表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/41

22


「そろそろ暗くなってきたから帰ろうか」


テンション上げて身体強化して搾乳したのは良いけどホント疲れたよ。身体は強化されても体力までは強化されてなかったみたい。早くちゃんとした宿でゆっくり休みたい。


「まだ少し明るいですがよろしいのですか」


ああ、ヴィオは飛んで街まで帰る予定だから見られる心配をしてるんだね。


「だって村に寄ったら良い感じに暗くなるでしょう」

「また村に寄るのですか?」

「ここへ来るときに挨拶したから帰る挨拶も必要でしょう」


一応許可を貰ってここへ来てるんだから帰りはお世話になりましたって挨拶するのが日本人的礼儀なんだよ。私は祖母からそう教わった。


「お嬢様、私は止めた方が良いと思います」

「なんで? ピアまで反対すると思わなかったよ」


この世界では日本人的礼儀は挨拶過多とかウザいとか言われちゃうの? まぁ日本でも古くさいって言う人も居たけど。


「闇が迫る時間は魔も姿を現すのですよ、お嬢様」

「何それ・・・」

「でもそうですね。これも私への試練かもしれません」


どうしたのピア。急にそんな真面目な顔をして。ヴィオは黙っちゃったし・・・。


「とにかく疲れたしさっさと挨拶して街に急いで行こうよ」


葵は暗い顔をして黙ってしまったピアといつも通り無表情のヴィオと重苦しい雰囲気で村へと戻った。


「村の者でなくては無理だと思っていましたが難なく乳を手に入れたとは素晴らしい。そのように凄い旅人がこの村に訪れるのは珍しい事、宴を催しますので是非今夜はゆっくりしていってください」


あっ、あれぇ? この村長午前と同じ人? なんだか態度が全然違うけど。挨拶に来たときは値踏みでもされてるみたいだったのにその笑顔ちょっと胡散臭いよ。でも褒められるのは悪い気はしないでもないね。


「お嬢様も疲れたと言っておりますのでお気持ちだけで結構です」

「それは大変だ。それでは今宵は是非この村に泊って行かれると良いですぞ。急ぎ支度をさせましょう」


止めてよ。ピアもヴィオもそうやって私の反応を確認するように二人して見ないで。この村に泊るかどうか私に判断を委ねるって事だね? 正直言わせて貰えば疲れてるからもう寝られるならどこでも良いよ。こんな小さな村じゃ宿もないだろうと諦めてたけど、折角泊めてくれるって言うならありがたくお世話になっておこうよ。その代わりちゃんとお礼をすれば良いでしょう。


「はぁ・・・」


ピア、何溜息ついてんの? 何考えてるのかはっきり言ってくれないと分からないよ。この村に泊りたくなかったって事? 宿じゃないから?


「罪を犯した者たちに私の与える天罰の効果があるのはその者に罪を意識する気持ちが多少でもあるからで、結果改心することも可能なのです。しかし改心までに時間がかかれば目覚めるまで自分が相手に与えたのと同じ苦痛を味わい続け、結果命を落とす可能性もあります。だから私は人間に与える罰はそれで十分だと考えていました。罪の意識すら持ち合わせていない場合でも多少人に迷惑をかける程度なら許されることもあるでしょう。しかしあなたはダメです。かといって私にはあなたに与える罰を思いつかず悩みました。そして今、あなたを見逃すのは私の罪になるのだと思い知らされました。これはあなたへの、いえ、この村への天罰だと思い知りなさい」


ズドォーーーン!!!


ピアには珍しい早口の長台詞に唖然としていた葵は地響き激しい突然の轟音に思わず蹲る。


「この災害から逃げ切れるのは罪の軽い者だけです。たとえ炎から逃げ切れて命が助かってもあなたはその罪を一生負うことになるでしょう」


蹲っていた葵はヴィオに抱きかかえられ急ぎ村を出ると、すでに村のあちこちに火の手が上がり村は大騒動となっていた。


「いったい何が起こったの?」

「この村は立ち寄る旅人をもてなしたあと殺害していたのです。貧しさから奪うのではなく娯楽にしていたのがピアには許せない罪だったのでしょう。私たちはこの身なりから躊躇っていたようでしたが思いとどまる事はなかったですね」

「全然気づかなかった・・・」

「お嬢様はそのままで良いのです。お嬢様をそのような嫌な思いからお守りするのも私の役目ですので」

「私にはただ覚悟が足りていなかったのです。そのせいでお嬢様を危険なめに合わせるところでした」

「みな消滅させてしまえば簡単なのに生き永らえさせるなど甘いな」

「この人たちは私財を失い、そしてその罪の深さ業の深さによっては身体に不自由を負う事になるでしょう。この先の人生それはきっと死ぬよりも辛い事となるのです」


葵は今目の前で起きたことが上手く処理できず、ピアとヴィオのやりとりをただ呆然と聞いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ