最近の噂話を聞きまして?
「ねえ、エレーナ夫人
最近の噂話を聞きまして?」
「あら、何をですか、ミリーエ夫人?」
貴婦人のお茶会は、わたくしのようにお茶会に慣れていないような珍しい人や、お噂が上手なお方が呼ばれることがございます。
この場に、ミリーエ夫人が呼ばれているのは、噂話がお好きなお方だからなのですね。
エレーナ夫人は、こういった噂好きな方から、噂を聞き、情報収集をしているのでしょう。
「ケルディーノ伯爵主催の夜会で、ケルディーノ伯爵令嬢が、婚約破棄したそうですよ!」
「あらあらあら、あのルドヴィーコ様と3年間も恋仲で、仲睦まじくしてらしたのに!?」
あれ………?
そのお名前を聞いたことがあります。
そうです、3年前です。顔合わせする前に婚約破棄になったルドヴィーコ様のことです。
ケルディーノ伯爵令嬢がいらっしゃったから、婚約破棄になったはずなのですが…
ルドヴィーコ様とマルティーナ様、婚約破棄をされたのですか!?
噂になるほどの恋仲でしたのに!?
「どうやら、
ケルディーノ伯爵令嬢は、ロマキス次期侯爵様と恋に落ちてしまったらしいの!」
「まあ!婚約者がいるのに?タイドル様と?」
「とても怪しい仲でございましょう?」
「そうね、心配ではあるわね」
ロマキス侯爵家…
貴族図鑑で見かけたことがあります!
確か、王家にお仕えするお医者様の家系の!
その次期侯爵様が、3年間も、恋仲の婚約者がいたマルティーナ様を選んだのですか?
「タイドル様……そのようなことをしていては、王家からの、医者の家系としての信用を失ってしまわれるのではないですか?」
「そうね、調べてみる必要がありそうね」
「はい、宜しくお願い致します」
「お茶会中に
申し訳ありません!
失礼致します、エレーナ様!」
「あらあら、どうしたの、ケーニ?」
突然の侍女の方の声に驚いて、思わず、紅茶を溢しそうになりました。
突然、ケーニと呼ばれた赤茶色の短髪の侍女が温室に入って参りました。
まだ、新人のようで、焦ったような表情です。
わざわざ、エレーナ夫人に声を掛けなきゃいけないくらいの、何かが起きたのかしら?
「はい、突然、ルーカス様がいらっしゃって
侍女長様が対応されております!」
「まあ! ルーカスが?珍しいわね。」
「エレーナ様とイストレラ様に用事があるそうで探しております!いかがなさいますか?」
「ルーカスをこちらに呼んで下さいな。」
「はい! かしこまりました!」
「ああ、今は、お茶会中だから、短時間だけなら対応が出来る、とお伝えして下さる?」
「はい!ルーカス様に伝えて参ります!」
そのお方は、エレーナ夫人のご家族かしら?
それならば、侍女が、わざわざ、お茶会に来ることもあるのでしょう。