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『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


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第35話 「最近、あの家……あったかい」

 村の朝は、噂話から始まる。


「ねぇ……最近、気づいた?」

「なにが?」


 パン屋の前。

 いつもの顔ぶれが、ひそひそと声を潜めていた。


「あのみるくちゃんの家……なんか、雰囲気変わってない?」


「わかる。前は静か〜な家だったのにねぇ」

「今は……あったかい感じがするのよ」


 誰も、はっきりとは言わない。

 でも、全員が同じことを思っていた。

 

「ほら、見て」


 指さされた先。


 干されている洗濯物。


 ……男物が、混じっている。


「あれ……旅人さんの、だよね?」

「うん……絶対そう」


「同じ屋根の下……ってこと?」


 ざわっ、と空気が揺れる。


「まあまあ……まだ分からないじゃない」

「でもねぇ……」


 笑いが、滲む。


 「おはようございます〜」


 みるくが籠を持って歩いてくる。


 その少し後ろ。


 リオンが、自然な距離でついてくる。


 ……でも。


「段差、気をつけてください」


「……あ、ありがとう……」


 声、近い。

 視線、優しすぎる。


「……前より、距離近くない?」


「近いわね」


「でも、触れてない」

「そこが怪しいのよ」


 みるくたちは、気づいていない。


 昼下がり。


 家の前で、みるくが箒を持って掃除をしていた。


 リオンが、桶を運んでくる。


「……あ、そこ、濡れてます」


「え?」


 さっと、リオンが手を伸ばす。


 みるくの背中に、軽く触れる。


 一瞬。


 でも、見逃さない。


「……触ったわよね?」

「触った」


「自然すぎるのが問題」


 当人たちは、すぐ離れる。


 でも、その動きが――夫婦感。


 夕方。


 窓から漏れる、灯り。


 ひとつ、じゃない。


「前はね……夜は真っ暗だったの」


「今は……ほら」


 影が、ふたつ。


 時々、動く。


「……あの灯り……安心するわね」


「わかる」


 屋根の上。


 ラテが、足をぶらぶらさせながら、下を見ていた。


「ふふ〜……村の人たち、ぜ〜んぶ気づいてるね〜」


 みるくとリオンは、家の中。


 笑い声が、微かに聞こえる。


 ラテは、満足そうに尻尾を揺らす。


「でもね〜、ふたりはまだ……“恋”って言葉、見つけてないんだよね〜」


 それでも。


 夜風は、やさしい。


「……あの家……」


「うん」


「きっと……」


 誰かが、ぽつりと締めくくる。


「……もう、ひとりの家じゃないわね」


 その言葉に、みんなが頷いた。


 恋はまだ名前がない。


 でも……暮らしは、もう“ふたり分”。


 村は今日も、静かに笑っていた。

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