表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/50

第13話 「気づいてしまった気持ち」

 みるくさんが体調を崩したあの日、僕は子ども教室をひとりで任された。


 「だいじょうぶかな……」

 彼女の家を離れたあとも、ずっと胸の奥がざわざわしていた。


 子どもたちは元気で、紙芝居も木の剣ごっこも楽しくできた。

 でも、みるくさんがいない教室は、不思議と静かに感じた。


 彼女がいるだけで、場が柔らかくなるのだと気づいた。


 教室を終えて村の広場を歩いていると、村人たちが声をかけてくる。


 「みるく先生、今日はお休みかい?」

 「優しい人だよねぇ」

 「もっと自信持てばいいのにねぇ」


 その言葉を聞くたび、胸の奥が温かくなった。


 彼女は……“誰にでも愛されるような人”なのかもしれない。


 村の子どもたちだけじゃない。

 大人たちも、みるくさんのことを大事に思っている。


 なのに本人は、それに全然気づいていない。


 (……ああ、そういえば)


 初めて会った日の、あの控えめな笑顔が脳裏に浮かぶ。

 子どもたちに向ける声の柔らかさ、緊張しながらも丁寧に挨拶する姿……気づくと、頬がゆるんでいた。


 「僕は……何を考えてるんだろう」


 ため息とも笑いともつかない息が漏れた。


 夕方、彼女の家に向かい、スープを温めた。

 彼女が少しでも食べやすいように、野菜を細かく切り直し、味を薄く調える。


 台所に立ちながら、思わず口元が緩む。


 (こんなふうに誰かのために台所に立つなんて、久しぶりだな)


 旅の生活は、ひとりが基本だ。

 誰かのために何かしたい……そんな感情すら、いつの間にか忘れていた。


 スープを持って部屋に入ると、みるくさんがゆっくりと起き上がった。


 「……リオンさん……」


 その声は弱々しいのに、僕の胸の奥まで優しく触れてくるようだった。


 スープを手に、彼女のベッドに近づく。


 「無理しなくていい。少しだけでも飲めたら、それで十分だよ」


 みるくさんは恥ずかしそうに微笑む。


 「……ありがとう。ほんとに……助かります……」


 その笑顔を見た瞬間、

 何かが胸の中で静かにほどけた。


 ……ああ、僕はこの人の笑顔が好きなんだ。


 突然気づいたその想いに、自分で自分が驚いてしまった。


 こんなにも自然に、こんなにもすんなりと心に落ちてくるなんて。


 しかも、本人はまったく気づかずに「私なんか……」という顔をする。


 その度に、胸が痛むようになった。


 僕は小さく苦笑した。


 「……ああ。多分、この人に惹かれているんだ……」


 ラテは満足そうに目を細めた。


 みるくさんは、スープを飲み終えると、安心したようにまた眠りについた。


 その寝顔を見ながら、胸の奥で静かに誓う。


 ……この人のこと、ちゃんと守りたい。


 まだ言葉にできないけれど、確かに芽生えた気持ちだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ