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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第二章
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再会

 私は彼女が何故レオを止めてくれと頼んだのかすぐ知ることとなる。


「お前らがソレを壊したら敵と見なし、殺す」


 低く冷たい声が響いた。いや、怖すぎ。殺すって何をそんな物騒なことになるの。思い切り宣言してますけど。どんな状況か確認するのも怖いんですが。物騒な声が聞こえて目を開けるタイミングを見失う。

 身体が冷えて寒いとかではないのだが空気がひんやりしている。どんな状況か薄ら目で確かめようとしたら目の前に懐かしい色が見えた。


「……レオ?」

「柚月……?」


 私の小さな声が聞こえたらしいその人は肩をピクリと振るわせた後、私を見る。


 ──ああ、レオだ。


 あの時の幼さはなくなってしまったが面影がある。声だけじゃわからなかったけど、見たらわかる。変わらない白い髪に赤い瞳。成長しても相変わらず綺麗な顔をしている。まさかまた会えるとは思わず少し泣きそうになる。


「会いたかった」


 私がそう言うと、肩を抱く手に力が入る。どうやら私はレオの腕の中にいたらしい。身体の上にはおそらくレオの衣服であろうマントがかかっており、このおかげで寒くなかったのだ。剣を握っていた手を離し、私の頬に触れる。ああ、泣きそうな顔をしている。


「成長したね」

「柚月は幼くなったな」


 ええ、幼くなりましたとも。高校卒業後に一センチ伸びていた背が縮みましたとも。顔も幼くなったでしょう。まだ鏡見てないから知らんけど。


「後でお互いのことを話すとして、今、どう言う状況?」


 周りを見渡す。大きな氷がドーム上に私たち二人を囲んでいる。氷の壁の外には人がいるのか小さく声が聞こえるが何を言っているのか聞き取れない。そもそもここはどこなのか。レオに抱かれていた私は起き上がりその様子を見ていたレオも立ち上がった。その際、レオにマントを返そうとしたが、逆にレオからマントを着せられた。高そうなマントを汚さないことを誓う。


「ここは皇室だ」


 え、待って。皇室って。あなた、殺すって言ってましたよね? 皇室で殺す発言をしたってこと?

 氷の壁にヒビが入ったかと思うと、パリンッと音を立てて壊れていく。鎧を纏った人たちが私たちに槍を向けて囲んでいた。ひっ、と思わず呟けばレオが再び剣を握り、私を玉座から隠すように前に出た。

 玉座には皇帝陛下と皇后陛下と思われる二人が座っており、その横には騎士が数人、そして見慣れた人が一人。


「茉里ちゃん!?」

「柚月さん! 生き返ったんですか!?」


 茉里ちゃんの言葉に周りが小声で話し始める。茉里ちゃんと話したいことがたくさんあったが、茉里ちゃんは騎士に誘導されて奥に消えっていった。


「はっはっはっ! これは奇跡だな! 聖女の力が時間差で発揮されたのだろう。ハウザー公爵よ、我々が争う理由はないのではないか?」

「……彼女が怖がっていますので先に武器を下げてください」


 皇帝陛下が武器を下ろすように手で合図をする。周りの人たちは一斉に武器を下ろし、下がる。

 レオが皇帝に刃向かったのはどうやら私が原因らしい。この大騒ぎの原因が私にあると思うと胃が痛くなる。レオを反逆者にするところだった。だから彼女はレオを止めるように言っていたのか。


「聖女は皇室や神殿の管理で構いません。ただし、彼女は公爵邸で預かります」

「ふむ。まぁ、よい。ただ、神聖力の検査など忘れるで無いぞ」

「……承知しました」


 少し不満そうに返事するレオを見て皇帝陛下はまた豪快に笑った。居心地が悪くなったらしいレオは私の手を取ると扉に向かい歩き始める。手を引っ張られているから転ばないように歩きつつも、皇帝陛下たちの方を向き小さく会釈をした。

 今まで扇子で口元を隠していた皇后陛下は扇子を閉じて私に微笑みながら小さく手を振り、皇帝陛下は嬉しそうに何度も頷いていた。レオが何故あの二人に刃向かおうとしていたのか不思議なくらい優しそうな二人だ。




 * * * * * *




 二人で馬車に乗っている時にレオが何があったのか話してくれた。レオは今日、皇帝陛下に呼び出されて宮殿に来たこと。扉を開けた時にピアスが熱を持ち、目の前に血まみれの私と茉里ちゃんが現れたこと。茉里ちゃんが何か呟いたあと、光り輝いて私の傷が治ったこと。レオは急いで私の元に駆けつけたが心臓が動いておらず、それに気付いた皇帝陛下が死んだと判断し、私を連れて行こうとしたこと。連れて行かれるのを止めるためにレオは皇室で魔法を使用したこと。

 私は私で、元の世界で殺されたこと。異世界に来てすぐに出血多量で死んだことやその後の若くなった原因である彼女とのやり取りを話した。


「私は十八の時に戻ったけど、レオは何歳になったの?」

「二十二……」

「私より年上……! いや、精神年齢的には私が年上!」

「十八なら俺の方が年上だろ。精神関係ないよ」


 小さく笑いながらレオが言う。久しぶりに会ったレオは年上だけど年下という複雑な状況になっているが、年齢なんか関係ないかと思い直す。

 改めてレオをよく見る。身長はあの頃より伸びていて、私がレオを見上げるような感じになる。手も大きかったし、歩く幅も大きくなっていた。相変わらず肌は白いが、昔と違って病的ではない。筋肉もあの頃よりついたのか少しガッシリしている。

 子供の成長を見守る母ってこんな気持ちなんだろう。ちょっと感動。


 私たちはお互いの時間を取り戻すかのように話し続けた。

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