子のルッカ。
あの日喧嘩をしていた二人だ。
アーシャは私の手に自分の手を重ねてくる。
「みるく、おはなし、して!」
「追いかけっこもしよう!」
それだけで胸がぎゅっと温かくなる。
誰かに求められるって、こんなに嬉しいんだ……。
私は穏やかに笑って、うなずいた。
「じゃあ今日は、お散歩とお話どっちからにする?」
「お話!」
「散歩!」
見事にわかれた。
困って笑ってしまうと、アーシャもルッカも照れくさそうに笑った。
「……じゃあ、歩きながらお話しようか」
二人はぱっと目を輝かせた。
川沿いの道をゆっくり歩きながら、私は地球の童話をできるだけぼかして話した。
オオカミはライオンに、赤ずきんは“赤いケープの女の子”に変えたり。
でも、そんな細かいことは子どもたちには関係なかった。
「きゃー! こわいけどたのしい!」
「つづき! つづき!」
夢中で聞いてくれる姿が愛おしくて、胸がじんと熱くなる。
ふと横を見ると……。
ラテが得意げに尻尾を振っていた。
たぶん「みるくはすごいんだよ!」って言いたい顔。
それだけで、泣きそうになるくらい嬉しかった。
その帰り道。
アーシャがふっと足を止めた。
「みるく……ずっとここにいてくれる?」
突然の質問に、心臓がとくんと鳴った。
「えっと……できるなら、いたいな。
みんながいてくれると、すごく……楽しいから」
言葉にして初めて気付いた。
私は……ひとりじゃない時間を求めていたんだ。
アーシャは嬉しそうに飛び跳ねた。
ルッカなんて、小さくガッツポーズをしている。
その姿を見ると、胸の奥がふわっと温かくなる。
……ここにいてもいいのかな。
……誰かと笑っていてもいいのかな。
そんな気持ちが、ほんの少し芽生えた。
その裏で。
子どもたちの近くでこそこそ悪口を言っていた村の大人たちが、突然そろって川に滑り落ちたことを私は知らない。
「あの外来の女なんか気に入らない」
そんな話をしていたらしい。
ラテはただ……。
ちょいっと地面を蹴っただけ。
私は気づかないまま、笑顔のまま帰った。
この世界で初めて、胸を張って言えた。
「今日は楽しかった」って。




