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ヤンデレ公爵の大切な人  作者: よなぎ
第二章
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神様

「あなたは死にました」


 真っ白な空間で誰もいないはずなのに声が聞こえた。


「あ、はい」

「驚かないのですね」


 そりゃあ、あれだけ刃物で背中刺されたら死ぬだろう。驚きもしない。それより、ここはどこなのか。真っ白で上下左右全部同じだ。声も聞こえるだけで姿も見えない。かと言って声は近くで聞こえる。


「二回目の死だからなのか受け入れるの早いですね」

「……ん?」


 ──二回目の死とは?

 聞き捨てならない言葉が聞こえて、周りを見渡すのをやめて声のする方を見る。


「異世界で死にました」

「なんで!?」

「出血多量で」

「家で殺されて、目が覚めたらここだったんですけど!」

「ええ、だって異世界であなた目覚めてないですもの」


 私、知らない間に異世界に来て目も覚めないまま早々に死んだってこと? どう言う状況なの。ダメだ、落ち着け。状況を整理しなきゃ。ここにいる人は状況を知ってそうだから質問したら教えてくれそう。


「あ、あの! 質問したいんですが」

「いいでしょう。ただし、回答の拒否権はありますからね」

「ありがとうございます。……私、家で死んで異世界に行ったということですか?」

「ええ」

「異世界で一度生き返ったってことですよね。なんでまた死んだのでしょうか?」


 彼女は私の質問に色々と答えてくれた。もちろん、いくつかは答えられないと断られもしたが。答えてくれた内容で状況を整理する。


 ・異世界へ行く時に時空の狭間を通るが死亡者はその時に蘇生される。

 ・蘇生されるが外傷が治るわけではないので、異世界に来て心臓は動き始めたが出血多量でその後、死亡。

 ・元々、私は殺された日に死ぬ運命だったので、元の世界にはもう戻れない。


「そもそも、絞殺予定だったのですよ」

「え、すみません。刺殺で死んでしまって……」


 殺されたのは私なのになんで殺され方で怒られているのだろう。そもそも、本来の殺され方なんて知りたくない。聞いてもいないのに殺され方に納得がいかない彼女はぷりぷりと怒っている。姿見えないから声とか言い方の判断になるんだけど。


「それに、あなた、神聖力がないじゃないですか!」

「えへへ、一般人なもので……」

「褒めてません! 神聖力が少しでもあればどうにかできたのに……」


 ぶつぶつと何かを呟く彼女。必死に考えているのだろう。


 それにしても、せっかく異世界に行ったのなら一度は見てみたかったな。勿体ないことをした。かと言って外傷が消えるわけでもないなら目が覚めたらまたあの激痛をまた味わう羽目になるはず。そう思うとそのまま死んでよかった気がする。あんな思いは二度とごめんだ。


「じゃあ、こうしましょう!」


 思い付いたと言わんばかりに彼女はパンッと手を叩く。


「あなたの生きた年数を少しもらいます」

「少しってどのくらい?」

「八年ほど」

「八年は少しじゃないですよね」


 私がそう言うと彼女は慌てて「本当は二十五年くらいもらいたかったのですよ!」と弁明したが全然、弁明になっていない。二十五年もあげたら私は赤ちゃんになってしまう。そもそも生きた年数で何をしようと思っているのか説明もないので「八年あげます。いえーい、高校生の年齢だ〜!」とはならない。


「何をするんですか?」

「あなたを蘇生させるんですよ。五年で植物状態なのですぐ目が覚めれる八年が最低ラインなのですよ。二十五年あれば全て元通りになります」

「人を生き返らせるなんてできるんですか?」

「歪まされた分を元通りにするのであれば可能です」


 彼女は「神聖力があればもっと楽でしたが」と付け加えた。


「安心してください。記憶はそのままにしておきます。見た目はもちろん、体内も若返りますよ」

「わー、すごーい。ありがとうございます」


 拍手しながらお礼を言うと、目の前に彼女は現れた。フードを深く被っており目は見えないが口元は見える。ロングコートみたいな真っ白なコートを着ており、袖は大きめで手が隠れている。


「撫でてもいいですよ」


 最初に見た時は成人女性の平均身長より高めの彼女だったが私に近付いてきた時には幼い少女くらいの大きさになっていた。頭を撫でろと言わんばかりに私に頭を突き出している。言われた通りにフードの上から頭を撫でると彼女はクスクスと嬉しそうに笑った。


「こういうのもいいですね。初めての経験です」

「まぁ、大人になるとこんな感じで褒められることないですもんね」

「あなただからお願いしてたのですよ。こんなに無欲な人間は初めてです」


 見た目が幼いからなのか彼女が可愛く思えてきた。ずっと撫でていたい。これが母性か。


「覚えておいてください。神聖力は魔法と一緒で条件があります。瘴気を払ったり魔族などの傷を治したりはできますが、人間が付けた傷を治療するのも死者を蘇らせるのも無理です」

「神聖力なのに万能ではないんですね」

「ええ、なんでもできてしまうと運命の歯車が狂いますから。無理とは言いましたが、できなくは無いのですよ。その代わり代償が必要になりますけど」


 確かに、病気で死ぬ運命だった人を神聖力で治すとそれはそれで運命を狂わせることになるのか。レオが言っていた。神様は公平だと。関与する場合は因果律を歪められた場合だけってことも。


「さて、そろそろ目を覚まさないと、無駄に人が死にますから」

「サラッと物騒なこと言いますね」


 私から離れた彼女はいつの間にか最初に見た高身長の女性に戻っていた。


「辻本柚月、レオンハルト・ハウザーを止めてくださいね」


 彼女はそう言って私の額にキスをする。キスが合図だったかのようで私の身体がどんどん消えていく。口元は口角が上がっているはずなのに手を振る彼女が寂しそうで思わず「また会いたいです!」と言う。彼女は一瞬驚いた後、嬉しそうに「ええ、私もよ」と言った。

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