私の不思議な力
※他者視点になります。
「私はアンジェラ・マリアージュ。誇り高き公爵家の娘。この国の次期王であるアレクセイ・リアン・ヒステンブルクの婚約者ですわ」
それが私のお決まりの自己紹介。王族の血筋に近いこともあり、王家ゆかりの能力である『その時に必要な能力を携えたものが憑依する力』、いわゆる霊媒体質を生まれ持ったことで内々に未来の王妃になることが物心つく頃には決まっていた。
王家に次ぐ地位である公爵家が次代の王妃を排出することで、力をつけすぎることを危惧したのか気づいたら婚約者である王太子は敵対派閥によって、ただのアホと化していた。
仮にも王となるものなのだからと様子を見ていれば、気まぐれで暗殺者を私に仕向ける始末。そのせいで、暗殺者が私に憑依してしまうというトラブルにも見合われた。その暗殺者が私を気に入ったからと憑依後に目の前に現れた時には堪ったものではなかった。
王太子の暗殺をほのめかしてくるものなど近くに置いておきたくはなかったが、人材としては優秀すぎるほど優秀だったのも困ったものだった。父である公爵ですらその能力を気にいって私と公爵家を継がないかなどおかしいことをいう。
お兄様がいるというのに家督争いで血で血を争う戦いでも見たいのか。
そうして王太子についてなかば現実逃避という保留を続けていたら、あいつはやらかした。婚約者と結婚すらしていないのに、胸の大きい唇がテカテカした男爵令嬢を妊娠させたのである。その上、男爵令嬢が不敬にも私への暗殺者を雇う始末。
このことで私の暗殺者がブチ切れた。本当に言葉の通り、頭のどこからかブチっと音がしたのだが、太い血管が切れていないことを願った。
様子見を続けていた私へと王太子断罪への証拠書類を突き付けた暗殺者に折れてしまったことは仕方がないと思う。無理なら俺と結婚して女公爵すね、と笑いながら言ってくるのだから。