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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第二章
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歪んだ感情【レオ視点】

 柚月は懐が深いと思う。そして受け入れるのも早い。殿下の失礼な態度も一切怒っておらず、舌打ちや苛立ちに対して怯えはしても仕方ないというような感じで受け入れていた。柚月を殺したとされるハヤシに対しても名前を聞いて思い出せば怖がりはするがハヤシ自身に嫌悪感を抱いている様子はない。俺と初めて会った時もそうだ。柚月はやはり、他人に期待をしていないのだろう。自分はしてあげるばかりで、人ならいつの間にか望むような見返りを一切望まない。

 そんな柚月がこの世界に来て俺に困ったような視線を向けたり、不安になった時に俺の方を見る姿は求められているような気がして堪らない。何度も口元が緩くなる。



 ◇◇◇


 あの日、ピアスが熱を持った時、柚月がこの世界に来たことを悟った。柚月に渡したピアスは追跡魔法がかけてある。柚月の世界では追跡魔法は使えないただの装飾品だが、互いの持ち主の瞳の色に変わると一種の契約が成立し、持ち主同士がもう会えないと判断された時に生きている方に戻ってくる特殊なピアス。俺のピアスの色が変わったのを柚月から聞いて、確信した。柚月とまた会えるかどうかはわかるのだと。


 柚月が目の前に現れた時、不思議な感覚だった。殺されることを望んでいたわけじゃない。幸せに生きてほしいと思っていた。それでも実際に会えると思うと嬉しかった。その後すぐ、血だらけで動かない柚月を見て怒りでどうにかなりそうだった。俺が柚月に近寄っている間、あの女は自分が聖女ということを示すかのように柚月を治療してた。それでも柚月は動かなかった。柚月を「死体」と呼び、「片付けろ」と命令した時に女から柚月を突き離し、氷の壁を作った。

 先ほどまで生きていた証拠に柚月はまだ温かく、これ以上冷えないようにとマントをかける。

 柚月のピアスはまだ付いている。もし、ピアスが俺のところに戻ってきたらもう柚月とは生きて会えない。そうなれば腐る前に氷漬けにして公爵邸に……。やっと柚月の顔が見れたのに、これ以上は邪魔をさせない。邪魔する者は誰であろうと殺す。「お前らがソレを壊したら敵と見なし、殺す」と宣言した時、柚月が俺の名前を呼んだ。

 ああ、生きていた、と安心して柄にもなく泣きそうになる。柚月も泣きそうな顔をしていた。



 それから馬車の中で柚月は俺に殺された時のことを教えてくれた。ヘラヘラと笑っていたが相当怖かったのだろう手が震えていた。そんな柚月を見て俺は柚月と会えたことを素直に喜べなくなる。背中は穴だらけでボロボロの服を見れば何度も刺されたのが誰の目にも明らかだ。

 柚月を見て嬉しく思う反面、柚月を殺した奴に怒りが湧く。ただ、殺されなければと思うと……。複雑な気持ちになる。柚月はそんな俺の葛藤に気付き、優しく受け入れてくれた。


 それだけで俺は──。




 ◇◇◇


「なんかレオ嬉しそうだね」


 俺が嬉しそうなのが嬉しいのかニコニコ笑いながら柚月が言う。


「思い出していただけだ」

「思い出し笑いは変態なんだよ〜」

「……笑ってないから」


 揶揄う柚月を無視して寝かしつけるために背中を優しく叩く。マナー講座やダンス練習で疲れていたのだろう。すぐにうとうとし始めて「おやすみなさい」と小さく言う。どれだけ眠たくても必ず挨拶する姿に微笑ましくなる。


 初日は一人で寝ると柚月は隣の部屋で寝ていた。

 柚月がこの世界にやってきた日、夜中に届いた皇室からの招待状を確認した後、他の公爵家も参加することを考えて気が重くなる。無性に柚月に会いたくなり部屋に行くと柚月は魘されていた。急いで近付いて様子を見ると苦しそうに眉を顰め、小さく呻いている。柚月を起こすと怯えていた。きっと殺された時の夢でも見たのだろう。相手が俺ということに気付くと、のそのそと近付き、ベッドに腰掛けている俺の腰に腕を回す。一日も経たないことを忘れるはずもない。落ち着かせるように背中を叩くと柚月はそのまま寝た。

 因みにその時の記憶はないのか俺が目が覚めた時には柚月はもう起きていて「レオは寂しがり屋さんだね〜」とニコニコしながら言っていた。もちろん、頭を叩いといた。


 寝息が聞こえてきたタイミングで背中を叩くのをやめる。腕の中で眠る柚月を確認し、ベッドから出る。


 神殿に行って二日目。そろそろ来るはずだと窓を開けると案の定鳥が入ってきた。皇室お抱えの鳥。ピンクのリボンをしているので皇女殿下だろう。


 手紙には短く「借りを返せ」と書かれている。借りとは皇女殿下との婚約を俺が知る前に無かったことにしたこと。それから今回のエスコートは俺ではないとお茶会で言ったことだろう。婚約に関しては皇女殿下から前々から聞いていた。皇帝陛下が俺と皇女殿下を婚約させようとしていることを。あの日、呼び出された理由がそれだ。聖女云々でそれどころではなく、俺がその話を聞くことはなかったが。


 すぐに皇女殿下に返事を書く。皇女殿下への返事は皇女殿下の鳥へ。もう一つは魔法で作った氷の鳥へ。


 ハウザー公爵家は魔法だけでなく、剣術にも長けている。皇室の第一騎士団はハウザーの管轄。そして皇女殿下の好きな人がそこにいる。副団長のカインだ。カインに皇女殿下のエスコートをお願いすれば借りは返したも同然。皇女殿下はカインと近付きたくて今まで俺と一緒にいたのだから。


「……うう……」


 悪夢に魘されているのだろう。柚月が苦しそうに小さく声を出す。窓を閉めてベッドに入り抱き締めると落ち着いたのか眉間の皺も取れ穏やかに寝息をたてる。柚月本人は気付いていないが、俺がいなくなると悪夢を見て一人で寝ることはできなくなっている。俺なしでは寝れないのだ。


 ──可哀想な柚月。


 そう思いながらも口角は上がっていた。

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