第9話 初授業2
魔法に一番大切なのは『知識』だということで、王城の東門内にある試験会場だった演習場、そこに併設されている詰所、寮、講義室。
その講義室で現在初授業中だ。大体五百人くらいは座れるそうで、今は貴族も市民もまとめて講義を受けているが100人もいないから大分席が空いている。オレとユーゴは左側の列後方に隣同士だ。
「まず、一番多い火属性からだな。戦いにおいて火属性の真髄は、爆発である」
中央の列、前から二番目の席にエレナを見つけた。さっきから赤茶のポニーテールが全く揺れない。
集中しているのだろうか。
曰く、火魔法は魔力によって熱を操る魔法である。
同じく熱を操るという意味では氷魔法も同じだが、熱を蓄積する火魔法と熱を奪う氷魔法は正反対の性質と言える。
火魔法で生成した現象としての炎は魔力を燃料(熱源)とし、魔力を注ぎ続ける限り消えることはないが、動かすことはできない。
関節的に動かすことはできるが、魔力消費が激しいことと扱いづらいことから、戦闘における使用方法はもっぱら、一か所に魔力を集約し高密度の熱を一気に解放することで発生させる『爆発』である。
温度が高ければ高いほど、密度が高ければ高いほど威力が飛躍的に上昇する単純で非常に強力な魔法である。
「であるから、火魔法使いで適性の高い者は後方戦術部隊に配属されることがほとんどだ。そのほかにも第二戦線部隊や隠密部隊、哨戒部隊などとにかく配属先には事欠かない。しかし広範囲に強力であるが故にフレンドリーファイアが怖いのも事実だ。火属性の適性者は今後、攻撃の際の状況判断、威力調などを徹底的に叩き込まれるだろう。」
あの時エレナが出した火魔法はかっこよかった。
でも今の説明で行くとあの時の正解は近くで爆発させるってことだよな。
五十メートルも離れた場所に爆発起こせたらそりゃ早いし強いわな。やられることを考えたら脅威でしかないが。
ユーゴは火魔法の適性が低いとか言ってたけど、実際のところどうなんだろう。
エーテルへの干渉も魔力操作も問題なさそうだったけどな。
「次に風魔法だ」
おっ、ライラの風魔法だ。
ライラはどこだ・・・?
いた。一番右の列の真ん中くらいだ。金の外はねボブが目立つな。
こっちも真剣に聞いてる雰囲気だ、メモの準備をしている。
曰く、風魔法は魔力によって空気を操る魔法である。
それは、魔力で干渉させたエーテルをさらに空気に干渉させることで、風を起こすことである。
風魔法は風自体に特殊な効果は無く、攻撃方法は突風によって敵本体や重量のある物体を飛ばすなどして、物理的に攻撃するものになる。
風魔法はエーテルの性質を根本的には変化させないことから無属性魔法とも呼ばれる。
したがって、他属性の使用者よりも魔力操作を熟達させる必要性が非常に高く、又、熟達しやすい。
他属性との組み合わせも強力で、魔物との戦闘において非常に重要な役割を担う属性である。
「・・・であるから、熟達した風魔法使いは空気中のエーテルを自在に操れるため、先に敵の周囲のエーテルに干渉できれば、そのエーテルを味方側に移動させて、少しの間敵を無防備にし、味方の魔法を間接的に強化することが出来る。魔物との開戦時は突発的なもの以外ほぼ必ずここから始まる。
・・・周辺国との戦争があった二百年ほど前には、この最初に行われる風魔法使い同士のエーテルの奪い合いの結果で、戦いの趨勢が決まっていたほど重要なものだ。現在の魔物との戦いでは大体は容易に奪えるがな。」
ライラの魔法を見た時から、サポート的な役割が多いのだろうと思っていたが、
戦いを初っ端から左右するほど重要な魔法か・・・。
「次は土魔法だ」
トーマスの属性だ。最終試験では大活躍だったからな。
曰く、土魔法は魔力によって地中の粒子を操る魔法である。
土魔法は地中の土や岩石、鉱物などを分解、再構成させることが出来る。
柔らかい土を圧縮することで悪路の補装や簡易防壁の生成などができる。
逆に、硬い岩状の地面を柔らかい土などに分解することで敵の侵攻を妨害するなどが可能。
戦闘においては主に妨害工作、緊急時の防御壁生成や元々硬い岩石や鉱石を圧縮し、超硬度のそれによる地中からの攻撃等、攻守ともに万能な属性である。
「・・・だが万能な一方で土魔法は魔力消費が激しいと言われているが、その理由は未だに解っていない。一説では既に存在する大地を操らなければならないことが原因と言われているが、まあその内解明されるだろう。昔の戦争では土魔法使い同士が連携して巨大な蟻地獄で敵大隊丸ごと飲み込んだなんて話もある。昨今の魔物の件もあるから今後そういう大魔法を使う機会もあるかもな。」
さっきからトーマスが前の席ですごい前のめりで教官の話を聞いてる。ワクワクしているのが伝わってくるな。
しかし土魔法すごいな・・・。攻守ともに万能なら故郷を守るっていう目標があるトーマスにはピッタリじゃないか。
そして、ついにオレの氷魔法の番が来た。
今のところ、活躍の機会が多いと思っているが・・・。
やっぱり自分の属性だからな。なるべく良い話だけでありますように!
すいませんまだ説明会続きます(笑