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Bar.アジール  作者: ぼんだ
3/4

初夜(3)

 おいしい。初めて飲むモヒートは先ほどのおじさん?の言ったおススメ、というのを頷ける味だった。最初に感じたのはライムのいかにも柑橘系な雰囲気だ。そして後からミントの爽やかな香りが鼻孔を抜け、最後にアルコール感が少し。この後味がお酒を飲んでいることを実感させる。細かく砕かれた氷とカットされたライムに新鮮な香り高いミントの組み合わせはいかにも夏にぴったりのお酒でその清涼感から飲む手が止まらずにあっという間に飲み干してしまった。


「次、何かお飲みになられますか?」


 あまりの速さからかマスターが嬉しそうに、そしてどこかおかしそうに聞いてきた。さすがにテンションが上がりすぎたか、なんて少し恥ずかしくなりながらもう一度モヒートを頼む。テーブルをみればいつの間にかお通しであろうナッツとお水が置かれている。折角なので次の一杯が来るまで酔いが回りすぎないようにそれに手を付け、気になっている店内を今一度見渡す。これがいわゆるオーセンティックバー、なのかと感心する空間。机の上には花とアルコールランプが、店内にはにはギターとピアノも置いてありシックな店の作りがものすごく刺さる。しかし、どこかそんな雰囲気を壊すように流れている音楽はJ‐POPなのが少し可笑しく感じる。聞いたことがある音楽が気になり耳をそばだてていると、マスターがそれを察したのか話しかけてきた。


「Mr.Chilldrenお好きですか?」

「あ、いや聞いたことあるなーって思って。ミスチルなんですねこの曲。あんま詳しくないですけど、  

ミスチルお好きなんですか?」

「そうですね。ほかのをかけることも多いですけど今日は気分でね。でもお客様くらい若いと世代とは言えないかもしれませんね。世代の僕がもう人生折り返しくらいの年なので。」


 見た感じは、50前後だろうか。そんなマスターは喋りながらも手際よく作ったモヒートを出してくれた。先ほどと同じ爽やかでおいしい。


「お客様は、モヒートお好きなんですか?」

「あ、そういうわけではなくて、さっきお見えの前ですれ違った恰幅のいい方におススメされたので頼んでみたんです。飲むのは初めてなんですけどめっちゃおいしいくて。」

「あー、あの方は常連さんなんですよ。少しご迷惑おかけしましたかね。今度言っておきます。」


 マスターは少し冗談めかしながら言った。そして他のおすすめも教えてくれた。


「今のおすすめだと、今はミックスベリーの漬け込み酒とかありますね。あと、うちはウィスキーが豊富なのでそちらも是非。ウィスキー、面白いですよ。」

「ウイスキーなんて居酒屋のハイボールくらいしか飲んだことないんですけど、大丈夫ですか?」

「ウイスキーにもいろいろあって一概にとは言えませんが、、、ハイボールがおいしいものはいくらでもあるので是非。」


 そうか、ウイスキーと聞いて勝手にロックをイメージしていたけれど、こんな雰囲気の良い場所でもハイボールというのはあるのか。なんていかにも素人なことを考えていれば、いつの間にか0時を回っていることに気付いた。そこで今日は帰ることにした。次はウィスキーを飲むと決めて。お会計をお願いするとやはり丁寧な所作で対応してくれた。ごちそうさまですと言い扉に手をかけると、


「ありがとうございました。おやすみなさい。」


と一言。一人暮らしを始めてお休みなんて言う相手がいなかったものだから、久しぶりすぎて不思議な感じさえしたが気分は悪くなかった。



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