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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第二章
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非日常①

「似合ってます! 綺麗です!」


 瞳を輝かせて言うサナと鏡越しで目が合う。サナはレオが私の専属メイドとして紹介してくれた。今まで一人で生活していたのだ。お世話なんてされなくても平気だと思っていたが、確かにドレスを着るのは一人じゃ無理でした。他にもダンスで疲れた脚などをマッサージしてくれたり、落ち着くようにとお茶を準備してくれたりと有能過ぎて私はサナなしでは生きられなくなってしまう。サナと結婚するしかない。いや、サナもこんなヒモ状態の人間なんてお断りか。


「ありがとう。サナが頑張ってくれたお陰だね」


 照れたように笑うサナ。可愛い。年齢は確か十六だと言っていた。

 褒めたり褒められたりし合っているとノックする音が部屋に響く。返事をしたらレオがドアを開けて入ってきた。サナはレオの方を向いて頭を下げる。


「サナが頑張ってくれたの。似合ってるでしょう?」

「……ああ。サナもありがとう」

「いえ! そんな……!」


 レオのお礼にサナは手をブンブンと振りながらも嬉しそうだ。


「白いドレスなんてウェディングドレスみたい」

「ウェディングって結婚か?」

「そう。着れるとは思ってなかったから不思議な気分」


 白いドレスにチュールの長袖。赤い宝石が埋め込まれたネックレスと紋章のあるブローチ。レオも白い軍服みたいな格好だ。マントや装飾品は赤。きっとそれが家門の色なのだろう。馬車も白色に赤い家門の紋章だし。

 白色だから汚さないようにと思うと少し緊張する。目の前で手を差し出さられレオの手を握り立ち上がる。そのまま馬車までエスコートしてくれるらしい。ヒールが短いと言えど、履き慣れない靴を履いて歩くのは不安だったからありがたい。


「いってらっしゃいませ」


 ペリネルの言葉に使用人が一斉に頭を下げる。執事やメイドだけではなく、庭師や料理担当など、全員でお見送りしてくれる。


「ああ」

「行ってきます」


 レオは短い返事。私は手を振って馬車に乗る。


「ドレス汚さないようにしないと」

「汚れたらまた新しく作ればいい」

「金持ち発言だ」

「公爵家だからな」


 緊張を紛らわすように話しながらも頭の中はマナーやダンスのステップを繰り返し思い出す。大丈夫と何度も自分に言い聞かせるが未知な体験なのでどういう場所か想像もできず、余計に緊張が募るばかりだ。


「大丈夫だ」


 緊張している私に気付いたレオは私を見て言う。そうだ、私はこの日のためにマナーもダンスも頑張ったんだ。先生、見ててください。完璧にこなしてみせます。厳しかった先生を思い出し拳を握る。緊張が少しほぐれて「ありがとう」と言うとレオは笑った。




 * * * * * *




「ハウザー公爵家のレオンハルト・ハウザー様と辻本柚月様のご到着です」


 開けられた扉からレオと入場すると既に会場にいた人達の視線が一気に集まる。すぐに周りが小声で話し始める。これはなんと言うか、居心地が悪い。それでも前に進まないといけないのでレオにエスコートされながらも一緒に歩く。レオは人の視線が気にならないのか無表情で歩く。

 チクチクと刺さる視線はレオの相手だからか、私が異世界人だからか……、両方だろう。「あの女」「誰」「異世界」など小声ながらも所々聞こえてくる。


 会場の隅へと移動し、視線が落ち着いてきた頃、ふと思う。本来、こういう場では挨拶回りがあるのではないだろうか。レオは私から離れようとしない。チラチラと女性だけではなく男性も様子を伺うようにこちらを見ている。きっと挨拶をしたいがレオの雰囲気的に声をかけれないのだろう。話しかけるなオーラどころか近付くなオーラが全開である。


 その後、すぐに私達が入場した入り口とは違う、会場の奥の入り口から皇族と茉里ちゃんが入場してきた。先生に教えられた通りドレスを少し掴み頭を下げる。皇帝陛下の大きな手を叩く音を合図に頭を上げる。


「急な招待にも関わらず集まってもらい感謝する! 神託の通り聖女がやって来たので紹介しようと思う」


 はっきりと圧のある声で皇帝陛下の言葉に茉里ちゃんは殿下にエスコートされながら前に出て自己紹介を始めた。水色のドレスの上に白いレースを重ねた透明感のあるドレスがよく似合う。堂々と話す茉里ちゃんは本当にすごい。男性だけでなく女性までもが茉里ちゃんをうっとりと見上げている。まるで茉里ちゃんが女神様と言わんばかりだ。


 茉里ちゃんの挨拶が終わり、BGM代わりのピアノが流れ始める。殿下が茉里ちゃんの手を引き階段をゆっくり歩き中央まで進んだところでレオが私の腕を引っ張った。視界が勢いよく揺れて、気付いた時にはレオの顔が近くにある。


「こっちに集中」


 レオと練習したダンスの音楽が流れた。リードされながらもステップを思い出して足を踏まないようにする。


「足を踏んでもいいから顔上げて」

「でも、痛いよ」

「大丈夫。鍛えてるから」


 顔を上げるといつもと変わらないレオが見えて少し安心する。慣れない場所で慣れないことをしているから仕方ないと思うが、私は思いの外、緊張していたらしい。きっと足を踏んでもいいとの言葉もあったからだろう緊張が解れた。


 やっと一曲目が終わり、近くを歩いていた使用人から飲み物をレオが二人分もらって来てくれた。柱に寄りかかって少し休憩する。途中から楽しめてはいたが慣れない服装に慣れないダンスはやはり疲れる。これがあと二曲もあるのかと思うと気が遠くなるので前もって最初だけしか参加しないとレオに言っておいてよかった。


 茉里ちゃんは殿下とのダンスが終わると次の曲の相手候補にと色々な男性からダンスを申し込まれていた。さすが茉里ちゃん。聖女じゃなくても茉里ちゃんは可愛いからきっと男性からモテモテだっただろう。

 茉里ちゃんと目が合う。こちらに近付いて来た茉里ちゃんは笑顔で言った。


「私と踊ってくれる? レオン」


 横を見るとレオは嫌そうな顔をしている。聖女直々のお誘いに周りは興味津々のようだ。会場の目線が一気に集まる。チッと小さく舌打ちをしたレオは私を見て「ここで待ってて」と言い残して茉里ちゃんの差し出された手を掴み会場の中央へと消えていった。


 ダンスをしている人達の邪魔にならないように会場の隅でボーッとする。時々、踊っているレオを見たり会場全体を見たりと暇な時間を過ごす。暇だからと言ってまた踊ろうとも思わないけど。レオがそばにいたらこの暇な時間も苦痛じゃなかったのかな、なんて。

 そんなことを考えていたら軽い衝撃と共にバッシャっと液体がかかる音がした。


「ああ、ごめんなさい」

「いえ、私もボーッとしてて」


 白いドレスに赤いシミがじわじわと広がっていく。アルコールの匂いがしてすぐに赤ワインがかかったことに気付いた。


「休憩室に行きましょう。私、替えのドレスを持って来ているの」


 返答に迷っていると彼女は私の手を掴みグイグイと引っ張っていく。レオに何も言わずに離れるのは嫌だけど、この人の好意を振り払うわけにもいかないし、と自分に言い聞かせ彼女に着いていく。

 赤い髪の彼女は大人しく着いてくる私を見てにっこりと笑った。

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