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『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


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第37話 「夜の雷イベント」

 夜更け。


 空が、不穏な音を立てていた。


 ごろ……。


 遠くで、低く雷が鳴る。


(……やだ……)


 みるくは布団の中で、ぎゅっと目を閉じた。


 窓の外が一瞬、白く光る。


 ぴかっ。


「……っ!」


 遅れて――


 どんっ!!


 家全体が、びりっと震えた。


「……っ、みるくさん……!?」


 壁の向こうから、リオンの声。


 寝起きで、少し掠れている。


(……起こしちゃった……)


 みるくは布団の中で、小さく身を縮めた。


「……だ、だいじょうぶ……です……」


 声が、震える。


 次の瞬間。


 どしゃああああっ


 雨が、屋根を叩き始めた。


 立て続けに、雷。


 ごろごろ……。


「……みるくさん」


 声が、近い。


 障子の向こうで、人の気配がした。


「……起きてますか?」


 迷いのあと。


「……はい……」


 みるくが返事をすると――


 障子が、そっと開いた。


「失礼します……」


 リオンは、寝間着のまま立っていた。

 髪は少し乱れていて、いつもより無防備。


(……だめ……かっこよすぎ……)


「雷……苦手ですか?」


「……ちょっとだけ……」


 本当は、かなり。


 そのとき――


 ぴかっ!!!


 どん!!!!


 みるくは反射的に、布団を掴んだ。


「……っ!」


 次の瞬間。


 布団の端が、ふわっと沈む。


「……失礼します」


 気づけば。


 リオンが、布団のすぐ横に座っていた。


 近い。


 息づかいが、聞こえる距離。


「……ここにいますから」


 低く、落ち着いた声。


 それだけで、胸が少し軽くなる。


「……ありがとう……」


 みるくは、布団から半分だけ顔を出す。


 リオンは視線を逸らしつつ、少し距離を取ろうとする。


「……すみません。近すぎますよね」


「……い、いえ……」


 言った瞬間。


 また、雷。


 びくっ。


 みるくの肩が跳ねる。

 

 ととと……。


 足音。


 ノアが、部屋に入ってきた。


 状況を一瞬で察し――


 みるくとリオンの間に、すぽっと入り込む。


「ノア……?」


 ノアは、どちらにも体を触れさせたまま、丸くなる。


 完璧な緩衝材。


 ラテが、天井から降りてくる。


「ふたりとも〜、距離バグ起きてるよ〜?」


「バグってないです……!」


「バグってるよ〜。雷のせいで、警戒心オフになってるもん〜」


「ラテ……」


 雨音。

 雷の余韻。


 暗闇の中。


 リオンが、ぽつりと言った。


「……みるくさん」


「……なに……?」


 声が、小さい。


「……怖いの、我慢しなくていいですよ」


 胸が、ぎゅっとなる。


「……だって……大人だし……」


「……それ、関係ないです」


 リオンの声は、驚くほど優しい。


 次の雷で、みるくが思わず目を閉じた。


 その瞬間。


 布団の中に、あたたかい重み。


 リオンが、完全に布団の端に入っていた。


「……っ!?!?」


「……すみません……!一瞬……!」


 慌てて離れようとする気配。


「……い、いえ……」


 みるくの手が、無意識に布団を掴む。


(……あったかい……)


 ノアは動かない。

 むしろ、満足そう。


 ラテが、にやにや。


「ほらね〜。これ、“距離バグ・最終段階”だよ〜」


 雷は、少しずつ遠ざかる。


 雨音だけが残る。


 気づけば――


 みるくの呼吸は、ゆっくりになっていた。


 眠りかけ。


 その様子を見て、リオンは動けなくなる。


(……離れられない……)


 ノアの温もり。

 みるくの寝息。


 布団一枚分の距離が、世界のすべてみたいだった。


 夜明け前。


 雷は止み……なにも起きてないのに、確実に近づいてしまった夜だけが、静かに、残っていた。

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