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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第一章
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少年と色

「おー! 痣が消えてる!!」


 風呂上がりのレオの背中を見て言う。恒例になっていた薬塗りをもうしなくていいと思うと嬉しくなる。これでレオの苦痛の時間が終わるのだ。


「お祝いしなきゃね!」

「なんで?」

「快気祝いだよ! 知らない?」

「祝うのが好きなんだな」

「レオにとって嬉しいことでしょ。お祝いは贅沢な食べ物食べれるよ」

「例えば?」

「ケーキ屋さんのケーキとか」

「ガキかよ」


 ハッと鼻で笑われる。ひどい。レオのお祝いなのに。バカにされた。


「そんなこと言う子にはケーキ買わないよ」

「別にお前の貰うからいらない」

「えー、せっかくのお祝いだからレオ一つ食べていいんだよ。いつも私の半分じゃん」


 この前、レオのために同じアイスを二つ買ったが、レオは私のを半分もらうだけで自分の分を食べようとしなかった。あれだけ危ない物は何も入ってないということを見せ付けたのに私の分をもらう。他にも、私が残業で遅くなってしまった時に冷凍パスタをレンジで二人分準備したのだが、レオは私が口を付けた食べ物しか食べなかった。同じパスタを半分こずつして食べる姿は今思い出してもシュールだ。


「次からはもうお風呂場で服着てきていいからね」


 私の言葉に「ん」と短い返事をしてパーカーを着るレオ。

 痛々しい傷跡は消すことができなかったけど、赤黒い痣だけでも消えてくれてよかった。レオの肌を見るたびに複雑な気持ちになってしまう。


「ほら、ここのケーキ色々あるよ! 何がいい?」

「なんでもいいよ」


 レオにこんな表情を見せられないと携帯で買いに行く予定のケーキ屋さんを検索してメニューを見せる。心底ウザそうに息を吐くレオを見て私は少し安心した。





「あれが警察。あれが病院。本当はレオを連れて行く場所だったんだからね」

「ふーん」


 二人でドラマを見ている時にこの世界のことを教えてあげている。サスペンスドラマなので襲われた被害者が病院のベッドで事情聴取を受けていた。

 私の話には興味なさそうだが、この世界の見慣れない物は気になるのかドラマに集中している。


「ある程度は理解した。このドラマが一番マシだな」


 恋愛ドラマと比べて言っているのだろう。キスシーンなどを見るたびに顔を歪ませていた。わかる、恋愛ドラマって面白いけど私も中学の頃、家族と見るとちょっと気まずかったもん。レオがすぐにニュースにチャンネルを変えたのはいい思い出だ。最初は扱い方わからなかったのに、リモコンだけ扱いを覚えるのが早かったのは見たくない物をすぐ見ないようにするためだろう。


「皆、同じような髪と目の色だな」

「日本人なので」

「日本人は黒いのか?」

「黒系が多いかなぁ。色素薄いと茶色とかだけど。でも黒は黒でも同じじゃないよ。ほら、私の目とか真っ黒じゃないでしょ?」


 目を見せるようにレオの近くに顔を近づけると驚いたように目を見開く。

 レオの綺麗な赤い瞳は日本人の私からすると羨ましい。あまり見ることのできない貴重な瞳の色。ずっと見ていた……、


 ──ばしっ


「いったぁ!?」

「見過ぎだ、バカ」


 レオが私の目を隠すように勢いよく叩く。「寝るぞ」と言って立ち上がるレオを涙目で見る。手加減を教えなきゃダメだな。か弱い女性には優しくするように教えてあげよう。


「チョコがいい」

「ん? なんの話?」

「あの光ってたチョコケーキが食べたい」


 光っていたチョコケーキってグラサージュのムースショコラのことだろうか? レオが希望言ってくれるなんて珍しい。これは死ぬ気で買わねば。


「なんであのケーキがいいと思ったのー?」

「……お前の…────」

「私の何?」

「うるさい」

「ひどい!」


 途中から小声になっていきお前しか聞こえなかった。レオの様子からしてもう教えてはくれないだろうと思いこれ以上聞くのはやめた。

 少しずつ私とレオの距離が近付いているみたいで嬉しくて今日はいい夢が見れそうだ。

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