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「お嬢様、お待たせいたしました。ゆっくりお休みいただけましたか」

「ヴィオォ~。ちょっと聞いてよぉ」


葵は五日ぶりのヴィオの登場にようやく緊張の糸をほぐし思わず抱きついてしまった。


「どういたしました」

「ピアがさぁ私に妙なトラブル引き寄せ設定なんてするからまたも浚われかけたんだよぉ」

「存じております。まったく懲りない天使だ。少しは考えると言うことを学ぶべきです」


ホント私もそう思う。


「そのせいでさぁ、怖くて本当にこの部屋から一歩も出られなかったんだから」


部屋から出たら本当にトラブル発生したからね。寧ろ次々と続かなくて良かったって思うほどピアの設定は効き目があったよ。


「その妙な設定はこの私でもどうにもできません。一応お嬢様には万が一に備え身代わりの設定はしてありますのでどうぞご安心ください」

「何その身代わり設定って」


ヴィオまで私に妙な設定をしてるの?


「お嬢様が受けるダメージは別の者が代わりに受けることになってます」


何しれっと怖いこと言ってるの? RPGゲームで別の物が身代わりになってくれるってのは聞いたことあるけど・・・。どうせならこのトラブル引き寄せ設定をピアに移して欲しいわ。できるなら。


「者って人間だよね? それはヴィオでもピアでもないんだよね?」

「そうですね」

「やめてよヴィオまで何でそんな妙な設定私にするの。うっかり怪我もできないじゃない」

「お嬢様がそのような心配をする必要はありません。お嬢様さえご無事で居ればいいのです」


ダメだ話が通じない。


「今すぐその設定解いてよ」

「あの天使が妙な設定をしたが為の予防策です。まずは天使の方をどうにかしてください」

「それができないから悩んでるんじゃない」

「天使を消滅させれば解けますよ」


そんな真顔で言われると本気で言ってそうで怖いよ。


「ピアの消滅は私が困るわ。そしてなにより私のせいで他の人が傷つくなんて私の心が我慢できないよ」

「私がご一緒していればお嬢様に傷一つ負わせる事はありません」

「一緒じゃないことも多いでしょう」


ヴィオが一緒の時は魔物に襲われることも妙なトラブルに遭うこともないのはちゃんと分かってるよ。多分寄せ付けないようにしてるんだろうと思うとありがたいし安心してられるけどね。でも今回のように別行動が多いのも確かだよね。


「ではあの天使に昇格して貰うしかないですね。そうすればその妙な設定もどうにかできるようになるでしょう」

「天使にも昇格ってあるの?」

「悪魔にも格があるのですよ。当然天使にもあるでしょう」


そういえばヴィオは神に近い格上の存在だって言ってたっけ。って事は、ピアは? 天使のランクはどのくらいあるんだ?


「それでピアの昇格って本当に可能だと思う?」

「私にはなんとも言えません。本人に聞いてみてはいかがです」


なんだか望みは限りなく薄い気がするよ・・・。でもまぁそうだよね。本人を抜きにこんな話しててもしょうがないよね。ちょっとした愚痴のつもりがピアの悪口になっちゃうよ。


「それでヴィオの方は上手くいったの?」

「お嬢様にご不便をおかけした分くらいの成果は上げております」


ヴィオがやってるんだから当然かぁ。


「それでお嬢様にお願いがございます」

「私に? 何よ」

「カカオ農園の方が軌道に乗りましたらチョコレートを商品化させようかと考えているのですがよろしいでしょうか」


私たちが定期的にちゃんと手に入れられる規模の農園じゃないって事だね。商品化して世界的に広めようなんて凄いじゃない。きっとみんな喜ぶよ。


「チョコレートって意外に溶けやすいからこの世界の流通方法じゃ問題が多いんじゃないかな。ココアやチョコクッキーの方が安価にできるし流通させやすいと思うよ」

「それは一般向けの商品ですね。私が考えているのは特定の者に流通させる特別品としての扱いです」

「それって・・・」


特別の人しか手に入れられないみたいな? 偉そうな王族や貴族にだけ献上するみたいな感じなのかな?


「特権階級からむしり取る手段だとお思いください。その分一般市民には安価な物を広めやすくできるかと」

「ふぅ~ん、要するにブランド品みたいな感じ?」

「高級ブランドです」

「ヴィオのやることだから別に心配もしないし反対もしないよ。でもヴィオの負担にならない程度にやってよね」


今回ヴィオと離れていて私が一番負担を被った気がするけど、ヴィオは寝ずに活動できるとはいえ疲れを知らない訳じゃないよね。


「お任せください。商会の規模もこの国ではすでに第一を自負できるほどには仕上げましたので」

「えっ、もうそんなに? でもお城からいただいてきた武器防具の類いで始めた商売でしょう。まさかあちこちの商店を乗っ取ったりしてないよね?」

「ご心配なく。すべてはお嬢様のミサンガのお陰でございます」


でもヴィオは私以外には冷酷だからやっぱりちょっと心配だよ。とは言っても私には何もできないんだけどさ。


「本当に阿漕な事だけはしないでよ」

「ピアも申しておりましたでしょう。阿漕なヤツにはそれ相応ですよお嬢様」


ピアってそんなこと言ってたっけ? でもそうだね。赤髭先生だって取れるとこからって言ってたし、そういう手法ならいいのかな。良く分からないけどチョコレートが世に広まるならまぁいいか。



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