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『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


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第19話 「ノアの手がかり?はじめてのお願い」

 次の日の朝。

 村の空は雲ひとつなく、まるで絵本の1ページみたいに明るかった。


 みるくはパンを買いに行く途中、肩の上で伸びをしているラテを見上げた。


「ふにゃぁ〜。あさのひかりって、おいしそう〜」


「食べられないよラテ……」


「でもおいしそうなの〜。みるくのきもちも甘くなってるし〜」


「な、なんで朝からバレてるの……っ」


 ラテは尻尾をふわんと揺らし、鼻をひくひく。


「りおんのこと考えるとね、みるくの心が“はちみつミルク味”になるんだも〜ん」


「そんな味しないから!!」


 わちゃわちゃ言い合っていると……。


「みるくさん、おはようございます」


 声に振り返ると、そこにはリオンがいた。

 胸がどくん、と跳ねる。


「お、おはようございます……っ」


 ラテはすぐにリオンの足元へとぷりぷり歩き、ぴょこんと膝の上に飛び乗った。


「りお〜ん、おはよ〜」


「おはよう、ラテ」


 みるくが赤くなっていると、リオンは少しだけ表情を引き締めた。


「みるくさん、もし今日……時間があればお願いがあるんです」


「お、お願い……?」


 言葉の響きに胸がざわっとした。


 ラテがみるくの耳の前で、ひそひそ声。


「みるく〜? “ドキドキ”が“ばくばく”になってるよ〜」


「もう黙ってて……!」


 リオンは地図をそっと広げ、みるくへ差し出した。


「昨日、森の奥で……少しですが、見覚えのある足跡を見つけたんです。ノアのものかもしれません」


 みるくは息をのむ。


「猫ちゃんの……?」


「はい。もし良ければ、みるくさんと……ラテにも来てほしいんです」


 胸の中で、何かがとろりと溶けた。


 頼られている……その事実だけで甘さが増していく。


「わ、私でよければ……!一緒に行きます!」


 即答すると、リオンの表情がふわっと緩んだ。


「ありがとうございます。とても心強いです」


 それだけで、みるくの視界がぱあっと明るくなる。


 ラテはみるくの肩に戻って、尻尾でぽんぽんと叩く。


「みるく〜?ほらね、うんめいのひとって言ったでしょ〜?」


「ら、ラテっ、違うって……!」


「違わないよ〜。みるくの心スイッチがまた、ぽちってしたもん〜」


「ぽち、じゃない!」


 そんな掛け合いに、リオンは優しく笑っていた。


「……二人の会話、見ていると本当に癒されます」


「ひゃっ……!」


 瞬間、時間がふわりと揺らぐように止まる。


 風が凍りつき、葉の影が静止する。

 みるくとリオンとラテだけが動いている、小さな秘密の世界。


「また……とまったねぇ〜」


「ラテと一緒にいると、よくこうなる気がします」


 リオンの声は優しく、みるくを見る目はどこかあたたかい。


「みるくさんと……ラテと一緒にいると。ノアのときと同じ“安心する感じ”があるんです」


「っ……!」


(そんな……そんな言い方……反則……)


 みるくの胸の甘さは、今日いちばんの濃度に。


 時間が動き出すと、リオンは照れくさそうに微笑んだ。


「では……午後になったら、森の奥へ案内します。一緒に行ってくれること、本当に嬉しいです」


「こ、こちらこそっ……!」


 ラテがふんふんと鼻を鳴らす。


「みるく、りおん。今日はね、ふたりのきずながちょっとのびる日なんだよ〜?」


「え、え、どういう意味なのラテ!?」


「ひみつ〜。ひみつの、はちみつ〜」


「語呂だけ!!」


 みるくは真っ赤になって叫んだ。


 だけど……胸の中のふわふわはずっと溶け残っていて。


 午後。

 ふたりと一匹はノアの手がかりを胸に、森の奥へ向かって歩き出す。


 まだ知らない。

 その先で、甘さだけじゃない……小さな運命が待っていることを。

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