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商人たちと待ち合わせをした街に一直線に向かうのでは無く、食材を求めて寄り道をすることに決めた。

絶対に牛乳だけでも手に入れたい!


ピアが調べたら高地で放牧をしている村があるらしいので、結局そこまで飛んでいくことにした。

勿論夜の間にだが。馬車はともかく馬はどうするのかと思ったらピアの収納は生き物でもOKなんですって。何なら人間も収納できるって、そんな肝心なこともっと早く言って欲しかったよ。これで冒険の幅も広げられるのかな?


現地に着くと髙地とは思えない平原のような草地が広がっていて、背景に山脈や所々に谷が見えなかったら絶対にここが山の近くだとは信じられないだろう。

草原では牛や山羊がのんびりと草を食んでいて、のどかな風景に心が癒やされるようだった。


「どこへ行けば牛乳を買えるのかしら?」

「これはみんな野生の牛なので誰って事はないですけど村長にでも交渉したら良いんじゃないですか」

「えっ、これ全部野生なの?」


って事はここには外敵がいないんだ。ここは地球並みに平和なんじゃない。召喚された国がアレだったから勝手に色々思い込んでたよ。


「利益に繋がるのに勿体ないですね」

「私もそう思うよヴィオ」


きっちり搾乳して生乳の流通が無理でもバターやチーズに加工すれば産業になるよね。確か石鹸も作れるんだっけ? それに何より牛の肉は日本では高級品だったよ。山羊の肉は食べたことないけど・・・。


「交渉はヴィオに任せるね」

「御意」


村に入ると旅人自体が珍しいのかジロジロと見られている視線が痛かった。この国も男尊女卑にうるさいとか何か面倒な風習があったりするのだろうかと不安になる。


「なんだか面倒そうだね」

「大丈夫ですよお嬢様。みんな私たちの服装を見てどう話しかけていいか困ってるだけです。何ならお嬢様から話しかけてはどうです?」


知らない人相手になんだって話しかけるのよ? 私にはそんな高レベルなスキルは無いよ。でも挨拶くらいはしとくか。


「こんにちは」


待って、おもいっきりスベった感じ? 止めてよ、そんな遠慮がちに会釈を返されたら返って恥ずかしいじゃない・・・。


「早く村長のところへ行こうよ。ピア、さっさと案内して!」

「分かってます! お嬢様こそ迷わずにちゃんと付いてきてくださいね」


こんなのどかな村でどうやったら迷子になれるって言うのよ。まったく! ほら、ピアがそんなこと言うから抱っこされちゃったじゃない。喜んでるように見えるかもしれないけど恥ずかしいんだからね!


「ごめんくださーい。誰か居ませんかー」

ピア、何その緊張感のかけらもない挨拶は。

「ヴィオ、できればバターやチーズの製造の交渉もしてみてよ。牛乳があればピアに作って貰えるけどどうせなら世間にも広めたいじゃない」

「お任せください。その辺はあの商人を使います」


そ、そうよね。餅は餅屋って言うものね。またうっかり口だけ出して責任持たずをするところだったごめん。私は自分にできることをするよ。


「ヴィオは私に考えつく事なんてとっくに考えてるよね。余計な口出してごめんなさい」

「そんなことはありませんよ。お嬢様の貴重な記憶がとても役に立っています。それにお嬢様あっての私でございますから」


そう言われちゃうとなんかさぁ、ほら、なんて言うか、いい気になっちゃうよ?


「何かご用ですかな?」

「申し訳ないが、放牧されている牛の乳をいただきたい」

「必要なだけ持って行けと言いたいが、牛の乳は搾れるのか? あいつらはああ見えて凶暴ですぞ。村でも限られた者にしかできない芸当だ」


牛って基本臆病だって聞いたことがあるけど地球とは違うのかな? でも地球でも闘牛があるくらいだからやっぱり凶暴なのか?


「大丈夫だ。では好きにさせて貰うぞ。ではお嬢様行きますよ」


ヴィオって私に対する態度と他の人じゃ随分違うよね。偉そうって言うか横柄って言うか。


「ヴィオって搾乳できるの?」


私はテレビで教えているところを見たことはあるけどやった事なんてないよ? 多分ピアにも無理だよ。


「ピアならできるでしょう」

「えっ、私ですか?」

「私は牛を大人しくさせます。あなたが搾乳機を作れば問題ないのでは?」


ヴィオが珍しくピアを認める発言してるけど、搾乳機ってテレビで見た限り凄く大がかりな機会だったよ。ピアに作れって言ってもさすがに無理だと思うよ。


「・・・分かりました、お任せください!」

「あっ、それなんか見たことあるよ。子供を産んだお母さんがそれに似たのを使ってた。まさかそれを牛に応用するなんてピア凄いじゃない」

「そ、それほどでも・・・。お嬢様の記憶にあって良かったです」


葵が実際に見たものとは大きさも多少形も違うけどピアが作ったソレは簡単に搾乳できそうなものだった。


「さすがに牛用だけあって重そうだけど大丈夫? でも牛乳の為だよ。ピア、頑張ってね」

「ええ、絶対にアイスクリームを食べてみせます!」


ごめんピア、私はすでにチーズを期待してるんだ。チーズケーキにピザにグラタン、パスタにかけるのも定番だね。あとチーズフォンデュもいいしおせんべいみたいに焦がして食べても美味しいよね。


「やっぱり私も手伝う!」


きっとこのための身体強化魔法だ。絶対にそう!


「では一緒にやりますか?」

「大丈夫、もう一台作って。ピア、なんならどっちが多く搾乳できるか競争よ!」


葵とピアはヴィオによって大人しくさせられた牛から夢中になって牛乳を搾っていった。



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