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「お待たせ~」

「待ったよ。ホント待った。置いてかれたのかと心配になったよ。いい感じに天気だったから待ったけどこれが雨だったら僕は部屋に戻ってたね。そしたら君たちが待ちぼうけだったんだからね」

「ごめんごめん。でも会いに行くはずだったピアが来てくれたんだ。だからもう出かけなくても良くなったよ」

「えぇ~、なんだよそれ。僕が何年ぶりにあの部屋から出たと思ってるの。久しぶりに出たのにこれじゃ本当に出ただけで終わりじゃん」

「でもあの召喚の紋章消す魔法を知りたかったんでしょう」

「そうさ。この僕の知らない魔法を使うなんて考えられないからね。だからわざわざ会いに行ってやろうと思ってたのにさ」


ああそうか、言い訳だったのか。あの居心地良さそうな部屋でそうとう退屈してたんだね。


「もう来ちゃったからしょうがないじゃない。でも折角だから誰にも邪魔されない所へでも行ってみる?」

「どうしてもって言うなら僕はかまわないけどその前に紹介してよ彼女がその大魔法使いなの?」


そういえば私も名乗ってなかったし彼の名前も聞いてなかったよ。


「遅くなったけど私は葵。彼はヴィオで彼女がピアよ。ちなみに君の名前を聞いてもいい?」

「・・・名前を聞かれたのなんて何年ぶりだろう。そういえば名前を呼ばれるのも随分久しぶりになるよ」

「そんなに?」

「僕を名前で呼んでくれた人たちはみんな死んじゃったし、あれから親しくした人も居ないから当然だね」


それは本当に悲しいね。心から打ち解け合える相手が居ないって寂しいよね。


「これからは私が嫌って言うほど呼んであげるわよ。だから教えてよ君の名前」

「僕はモーヴ。君はこれからも僕と居てくれるって事?」

「モーヴが嫌じゃないならね」

「お嬢様」

「そうですよお嬢様。そんな簡単にお決めになってよろしいのですか」

「ごめん、ヴィオ、ピア。でも同じ召喚者としてモーヴをこのまま放っておけないでしょう」

「不老不死の呪いは解かれるのですから後は彼の意思次第では?」

「だから呪いじゃないですってば」

「えっ、僕の不老不死が解けるの!?」


肝心な話をするの遅れちゃったよ。もう、私ってば・・・。


「そうなんだよ。ピアがその不老不死を解けるんだって。でもモーヴが本心から願ってないとできないらしいんだけど本当に不老不死を解いてもいいんだよね?」

「お嬢様、私が今すぐ彼の魂を消滅させることも可能ですが」

「それは却下よ」


だって彼はどう見ても生きることを諦めてはいないでしょう。


「それではお約束が違うことになりますが」

「違ってないわ。彼が望んだらと言う話だったでしょう。彼が消滅を望んでいると思う?」

「何怖い話してるの。それ僕のことだよね。僕の魂を消滅させようとしてたの?」

「それで不老不死から解放されるって事だったけどね。でも今はピアが解除できるからきっとその方がいいと思ったんだ」

「それって僕もちゃんと大人の体に成長して老衰で死ねるって事?」

「老衰以外で死ぬことにもなりかねませんけど、普通に寿命を迎えられるようにはなります」


ピアってば何を自慢気に・・・。自分がしでかした事の結果を見せられてるの分かってる?


「本当に凄い魔法使いなんだね。僕じゃそんな魔法使えないよ」

「当然でしょう。私を誰だと思ってるんですか」


だからね、ピア・・・。いや、もう何も言うまい。


「ありがとうありがとう。僕はずっとそうなる事を願ってたんだ。僕のこの願いを叶えてくれるなら僕も君たちの為なら何でもするよ」

「ならモーヴが寿命で亡くなったときその魂をヴィオにあげてくれないかな。私が勝手にヴィオとそういう約束しちゃったんだ」

「えっ、何それ」

「あれ、言ったと思ったんだけどな。彼は私が召喚した悪魔なんだ」


ヴィオに期待させただけってのも申し訳ないからモーヴが許してくれるならお願いしたい。


「死んだ後なら別に何でもいいよ。僕はかまわない」

「勝手なこと言ってごめん。そしてありがとうモーヴ」

「お嬢様、お嬢様は私にこのモーヴとやらのお守りをさせるおつもりですね?」


そうよ、そう言う打算は正直ちょっとあったわ。だってヴィオって私以外の者にはとても冷たいから仕方ないでしょう。私の魂を好きにしていいって約束で私も守って貰っているようなものだしね。


「ピアもモーヴとこれから仲良くしてね」


これはピアの罪滅ぼしの始まりなのよ。分かってるよね?


「それでは解除に少し時間がかかりますけど今ここでやってもいいのですか?」

「どうするモーヴ」

「じゃあ一度部屋に帰ろうよ。僕がこれから君たちと一緒に行ってもいいなら準備も必要だしさ」

「準備って?」

「一応この国を守ってる大賢者の旅立ちだよ。面倒だからまた彼らの記憶を弄らないといけないかな」

「なんかそれも物騒な話だね」

「そもそも記憶はそう簡単に弄れるものではございません。彼が行っているのは多少の記憶の消去の類いでしょう。ですのでそう物騒な話ではありません」

「そうですよ。何度かそれを繰り返して思い込ませるのでしょう。だから特定の人物にしか使えない難点もあるんですよ」

「そうなの? 洗脳みたいな記憶の操作って感じなのかな」


なんにしても私にはして欲しくないね。


「ご安心ください。お嬢様の記憶の操作などこやつにできはしません」

「なんだよそれじゃ僕がたいしたことないみたいじゃん」

「お嬢様に比べればみなそうですがこればかりははっきりと理解していただきませんと」

「そうです私のお嬢様は本当に凄いんですからね」


いやいや、二人とも何言ってんの? 身内贔屓を拗らせるのはちょっと恥ずかしいからやめてよ。


「ごめん。こんな二人だけどモーヴもこれからよろしくね」

「あ、あぁ。こちらこそよろしく」



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