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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第三章
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真実を知る④

 浅くなった呼吸を深呼吸をして整える。赤い本は私の手元にはなく離れたところで開いたまま宙に浮いていた。きっと神様が強制終了させたのだろう。


「チッ!」


 いきなり、頭上で音が聞こえる。音のした方へと目を向けると浮いた神様が赤い本の元にいた。神様は無理矢理本を閉じてペチペチと赤い本を叩いている。赤い本に八つ当たりしても意味ないだろうに。


 いや、まって。神様が舌打ちした……?


「神様……?」

「すみません。まさか直接死神が手を下しているとは思わず……。殺し方が違う時点で気付くべきでしたね」

「神様も知らないことがあるんですか?」

「基本的にはないですよ。でも、相手が神なら話は別です」

「神様以外に神様がいるんですか?」

「ええ。魔族が死に関与する特権と言いましたよね? 死に関与する特権を持つ魔族の中の神──死神がいます」

「茉里ちゃんは死神様と契約しているんですか?」

「そうなりますね」


 神様と話していてふと気付く。


「私が茉里ちゃんに触れたから死神は私に気付いたんでしょうか?」

「いえ、元から気付いていた可能性はありますよ。触れたから場所がバレただけで」

「気付けるものなんでしょうか?」

「普通は無理ですけど、例外はいます。レオンハルト・ハウザーのように」


 何故ここでレオの名前が出るんだろう? 不思議に思っていると神様は言葉を続ける。


「レオンハルト・ハウザーが気持ち悪いと言った事ありませんでしたか?」

「いつの話ですか」

「あなたの世界にいる時に。ランニングが終わったレオンハルト・ハウザーをあなたが玄関に出迎えた時ですよ」

「あったような……?」

「佐藤茉里が読んでいたんです。この赤い本を」


 神様が赤い本をまたペチペチと叩く。


 本来は気付かないはずなのに視線に敏感なレオは正体こそわからなかったが視線には気付いていたらしい。


 そうなると、最初から茉里ちゃんは私とレオが一緒にいた事を知っていた。つまり、茉里ちゃんは入社前にカフェで声をかけて来たのは偶然じゃないってこと。先に親しくしておけば入社した際に私が指導役になりやすいだろうと推測していたのか。


「それにしても、考えれば考えるほどムカつきますね」


 どうやら神様は死神様にご立腹のようだ。全てを把握している神様がこんなに怒っているのは珍しい。いつもは余裕そうに笑っているのに。


「辻本柚月。いえ、柚月、疲れたでしょう。こちらに座ってください」


 神様は最初に座っていた椅子に座ると膝をぺちぺちと叩く。怒っている神様に逆らう気もせず大人しく膝に座ると、お腹に神様の腕が回って、もう片方は私の頭を撫でまくる。


「何をそんなに怒っているんですか」

「あの死神の手のひらで転がされたことです。これはあの死神に仕組まれたことなんですよ」

「茉里ちゃんはなんで死神と契約したんでしょうか?」


 私の質問に神様は困ったように唸る。


 聞いちゃダメなことだったのか、と納得してふと考える。神様の言って大丈夫なラインとダメなラインはなんなのかを。私が知らないことも神様は教えてくれた事を考えると、本来知り得ない内容を教えてはいけない。というわけではないみたいだ。

 では、今まで神様が教えてくれなかった内容はなんだったか……。


「大した事ではないですよ」

「え?」

「言えない理由です」


 考えている様子を眺めていた神様が私に言う。


「大きな理由は未来が変わるかもしれないから。例えばですけど、私があなたに将来誰々と結婚しますよ。とかは言えません。それを知った上であなたが違う人と結婚してしまったら未来が変わりますからね」

「いつか知ることはできますか?」

「ええ、もちろん」


 怒りは収まったようだ。声に優しさが戻ってきている。もう私が膝の上に座ってなくてもいいだろうと思い神様の膝から退く。振り向いて神様を見ると口元は微笑んでいた。


「ああ、そうだ。柚月にお願いがあります」

「なんでしょう」

「レオンハルト・ハウザーからもらったピアスを貸してください」


 袖を前に出してちょうだいのポーズをする神様。


 珍しい神様のお願いと言えど、レオからもらったピアスを貸すなんて……と悩みはしたが、相手は神様。悪いようにはしないだろうとピアスを外して神様に渡す。


 両手ですくうような形でピアスを持つ神様を見つめる。レオの瞳と同じ色のピアスに神様がキスをした。


「ありがとうございました。お返しします」

「なにしたんですか?」

「私からのサプライズですよ。使い方は知ってますよね」

「魔力を込めたらその人の映像がってやつですか?」

「ええ」


 返されたピアスを眺めるが特に変わった様子はないことを確認して着け直す。


「私、魔力ないから無理ですよ」

「神聖力は徐々に戻っているのでできます。ただ、問題があるとすれば魔法を使ったことないので魔力を巡らせるのは難しそうですね」


 近付いてきた神様が私の両手を握り、額を合わせる。「今から教えるので手に集中してくださいね」と囁かれて目を瞑る。


 神様に言われた通り、手だけに集中する。布越しに神様の熱が伝わっているのか手の甲がじんわりと温かい。手のひらも徐々に温かくなり、心が落ち着く。


「こんなもんですかね」


 握られていた温もりが離れていき、神様の声で目を開ける。


「ピアスを手の中で包むように持って、集中すれば大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。でも、これで何を見るんですか?」

「アンナ・ハウザーの見ていた状況を見ます」

「レオのお母さん……?」

「ええ。公爵邸で起こった事件ですね。そのピアスに残っているアンナ・ハウザーの魔力を私の力で包み込んでいる状態なので、契約者であるあなたが魔力を込めれば当時の状況を見れると思いますよ」

「あ、ありがとうございます!」


 まさかの言葉に嬉しくなる。あの日、私はもちろんレオも何があったのか知らない。公爵邸にいた人、全員亡くなっているので真実を知っているのは犯人くらいだ。


 そこまで考えて少し思いとどまる。レオに真実を伝えれることを嬉しく思う反面、また辛いシーンを見せてしまうと思うと躊躇してしまう。


「伝えるだけ伝えて見るのはレオンハルト・ハウザーの心の準備ができたらでいいと思いますよ」


 私の難しい表情を見た神様が優しく声をかける。確かに私がここでうだうだ悩んでもレオの気持ちは私の中で想像したレオの気持ちでしかないし、本人に聞いて一緒に悩む方がいい。


 そうと決まれば早く起きてレオに伝えたい。


 ソワソワしている私が面白いのかクスクス笑っている神様。落ち着きのない様子を笑われるのは子供みたいで恥ずかしくなる。神様からすれば私は子供なんだろうけど。


「あ、神様!」

「はいはい」


 この反応は私を子供扱いしているな。


「なんで、ここまで教えてくれるんですか?」


 神様は私のことを好きだから私に味方して色々教えているんだろうか。それとも私に神聖力があるから味方なのだろうか。そんな都合のいいことを考えていた。


「不公平じゃないですか。向こうは本を読んでこっちは読まないなんて」

「ふふ、確かに」


 予想外の回答に一瞬だけ呆気にとられるが、神様らしい回答だと思う。私が好きだから私に良くしているわけじゃなくて不公平だから公平にしようとするなんて。思わず笑ってしまった。


「神の相手は()でなければいけないでしょう?」


 感情論ではなく、公平か不平等で判断し、因果律を歪められた部分だけを修正する。超越した力で神様だと思うことは何度かあったけど、思考部分で初めてこの神様()を神っぽいと感じた。

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