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「う~ん」


目を覚ましベッドの上でおもいっきり伸びをしてから辺りを確認し、自分がレガリスの屋敷の客間で寝てしまったことを思い出す。随分と久しぶりにぐっすり眠れたのか頭も気分もスッキリしていた。

暗い部屋の中を確認するとベッドから起き出し閉められた大きなカーテンを開けようと試みる。が、小さな体では上手くいかず、諦めてカーテンを潜り外を確認する。


何時だろう?


外は真っ暗で曇っているのか星空も見えない。この世界には街灯も無く家の明かりも無いのか本当に真っ暗だった。


どうしよう。お腹空いたよ・・・。家捜ししに行くか? でも冷蔵庫がある訳ないし。すぐに食べられるものが見つかるかなぁ。うん、最悪野菜でもかじって水でも飲んでおくか。


葵が部屋のドアへと向かうとそれより早くドアが開いた。


「お嬢様お目覚めですか」

「あっ、ピアだ。よく分かったね」


明かりを灯したピアが現れたことで葵は心からホッとしていた。

ねえピア。その明かりどう見てもただの光だよね。いったいどうしてるの?

ろうそくやランタンを手に持っている訳でもなく、そのまま明かりだけを引き連れているという感じがとても不思議だった。


「お嬢様の気配を気にしていましたから当然です!」

「ありがとう。それよりピア、お腹空いたー」

「すぐに作ります。何か食べたいものはありますか?」

「美味しいジャムをたっぷり塗ったトースト!」

「美味しいジャムですか。お嬢様の記憶にあるものと同じのは無理ですが作り方を参考に頑張ってみます!」

「ホントに? ありがとう」


ピアは調理器具を取り出し素材を揃え何やら始めた。しかしその工程は調理をしていると言うより魔法で何かをしているといった感じで、あっという間にジャムができあがる。作られたと言うよりその場で素材が混ざり合って形を変えたって感じ。

ピアの使う魔法ってホント不思議。っていうかこれってもしかして錬金術の類い?


「ねえピア。その調理器具意味ないよね?」

「気分の問題です! 折角あるのに使わないのは勿体ないですよ」


そうね、形は大事だよね。えっ、パンって発酵させるんじゃないの? トーストって焼くんだよね?

ピアは行程のすべてを無視してあっという間にジャムトーストを作ってくれた。


「なんかこのジャム不思議な味がする」

「ニンジンに似た野菜で作ってみました」

「野菜のジャムも悪くないね。健康に良さそうだよ」


けして不味くはないけどやっぱり果物で作られたフレッシュジャムが良かったな。


「ねえピア。じゃあさぁ、卵サンドは作れる?」

「お任せください!」


ピアは葵の次なるリクエストに応えすぐに卵サンドを作ってくれた。卵焼きをパンに挟んだ物だった。

そういえばこのタイプの卵サンドに凝っていた事もあったなぁ。でも今は卵をマヨネーズで和えた正統派卵サンドが食べたかったんだよ。ごめんにピア。折角作ってくれたのにこれじゃ無い感がハンパないよ。はっきり言わなかった私が悪いよね。


「お腹いっぱい。ありがとうピア」

「どういたしまして、いつでも言ってください」


こんな訳の分からない異世界でジャムトーストや卵サンドが食べられただけありがたい。ホントピアには感謝だよ。


「そういえばヴィオはどうしてるの?」

「ああ、何やら王都から急ぎの知らせが来て邸内が騒がしかったのを抑えていましたね。そのあと出かけたようですよ」

「どこへ?」

「知りませんよ」


って、ピアよ私たちは仲間なんじゃないの? 本当にそれでいいの? でもまぁ、そもそも悪魔と天使に仲良くしろって言うのが無理なのか・・・。


「じゃあ部屋で大人しくしていた方が良いのか」

「そうですね。お暇なら折角ですのであの本でも読みますか?」

「そうね、そうするよ。それよりその明かりって便利そうだよね、どうなってるの?」

「これは魔法です。お嬢様もすぐに覚えられますよ」

「是非教えて!」


葵はライトの魔法を教わるとその明かりを天蓋の中に浮かべ、ベッドにうつ伏せに寝転びピアが出してくれた本を読み始める。


「ピアは好きにしてて良いよ」


読み始めてみると意外に面白そうで、多分夢中になると気にしていられないからと先に声をかけておく。


「私はこのままお嬢様の側にいます!」


そんなこと言うならさっき目を覚ましたときに居て欲しかったよ。まぁどっちにしても集中してしまえば気にもならないけどね。


「じゃあ何か飲み物を用意してくれない?」

「お茶でよろしいですか?」


お茶ってこの場合日本茶じゃなくて紅茶なんだよね?


「甘くないミルクティーがいい」

「分かりました。ティーカップを借りてきます」


カップは持っていなかったかぁ。食器類ももっと揃えたいな。

部屋を出て行くピアを見送り葵はお城で手に入れた装丁の豪華な本を読み始めるのだった。



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