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『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


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第36話 「ノアが距離を詰める事件(嫉妬未満)」

 朝の光が、居間にやわらかく差し込んでいた。


 みるくは床に座り、布を広げて裁縫をしている。

 リオンはその向かいで、地図を眺めていた。


 その、ちょうど間。


 ノアが、どっしりと座っている。


「……ノアちゃん、そこ……」


 みるくが困ったように言う。


 針を通そうとすると、尻尾がふいっと揺れる。

 糸に、絡む。


「……あ、だめだよ〜……」


 ノアは、動かない。


 むしろ……みるくの膝に、前足を乗せた。


「……え?」


 リオンが顔を上げる。


「ノア……?」


 ノアは、ちらりとリオンを見る。

 そして……みるくの膝に、体重を預けた。


 どっしり。


「ちょ、ちょっと……ノアちゃん……?」


 みるくの頬が赤くなる。


(……近い……!)


 ノアは鳴かない。


 ただ、みるくの服の裾を軽く踏み、ぴとっと体をくっつけてくる。


 完全に、場所取り。


「……ノア、重いよ」


 リオンが苦笑する。


 すると。


 ノアの耳が、ぴくっと動いた。


 そして、リオンの方を見ずに、みるくに、さらに近づく。


「……これは……」


 リオンは、少し困った顔で首を傾げた。


「……甘えてますね」


「そ、そうかな……?」


 みるくは、膝の上のぬくもりに、動けない。


 天井近くをふよふよしていたラテが、くるっと降りてくる。


「ふたりとも〜」


「ラテ……」


「ノアちゃんね〜、やっと“安心”と“場所”がつながったんだよ〜」


「……場所?」


「うん。“ここが、いちばんだいじ”って思ってるところ」


 ラテは、ノアを見下ろす。


「それがね〜……みるくのそば」


 みるくの心臓が、きゅっと鳴る。


「え……?」


 ノアは、返事の代わりにみるくの服に、鼻先をうずめた。


 その様子を見ていたリオンが、少しだけ視線を逸らす。


「……ノア、みるくさんのこと……気に入ってますね」


 声は穏やか。

 でも、ほんの少しだけ……間があった。


「……うん。嬉しい……けど……」


 みるくは言葉を探す。


「……リオンさんの大事な子だもん。ちゃんと……一緒に、安心できたらいいなって」


 その瞬間。


 ノアの尻尾が、ぴたっと止まる。


 そして、リオンの方へ、ちらり。


 ほんの一瞬だけ。


 まるで、確認するみたいに。


 数秒後。


 ノアは、のそのそと動き、みるくの膝に乗ったまま、リオンの足にも、体の一部をくっつけた。


「……あ」


 みるくとリオンが、同時に声を出す。


 ノアは、どちらも離さない。


 欲張り。


 ラテは、にっこり笑った。


「うんうん〜。これはね〜」


 尻尾をふりふり。


「嫉妬じゃないよ〜。“家族の場所確認”〜」


「か、家族……」


「まだ仮だけどね〜?」


 みるくは、胸の奥がじんわり温かくなる。


 リオンも、小さく息を吐いた。


「……ノアなりに、受け入れてくれてるんですね」


 ノアは、目を細める。


 動かない。


 朝の居間。

 近すぎる距離。


 嫉妬じゃない。

 でも……“ここにいる”って、確かめるみたいなぬくもりが、静かに、みんなを包んでいた。

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