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『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


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第38話 「翌朝の気まずさと、布団のぬくもり」

 朝。


 小鳥の声が、やけに近くで聞こえた。


(……あさ……?)


 みるくは、うっすらと目を開ける。


 天井。

 差し込む朝の光。


 そして――


(……あれ……?)


 布団の中が、あったかい。


 自分ひとり分じゃない、温度。


 みるくの記憶が、ゆっくりと繋がる。


 雷。

 雨。

 布団。

 近い声。


(……リオンさん……)


 心臓が、どくん、と跳ねた。


 そっと、視線を動かす。


 すぐそこに、リオンの肩。


 寝息。

 乱れた前髪。


 昨夜より、さらに近い。


(……近すぎ……!!)


 みるくは、息を止める。


 動いたら、気づかれる。

 でも――


(……この距離、なに……)


 布団越しに伝わる、体温。

 まだ残っている、ぬくもり。


 そのとき。


 もぞっ。


 布団の真ん中が動いた。


 ノアが、丸まったまま伸びをする。


(……ノア……いた……)


 冷静さが、少し戻る。


 ノアは、ちらっと目を開けて――

 また、眠る。


 完璧な“何も起きてません”ポジション。


「……」


 隣で、リオンが小さく息を吸った。


(……起きた……!?)


 みるくは、瞬時に目を閉じる。


 寝たふり。


 心臓、全力疾走。


 ――数秒後。


 布団が、ほんの少し揺れる。


 リオンは、天井を見つめたまま動かない。


(……どうしよう……これ……)


 彼の記憶も、戻っている。


 空気で、わかる。


 そっと、リオンが横を見る。


 その気配に耐えきれず――


 みるくも、目を開けてしまった。


 目が合う。


 ……数秒。


 沈黙。


「……おはよう、ございます……」


 リオンの声は、低くて少し掠れている。


「……お、おはよう……」


 みるくの声は、裏返りかけ。


「……その……」


 リオンは視線を逸らす。


「……昨日のこと……覚えてますか……?」


 みるくの耳まで、一気に熱くなる。


「……う、うん……」


「……僕も……です……」


 言い切らない。

 でも、忘れていない。


 沈黙。


 布団の中は、まだ温かい。


(……このぬくもり……)


 昨夜の距離。

 声。

 安心。


 思い出すだけで、胸がきゅっとする。


 ぽすん。


 天井から、ラテが降りてきた。


「おはよ〜。あれ〜?ふたりとも……顔、真っ赤だね〜?」


「ラテ!!」


「ん〜?これね〜、“夜の記憶がそのまま残ってる朝”だよ〜」


「説明しなくていい!!」


 ノアが、ぴくっと耳を動かす。


 リオンは、ゆっくり布団から出る。


「……とりあえず……朝ごはん、作りますね」


「えっ……!? あ……ありがとう……」


 立ち上がる瞬間。

 一瞬だけ――


 布団のぬくもりが、離れた。


 みるくは、布団を見つめる。


(……まだ……あったかい……)


 何も起きていない。

 でも――


 確実に、何かが残っている。


 視線を上げると、襖の向こうで物音。


 リオンが、台所に立つ気配。


 生活音。


(……同じ家……)


 みるくは、そっと布団を握る。


 昨日より。

 確実に。


 一歩、戻れない場所に来てしまった朝だった。

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