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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第二章
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神殿②

 丸いテーブルに四人座っているが、順番に不満がある。レオが横はわかるけど、なんで茉里ちゃんではなくこの知らない人が横なのか。茉里ちゃんには対面じゃなくて横に座っていただきたい。あ、でも、対面で睨まれ続けるのも嫌かも。

 チッ! と横で舌打ちが聞こえて思わず肩を揺らす。普通に怖い。イケメンに睨まれるのも舌打ちをされるのも迫力があり怖いのだ。


「柚月を怖がらせるのはやめていただけるでしょうか。殿下」


 静かに牽制するようにレオが言う。


「こんなやつのために由緒正しい公爵が父上に剣を向けたと聞いてな」

「それなら俺を睨めばいいでしょう。柚月は関係ありません」

「もう、二人ともやめて」


 一線触発の状況で茉里ちゃんが手を叩いて二人を宥める。殿下は茉里ちゃんには強く出れないみたいで嘘みたいに大人しくなった。


「柚月さんに会いたいと思ってたんですよ」

「……あ、私も会いたかった。傷、茉里ちゃんが治してくれたんだってね。ありがとう」

「いえ、もうダメかと思いましたが、よかったです。というか、柚月さん、少し幼くなりました?」

「うん。蘇生した代償みたいな感じなのかな。多分、十八くらいに戻ったんだよ」

「えー! 不思議! 未成年になっちゃたんですね!」


 茉里ちゃんが大きな目を開き口元に手をあてて驚く。レオと神様のことは言わないと約束したので神様のことは言わず、端折った内容を信じてくれた。


「あの、あの日、何があって茉里ちゃんもこっちに来れたの?」

「え? ああ、林先輩に殺された時のことですか?」


 サラッと出された林くんの名前に冷や汗が出る。名前を聞くだけであの痛みを思い出す。背中がゾワゾワして気持ち悪い。


「あの日、私、お手洗いにいたじゃないですか。スタンガンで先輩を気絶させた後、そのまま引き摺ってリビングに行ったんですよ、あの人。私、怖くなって急いで警察署に逃げたんです。事情話したら結構時間かかっちゃって。あの後、警察と柚月さんの家に戻ったら林先輩いなくて血だらけの柚月さんが倒れてたんですよぉ。本当に私、怖かったぁ」


 グスッと鼻をすする茉里ちゃん。「もう思い出さなくていい!」「でも、柚月さんが聞きたいって……」そんなことを言い合いながら殿下は席を立ち茉里ちゃんを抱きしめている。


「でも、あんなにたくさん刺されるなんて柚月さん林先輩によっぽど恨まれてたんですね」

「え……?」

「だってそうじゃないですか。普通あそこまで刺しませんよ」

「茉里もこう言っていることだし、公爵もその女に騙されているのではないか?」


 殿下の言葉に不安になりレオの方を向く。レオも私を見ていた。いつもと変わらない表情だったが、私の頭を優しく撫でてくれる。


「俺は信じたい方を信じます。柚月が人に恨まれて怖いと言うのなら公爵邸から一歩も出なければいいと思ってます」


 突拍子もないことを真面目な表情で言うレオ。


「公爵邸での事件を忘れたのか?」

「先代とは違い公爵邸の人間以外は許可がなければ入らせないようにしておりますので。もし怪しい動きしたら一瞬で氷漬けになります」

「公爵はとうとうイカれたのか? そんな女がいても邪魔になるだけだろう」

「俺に近寄ってくる女は邪魔だと思いますけど、柚月を邪魔だと思ったことはないですね。柚月と離れるつもりはないですし」

「そんな得体の知れない女に現を抜かして恥ずかしくないのか?」

「その得体の知れない女を腕に抱いているのに殿下こそよく言えましたね」

「貴様……!」


 茉里ちゃんの後ろで待機していた騎士が柄に手をかける。それと同時に一気に周りの温度が下がる。吐く息が白い。肌に突き刺さるような寒さ。その寒さを感じたのは一瞬だった。他の人はまだ寒いのか震えている。


「ひ、人に魔法を使うなんて」

「周りの気温を下げただけなので人に使用はしてませんが」

「屁理屈を!」


 殿下がレオを責めるように言うが声が震えていて迫力がない。このままでは凍死してしまうと思いレオの袖を掴む。レオは私の意図にすぐ気付き魔法を解いた。


「殿下のせいで話が進まないので黙っててください」


 睨みながら言うと殿下は口を閉じ黙った。

 そうだった、話が全然進んでない。茉里ちゃんは殺されていないのに異世界に来ている。茉里ちゃんを見ると先ほどの魔法が余程怖かったのか、自分で腕を抱えながら震えている。


「わ、私はあの日、柚月さんを助けようと思って近付いたら周りが光って……」


 辿々しくながらも説明してくれた。私は茉里ちゃんの説明を受けて少し俯き頭を整理する。

 私が死んだ後、周りが光って、真っ白の空間で神様に会ったと。そしてそこで「あなたは聖女」と言われ、実際に私を治す祈りを教えてもらったらしい。その後はいきなり皇帝陛下たちの前だったと。茉里ちゃんは私を生き返らせようと一生懸命に祈り治して生き返らせてくれたらしい。実際に私を生き返らせたのは神様なのだが、神様は最初に茉里ちゃんに教えなかったのだろうか。私には教えてくれたの……に。


 ハッとして顔を上げる。レオも違和感に気付いたらしい。私の方を見て口元に人差し指を当てしーっのポーズをしている。私は慌てて口に手で蓋をした。殿下から変な目で見られたが気にしている場合じゃない。蓋をしなきゃ声出てたんだもん。


「教えてくれてありがとう。茉里ちゃんも怖かったのに思い出させてごめんね」

「いえ、柚月さんの役に立ったならよかったです」

「殿下、ちょっと柚月と話したいことあるので、これで……」

「私、待ってます!」


 聞きたいことが聞けたので解散という空気に持っていこうとしたレオを遮り茉里ちゃんが待つと言う。殿下は茉里ちゃんの意見には全肯定なので待つのだろう。

 私の手を握ったレオは先ほどいた場所から少し離れて指を鳴らす。外の音が一気に遮断された。まるで透明な壁に覆われているような感じだ。


「これで向こうに話し声は聞こえない」

「ねぇ、レオ、私を殺したのって……」

「ああ、魔族だと思う」

「そうだよね、神聖力は人から受けた傷を治すことは基本できない、できたとしても代償がいるって言ってたし。……神様が茉里ちゃんに私を治す祈りを教えるのも変だよ」

「柚月の知り合いにこういうことは言いたくはないが、あの女はかなり怪しい」


 複雑そうな表情で私に言う。レオがそう思ってしまうのも仕方がない。私ですら茉里ちゃんの話に違和感を感じてこうやって二人でこそこそと話しているのだから。


 茉里ちゃんの方を見てみると、茉里ちゃんはジッとこちらを見ていてた。

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