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「ねえ、ピア。ココアもこのカカオからできてるのよね? じゃあ、ココアとホットチョコレートの違いって何?」


やっぱり呼び方が違うだけ?


「カカオバターが入っているかいないかじゃないですか?」

「ふぅ~ん」

「えっ、聞いといてその反応!?」

「ごめん、聞いといてなんだけど良く分からなかったって言うかどうでも良かった。久しぶりにココアが飲みたくなっただけって感じ」

「はぁ・・・。ココアですね。分かりました。休憩にしましょう」

「だからピアのこと大好きよ!」


収穫するのって実際にやってみると疲れるし大変だよ。


「はい、どうぞ」

「ありがとう」


あっという間に差し出されるココアに葵はもう驚きもない。

発酵とか焙煎とかいろんな工程があるはずなのにそういうのすべてすっ飛ばして、あっという間に作っちゃうんだからホント凄いよ。


お米が手に入れば。いや違うな。実った稲穂が手に入ればご飯どころかチャーハンやドリアも食べられるんだろうな。ホント楽しみだよ。


「それにしてもさぁ、魔法でカカオの実を上手いこといっぺんに収穫できないものかしらね? 魔法ってそういう不便を便利にできるものじゃないの?」

「お嬢様にならできるかもしれませんね」

「私にできるならピアにもできるでしょう。なんたってこんなに美味しいココアを作れるんだから」

「魔力を使っての変換と魔力操作とでは基本が違うんです!」

「それってピアには魔力操作ができないって言ってるよ」

「えっと、そうじゃなくてですね」

「分かってる。思いつきもしなかったってところでしょう」


あっ、図星だったか。


「教えますから是非挑戦してください」

「そうする。魔力操作が上手くなれば他にできることも増えそうだしね」


要は身体強化魔法の応用でしょう? 大丈夫あれだけ頑張ったんだから私なら絶対やれるはず! それにイメージが大事だって言うならやっぱり私はこうかな。


葵は魔力で作った無数の腕で一斉にカカオの実を摘むイメージを広げた。

ほらやっぱり! これが正解でしょう。それに腕の数をさらに増やせれば収穫ももっと効率化できるよね。


「大丈夫ですかお嬢様?」

「何が?」

「それだとあっという間に魔力が尽きてしまいませんか?」

「何言ってんの。一度この腕を作ってしまえば後は維持して動かすだけだからたいした魔力は必要ないよ。腕の数だけ魔力を使うって感じかな。だから大丈夫」

「それなら良いんですけど、なんだか見ていてあまり気持ちいいものじゃないですね」

「えっ、そう?」


千手観音が収穫していると思えば逆に神々しい感じがしない? それに他にイメージできなかったんだからしかたないじゃ無い。


「じゃあピアならどうやるのよ。是非やって見せて欲しいわ」

「そうですね。私ならこうです」

「それもしかしてウインドウカッターってヤツ? それって攻撃魔法じゃないの? っていうか、実は綺麗に落ちたけど木も傷つけてるよ。それに落ちた実を拾って歩くのも大変そう。やっぱり私はこの腕でいいわ」

「そうですか・・・」


やだ、何がっかりしてるの?


「落とした実は自分で全部拾ってよ。私は手伝わないからね。それよりそのウインドウカッターもやっぱり教えて。何かに使えそう」

「そうでしょう。お嬢様ったら初めから素直にそう言えばいいのに」


何だろう、急に教わりたくなくなったよ。それに実際目にしてるからイメージはしやすいし大丈夫かな。


「ほらピア見てみて。カッターの大きさを調整してみた。これなら木まで傷つけないで済むよ」

「えっ、お嬢様ってばもうそこまで・・・」


ふん、私はやればできる子なんだよ!


ガサッ!


「ちょっとピア、アレってもしかして・・・」

「お嬢様ごめんなさい。うっかりしてました」


鹿に似てるけど目が赤いしどう見ても魔物だよね。うっかりって何をうっかりしてたの? やっぱり今まではヴィオが知らぬ間にどうにかしてくれてたんだ。


「それでどうしたらいいのよ」

「お嬢様~、私は魔物退治はしたことないんです」

「逃げるしかないって事?」

「私ではお嬢様を抱えて飛べませんよぉ~」


もう、肝心なときにこれだよ。


「しかたない私が戦ってみるよ」


葵は鹿が逃げてくれるのを期待して臨戦態勢に移行した。


今さっき覚えたウインドウカッターならどうにかできるのか? でも木の実を落とす程度のウインドウカッターじゃどう考えても無理だよね。威力やカッターの大きさをどうにかすればイケるか?


(そやつを消し去るには私が神に近い力を得るかお嬢様が浄化魔法を覚え熟練させるかしか方法はありませんよ)


あっ、今何か急に頭に閃いた。ヴィオを消滅させられるほど熟練はしてないだろうけど、あのミサンガ作りで私の浄化魔法はかなり熟練しているはず。ならこの鹿も消滅させられるかも? もうここは何が何でもやるしかない!!


「浄化!」


葵は鹿の魔物に向かい消滅をイメージして浄化魔法を放った。

すると驚いたことに鹿の魔物の体から黒い靄のようなものが抜け出しキラキラとした粒になって消えていく。そしてその黒い靄が出なくなると同時に鹿はその場にバタンと倒れ込んだ。


「お嬢様凄いです! 穢れを見事浄化できてます」

「でも消滅してないよ?」

「この鹿は穢れを取り込みすぎて魔物化していたのでしょう」

「そんなことがあるの?」

「瘴気を持った死体でも食べたのでしょうか?」

「私が聞いてるんだってば。でもそれってゾンビとかアンデッドがいたりするって事?」

「死体は動きませんよ。でもヴァンパイアやアンデッド系の不死のものは存在します」

「なんか怖い。大丈夫なのそれ」


悪魔や天使がいるんだから当然と言えば当然か。ならば万が一に備えヴィオでも消滅させられるという浄化魔法を極めるか。きっと有効なはず。戦う予定はないけど念のためね。念のため。


葵は起き上がった鹿が逃げていくのを見ながらピアが落としたカカオの実を拾うのを手伝い街道沿いへと戻ったのだった。



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