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『人見知り独身の私、ドラマの恋に憧れてたら……チワワのラテが影で異世界を無双していました』  作者: talina


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第1話 「二人暮らしの夜」

仕事終わりの電車は、今日もぎゅうぎゅうだった。

 肩が触れないように体を縮めていたら、余計に疲れた気がする。


 「……ただいま、ラテ」


 玄関の扉を開けると、たった一匹の家族が尻尾をぶんぶん振って駆け寄ってきた。

 小さなチワワ、ラテ。

 家の鍵を閉める前から、私のストッキングをぺろぺろ舐めてくる。


 「今日もいい子にしてたの? えらいね」


 言葉にした途端、胸の奥の緊張がほどけた。

 外では一言しゃべるだけでも気を使うのに、ラテの前だと息ができる。


 スーツを脱いで、部屋着に着替えて、レンジでごはんを温めて。

 テレビをつける。

 毎週録画している恋愛ドラマの最新話。


 ソファに座ると、ラテもいつものように膝の上へ。

 小さな体がぴとっとくっつく。

 体温が伝わって、涙が出そうになる。


 ……好き。

 ……誰かに、好きって言ってもらえるって、どんな感じだろう。


 画面の中では、主人公にイケメンの青年が告白していた。

 抱きしめられて、幸せそうに笑っていた。


 「……いいなぁ」


 ぽつりと独り言が漏れた。

 誰にも聞かれないはずなのに、言った瞬間、顔が熱くなる。


 ラテが顔を覗き込むように「きゅんっ」と鳴く。


 「ラテは優しいね。ありがと」


 その優しさを撫でながら、もう一回ため息をついた。


 私は人見知りだ。

 仕事の飲み会も、友達付き合いも苦手。

 学生の頃は恋人ができるのを夢見ていたけど、気づいたら30代になっていた。


 「……私、結婚できるのかな」


 言ったあと、後悔した。

 誰かに愚痴って甘えたいのに、誰にもできない。

 素直になれない。

 情けなくて、悔しくて、涙が滲む。


 そのとき、ラテが私の指を軽く甘噛みした。

 “泣かないで”と言うみたいに。


 「……ラテがいてくれたら、それでいいか」


 自分で言って、また胸がぎゅっとなる。

 本当はいいわけじゃない。

 本当は……恋だって、してみたい。


 ドラマのエンディング曲が流れ、照明のないリビングが少し暗く見えた。


 「明日も仕事かぁ……」


 ラテを抱き上げて、ぎゅっと抱きしめた。

 小さな体は、まるで守ってくれているみたいに温かい。


 このときの私は知らなかった。

 数日後、ラテのためならと取った行動が、運命を変えるなんて。

 そして……

 ラテの小さな体の中に、世界を揺らす“力”が眠っているなんて。

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