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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第一章
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少年と過去②【レオ視点】

「魔法で人間は殺すことができません。何故だかわかりますか?」

「魔法は精霊の力を借りているためです。精霊は人間に害を及ぼすことを嫌います」


 家庭教師の質問に回答すると「正解です」と満足そうに頷いた。


「レオンハルト様のお父様でも魔法で人を攻撃することはできません。しかし例外があります」


 俺の父はこの国一番の魔法使いだ。魔力が多く、父に勝てる人はこの国にいない。そんな父でも人間相手には魔法が使えないのだ。


「魔族付きになった人間には魔法が使えます」

「そうです。……本日はここまでにしましょう。続きは次回にします」


 終わりを宣言した先生の視線が俺の後ろに向いている。俺は「またか……」と思い後ろを向くと、案の定、扉を開け覗くように俺の授業を見ていた両親と執事長。母と執事長は小さく手を叩いていた。父は誇らしげに頷いている。


「レオンはやはり、賢いですね!」

「流石は俺達の息子だ」

「あんなにヨチヨチ歩いていたお坊っちゃまが……!!」


 母から始まり、父、執事長までもが俺を褒める。恥ずかしくて前を向くと先生も皆の言葉に同意するように頷いていた。


「レオンハルト様はどんな質問にも回答されますし、復習はもちろん予習まで完璧でございます」


 先生の言葉に「まぁ!」と両手を口元に持ってきて驚く母。嬉しそうな父。感動する執事長。大げさすぎる。今日はまだ三人だけだからいいものの、両親は自慢したいのか使用人が近くにいたら使用人まで巻き込んで俺の授業風景を覗き見する。扉を全開にして十五人ほどの人数が覗こうとしている時は流石に驚いてしまった。

 教材を片付けて、先生にお礼の挨拶をし、両親のところに行く。


「覗くのはやめてと言ってるでしょう! お父様! お母様!」

「子供の成長を見守るのは親の勤めですよ」


 優雅に笑い当然の権利だと言わんばかりに言い放つ母に何を言っても無駄だと諦める。


「レオン、ハウザー家の後継者がどのように育っているのかを見るのは当主の務めだ」


 父も母と似たような事を言い、俺の頭を撫でる。

 最後の頼みの綱である執事長を見るが、ニコニコしているだけで何も言わない。俺の味方はいないらしい。仕事が忙しいはずなのに、と内心思いながらも愛されている事実に嬉しくもある。恥ずかしいから言わないけど。


 勉強を頑張ったからと母が準備したお菓子を食べようと庭園に行くよう提案し、父が母の提案に同意する。「どうせなら他の皆も休憩にしましょう」と言う母の一言で大規模なお茶会をすることとなった。








「おやおや、これはすごいですなぁ!」

「使用人とお茶会なんてレオンハルト様はお心が広いのねぇ」


 嫌な声と甲高い声が庭園に響く。使用人全員とのお茶会なので門番ももちろん、庭園にいた。門番不在の間はお父様が屋敷に結界を施すため他人は入れないようになる。それなのに入ってきているということは……。



「お兄様……」

「シュナイザー男爵」


 お父様とお母様が同時に言う。伯父とその娘がどうやらやって来たらしい。


「何のようでしょうか?」


 ニヤニヤ笑いながら俺達家族に近付く二人にスッと前に執事長が遮るように立つ。


「使用人の分際で私の前に立ちはだかるなんて!」


 ハッと鼻で笑うのはお母様の姪のリリアンヌ・シュナイザーだ。人をバカにするような、見下すような態度をするため俺は彼女のことが嫌いだ。それでもお母様の身内だからと無視はしないようにしている。


「リリーがレオンハルトに会いたいと言うのでな。一人では心配だから父親である私も一緒に来たのだよ。妹にも会いたかったしな」


 伯父がお母様に視線を移すとお母様の体が強張る。お母様から聞いた訳ではないが、お母様は兄である伯父のことが嫌いなのだろう。そう言えば、俺はお母様の実家に行ったことはない。


「皆、すまないが、お茶会はここまでだ。各自、業務に戻るように! レオンはリリアンヌ嬢とこのままお茶会を楽しんでくれ」


 お父様の声に使用人達は後片付けを始める。お母様の肩を抱き、お父様は伯父を応接室に案内した。

 使用人達は自分達が使用した皿はもちろん、テーブルまで片付け各自持ち場へと戻っていった。残ったのはリリアンヌと数人のメイド、そして俺達家族が使用していたテーブルとまだ手をつけていないお菓子。


 ──ガチャッン!!


 カップも新しく替えてもらったので席に着こうとするとテーブルの上にあったものが勢いよく飛んでいった。


「よくもこの私に使用人達が食べていたものと同じものを食べさせようとするわね!!」


 リリアンヌは顔を真っ赤にしながら怒り狂っている。視線を落とすと、使用人とお母様が作ったお菓子がボロボロに崩れており、皿やカップは割れていた。メイド達はリリアンヌに謝罪しながら散らかったお菓子や破片を片付ける。

 両膝を着き片付けるメイドに気を良くしたのか、今度は俺の方をチラッと見てすぐ自分の使用人へと目配せした。リリアンヌの使用人はずっと持っていたバケットをテーブルの上に置き、部外者にも関わらず我が家のメイドに命令し皿の準備をさせる。


「私がレオンハルト様のために精一杯作りましたわ」とニコニコ笑うリリアンヌ。カヌレにクッキー、マカロンと綺麗なお菓子。リリアンヌが作れるはずがない。使用人に作らせたのだろう。分かりきった嘘を吐くなんて。

 これから始まる苦痛の時間に小さくため息を吐いた。

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